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フィギュア スケート コラム 2022年1月27日

第71回全国高等学校スケート競技・アイスホッケー競技選手権大会(インターハイ)フィギュアスケート競技 男子シングルレビュー

フィギュアスケートレポート by 中村康一(Image Works)
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2022年1月18日~21日、青森県青森市、盛運輸アリーナにてインターハイ、フィギュアスケート競技が開催された。新型コロナ禍の中、無観客とはいえ無事に開催できたことは僥倖だった。今回は五輪シーズンということもあり、ややメンバーが手薄な印象ではあったが、それでも個人の目標のため、そして学校別対抗というインターハイならではの目標のために精一杯取り組む高校生達の姿は感動的だった。今回は男子8位までの入賞選手を全員ご紹介したい。

1位 片伊勢武

1位 片伊勢武

高校3年生、最後のインターハイで優勝を果たした片伊勢武。しかし演技後の取材では、喜びよりも反省の弁が聞かれた。

「内容としては、特にフリーで悔いの残る内容になってしまったので、優勝して嬉しい気持ちと後悔と半々ぐらいです。最初の3本のジャンプで流れを掴めたかと思ったんですけど、体力がなくてミスしてしまったので、それがもったいなかったです」

今季の片伊勢選手は、美しいトリプルアクセルなど、ジャンプでの進化を見せる一方、なかなかパーフェクトな演技ができていない。今回は特に強い思いで臨んだ大会だっただけに、悔しさを抑えきれなかったようだ。

「今まではあんまり優勝を目指すとか、そういう強い気持ちで臨んでいなかったんですけど、今回は初めて、優勝したいって思って挑むことができて、その強い気持ちが結果につながったと思います。国体が終わったらすぐに4回転に取り組もうと先生と話しています。来季は4回転がなかったら戦っていけないと思います。4回転はサルコウの方がやりやすいです」

最近になって、スケートに取り組む気持ちを新たにしたのには、12月に出場した全日本選手権で大きな刺激を受けたことが影響しているようだ。

「全日本に初めて推薦出場して、もっと上手になりたいとか、上を目指したいとか、改めて思うことができました。全日本後に練習の仕方も変えてきて、少しずつ成果が出てきているように思います」

今回、長光歌子コーチは四大陸選手権に帯同しており、インターハイで直接指示を仰ぐことはできなかったが、コーチは遥か遠い国からも片伊勢選手を気にかけてくれていたという。

「長光歌子コーチが、エストニアからLINEを送ってくれて、ジャンプのアドバイスをしてくれました。それを意識して試合に臨むことができました。最後のインターハイで、唯一、学校の先生に自分の演技を生で観てもらえる試合なので、嬉しいな、自分のいいところを見てもらいたいな、と思って演技しました」

来季に向けての展望も、意欲的に語ってくれた。

「来季はジュニア最終年になります。今まではジュニアの下の方で何とか追いつくように頑張る、という感じだったんですけど、次は自分が常にジュニアのトップにいて、海外試合に派遣されて、もっと活躍していきたいと思います」

片伊勢選手ならではの美しい滑り、表現に、4サルコウが加わった演技の完成が実に楽しみだ。

2位 中村俊介

2位 中村俊介

ショートプログラム3位から、巻き返しての2位。しかしまず口にしたのは反省の言葉だった。

「結果としては、2位ということは良かったんですけど、内容は納得のいかない演技でした」

取り組んできた4トウループを決められなかったことが悔しかったのだろう。もっとも、光明も見えた試合だった。今回は、ショート、フリーで合計3本のトリプルアクセルを全て成功させることができたのだ。

「アクセルは絶対跳ばなきゃいけない。来季に向けても確実にやっていきたいなと思っています」

年末の全日本では、ショート落ちの憂き目にあった。本人もかなりショックだったようだ。

「自信がなくなりました。自分ではできると思っていたものができなかったので、練習をとにかくやるしかないと、練習量を増やしました。これを継続してやっていかなければならないと思っています。圧倒的に基礎が足りないと考えているので、基礎から猛練習しています」

最近の試合では、4回転ジャンプでパンクすることが多い。飛躍に向けてはこの克服が重要なカギとなる。

「練習では、4トウループに関してはあまり確率は良くないです。試合でも全然決まっていませんし。ただ4回転は絶対に必要になってくるジャンプなので、1種類と言わず、2種類、3種類と増やしていきたい」

今回のスコアには満足しておらず「早く200点を超えたい」と決意を新たにした。才能も努力も素晴らしい選手だ。壁を乗り越えるまで、本当にあと少し。頑張ってほしい。

3位 吉岡希

3位 吉岡希

演技の出だしは良かった。4トウ+2トウのコンビネーションから入り、トリプルアクセルまで3本のジャンプを成功。しかし後半、ジャンプのミスが目立ち、全体としては不満の残る出来栄えとなってしまったと反省していた。ただ今季は表現面での進歩が見られたシーズンだったように感じる。以前はジャンプは得意だが、振付を踊ることが苦手な選手だった。

「長光先生、佐藤操先生に教えていただいて、皆から良くなったと言ってもらえて、下の点数(PCS)も出るようになりました。長光先生のレッスンや、佐藤操先生の振付指導は、しんどいんですけど頑張って良かったと思っています」

今季はフリーで良い演技ができていないと反省の言葉を口にするが、「練習では本当に良くなっている」とも話してくれた。今後、どんなところを伸ばしたいか、との質問には、
「伸ばしたいところしかないです。全日本選手権で羽生選手を見て、そこからやる気が出て、練習を頑張ったんです。羽生選手は凄すぎて、自分とは領域が違うな、と思いました。どの選手ももちろん上手いんですけど、羽生選手は特に凄かったと思います。全日本に出れて良かった。全日本が終わってから、4サルコウも4トウループも練習してて、調子は良かったんですけど、インターハイ直前から4回転の軸が分からなくなりました。いつもフリーをボロボロにしてしまうので、来季はフリーの安定感を上げたいです」

