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#1 ルール改正の経緯と意味 | 町田樹のスポーツアカデミア 【Forum:フィギュアスケートが求める理想のルール】
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部町田樹
スポーツアカデミアへ、ようこそ。町田樹です。この番組もついにシーズン3に突入しました。新しいことに挑戦していくシーズン3もどうぞ、よろしくお願いいたします。
さて、昨年度は東京五輪と北京五輪が立て続けに開催されました。夏と冬のオリンピックが一気に訪れる、まさに世紀のオリンピックイヤー。スポーツ界全体が一つの時代の区切りを迎えたと言っても過言ではないでしょう。そして、それはフィギアスケート界も例外ではありません。北京五輪の後、国際スケート連盟は大幅なルール改正を発表しました。つまりフィギュアスケート競技は、来シーズンから新しい競技規則のもとで運営されるのです。
スポーツにとって、ルールというのは、技の在り方を左右する重要な要素です。そして、それは時代とともに刻一刻と変化していきます。選手やコーチ、審判やファンなど、スポーツに関与するすべての人たちが、その変化の波について行こうと、自分自身の思考や行動をアップデートしようとします。ですが、新しいルールに順応しようと必死になるばかりで、ルールそのものの在り方についてじっくりと考える機会は、これまであまりなかったように思うのです。そこで今回は「フィギュアスケートが求める理想のルール」と題して、業界内外から専門家をお招きし、これからのフィギュアスケートのルールがいかにあるべきかを建設的かつ学術的に討論していきたいと思います。
フィギュアスケートのルール改正について
まず、ルール改正についての経緯です。2022年6月5日から6月10日まで、タイ・プーケットで第58回国際スケート連盟総会が開かれました。ここでは、競技規則や団体協約等の改正案について審議がなされたわけです。
審議をする内容に関しては、事前に議案書が出ています。フィギュアスケート界に深くコミットメントしている人にしか分かりにくいことですがISUコミュニケーションという形で、No.2472として審議事項が整理された書類がまず出されています。その提出された内容について議論を進めていくわけです。この議案書には、ここに示している通り、一般会則や組織の在り方に関するルールが40項目くらいあります。その後、フィギアスケートのルール規則が約97審議事項。スピードスケートの規則が112事項で、合計249の審議事項が話し合われました。
フィギュアスケートのルール改正をめぐる変遷
これほど多くの審議事項があるのかと驚きましたが、こうしたルール改正が重ねられて、今の競技のあり方になっているわけです。歴史を振り返ってみても、たくさんのルール改正がなされてききました。
大きなものとしては1973年から1974年。初めてショートプログラムが導入されたのです。その後、1990年にコンパルソリーフィギュアが廃止。2002〜2003シーズンにISUのジャッジングシステムが試験運用され、翌シーズンから、新しいISUジャッジングシステムが正式に運用開始になりました。これは非常に大きな出来事だったわけです。そこからちょうど、今年は2022年。ISUの新ジャッジングシステムが試験運用されてから逆算すると約20年間、経過しています。この20年の間にはマイナーチェンジを繰り返していて、今回の大きなルール改正につながっているわけです。
ルールが演技のあり方を規定する
ルールと競技のあり方は密接にリンクしています。スポーツとルールの関係については、長年、たくさんの研究者が考察をしてきています。その中の代表格であるバーナード・スーツというゲーム理論の哲学者は「ゲームをするということは、ルールによって許容された手段だけを用いて、ある特定の状態になることを達成する試みである」ということを言いました。つまり「ルールがパフォーマンスを規定している。ルール次第でスポーツのあり方も多様に変わっていくんだ」ということを言っています。
フィギュアスケートが求める理想のルール
例えば、フィギアスケートの場合は演技時間が変更されたり、演技の形態が変わったりしています。ショートプログラムが導入され、コンパルソリーフィギュアが廃止されたというのが、その例です。さらに、技術点と芸術点の比重が変わることでパフォーマンスの内容も変わったりしているわけです。こうしたルール改正が選手のパフォーマンスに影響を及ぼします。そのような大事なルールですが、普段、私たちはあまり深く考えてこなかったのではないか。ルールというのは競技連盟によって制定されるわけです
そして、制定されたものを私たちはある意味、鵜呑みにして、それを受け入れて競技をやったり、あるいはスポーツを支えたりしてきたわけです。ですが、本来ならば、ルールはスポーツの在り方を左右するものなのですから、選手やコーチ、ファンや専門家をはじめ、競技に関係する人たち全員で、どうルールを制定していくべきか。どういうルールが理想的なのかを、深く考えていくべきものなのではないかと思います。
そこで今回、この番組では様々な立場の専門家をお招きして、フィギュアスケートのルールフォーラムを開催していきたいと思うわけです。もちろん専門家だけではなく、SNS(Twitter)を通じて視聴者の皆さんともインタラクティブにコミュニケーションを取っていきたいと考えています。
J SPORTS編集部
J SPORTS 編集部
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