4月からは大学生になる。

「やばいです。勉強も大変だと聞いているので。最後のインターハイ、楽しかったです」

吉岡選手に限らず、多くの選手から「楽しかった」との言葉が聞かれた。いい思い出になったようだ。大学生になってのさらなる飛躍を期待したい。

4位 鈴木零偉

4位 鈴木零偉

ミスはあったものの、クリーンに決まったジャンプの着氷が実に綺麗、つなぎも丁寧。そうしたところを評価されての4位入賞だ。

「昔はスケーティングが全然駄目で、PCSも他の選手に全然負けてたんですけど、やばいな、と感じて、2年前からスケーティングの練習を毎日1時間はするようにして、最近PCSが伸びてきたな、と実感しています」

昔からローカル大会で観てきた選手だが、最近印象が変わったと感じていた。その背景にはこんな努力の積み重ねがあったのだ。今回の演技で、最も難度の高いジャンプは3サルコウ+3トウだった。より高難度のジャンプへの取り組みについて聞いた。

「今、4サルコウを練習しています。あと半年以内で降りたいな、と思って練習しています」

丁寧なスケーティング、美しい表現力に4サルコウが加われば、大きく飛躍できることだろう。来季に期待したい。

5位 誉田知己(ほんだ・はるき)

5位 誉田知己(ほんだ・はるき)

フリーでは第2グループでの滑走から、総合5位へとジャンプアップ。フリーに関しては彼のスケート人生でベストの演技だった。

「自己ベストを出せて良かったです。ショートでミスをしてしまって、幸先の悪いスタートになったので、フリーはやり切ろうという思いで演技をしました」

この日はトリプルアクセルへの挑戦を回避し、2アクセル+3トウに変更。安定した演技を披露し、フリーだけならば4位という評価を勝ち取った。一時期は身長が伸びたことでジャンプが崩れたと聞いていたが、今は問題ないとのこと。現在は高校2年生。挑戦中のトリプルアクセルについては、「高校生のうちには試合で決めたい」と意欲を見せた。

6位 小田垣櫻

6位 小田垣櫻

自身の演技については、「まあまあ良かったかな」と評価した小田垣選手。前半は良い演技への入りを見せたが、後半に少し崩れてしまったことが残念だった。

「後半はスタミナも切れていましたし、緊張が凄かったんです」

フリーの曲は“ロクサーヌ”。それこそ高橋大輔を彷彿とさせるほど、切れの良い、素晴らしい踊りを披露してくれた。ただ、踊りで頑張り過ぎたことが、後半のスタミナ切れにつながってしまった。それでも彼にとっては思い出に残る良い大会となったようだ。

「インターハイは楽しかったですね。観客がいないことは寂しかったんですが、配信で観てもらえてたら嬉しいです」

来季の目標は、全日本ジュニアで入賞して、全日本選手権に出場することだという。トリプルアクセルを投入する予定もあると話す。現在は「クリーンに回れて、転倒する」状態とのことで、完成の日を待ちたい。

7位 菊地竜生

7位 菊地竜生

ジャンプの能力はとても高いものを持っている選手だが、インターハイ直前に靴を変えてジャンプの調子が崩れてしまったとのことで、本領を発揮できない結果となった。

「前の靴が小さくなってしまったので、大きいものにして、靴の種類も変えたんです。新しい靴にチャレンジしようと思ったんですが、高さ、硬さが変わったので、調整が間に合いませんでした」

リスポートのRF1からロイヤルプライムに変更したのだそうだ。より高性能な靴に変更したことで、馴染んでくれば良い結果をもたらしてくれるだろう。ただ今回は、変えた時期が悪かった。

「試合に持ってこれなかったのは自分の責任なんですが、インターハイに間に合いませんでした」

今季、東日本ジュニアではあまり良い演技ができず、続く全日本ジュニアでは素晴らしい演技を披露するなど、大会によって出来栄えのばらつきが大きい印象がある。

「東日本ジュニアでの失敗で精神的に成長した面があって、全日本ジュニアでは自分のいいところを出せた、と受け止めています。来季は4回転を降りられるようにすることと、選考会でアピールして、ジュニアグランプリに派遣されることが目標です。今回初めて強化選手に選ばれたので、やっとスタートラインに立てたという感じです」

来季、満を持しての国際大会デビューが楽しみだ。

8位 矢島司

8位 矢島司

東京出身だが、幼少時、北海道に転居してスケートを続け、再び東京に戻ってきた選手だ。現在は東伏見で中田誠人コーチの指導を受けている。今回の演技は、特に表現面で美点の多い、素敵な演技だった。私は中田誠人コーチの現役時代、取材をして写真も撮影していたのだが、今回の矢島選手の演技を観てまず感じたのが、手先、指先の使い方が中田誠人コーチの演技にとても似ている、ということだった。

「中田コーチからは指の見せ方、体の使い方を細かく指導してもらっています。今跳べるジャンプはさらに加点がつくように指導してもらったり、トリプルアクセルにも挑戦しています。まだ3回転ぐらいしか回れていないので、オフシーズンに取り組みたいです」

来季の目標は全日本ジュニアへの出場だという。2年連続で、東日本ジュニアで失敗してしまった悔しさを晴らすシーズンになることを期待したい。

文:中村 康一 / Image Works

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中村康一(Image Works)

フィギュアスケートを中心に活躍するスポーツフォトグラファー。日本全国の大会を飛び回り、選手の最高の瞬間を撮影するために、日夜シャッターを押し続ける。Image Works代表。

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