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村元&高橋組がアジア史上最高位となる銀メダルを獲得「私たちはまだまだ進化するポテンシャルを有しています」 | ISU四大陸フィギュアスケート選手権2022 ペア・アイスダンス レビュー
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部2人で写真を撮る村元と高橋
ペア
五輪イヤーだからこそ失望を抱えると同時に、五輪イヤーだからこそ巡ってきた大きなチャンス。ペア強豪国の中国も、自国のベテランたちも不在の四大陸選手権で、3組がISUチャンピオンシップで初めての表彰台乗りを果たした。ヨーロッパのタリンで、アメリカ3組とカナダ3組により繰り広げられた「北米選手権」は、アメリカ勢が上位2位を独占した。
アメリカもカナダも、ペアの五輪枠は2つだけ。だからこそ全米選手権3位のオードリー・ルー&ミーシャ・ミトロファノフ組も、カナダ選手権2位のイヴリン・ウォルシュ&トレント・ミショー組でさえも、北京行きの切符はつかめなかった。わずか2週間前の国内選から、大急ぎで気持ちを切り替えて大会入りした両ペアは、ショートプログラム(SP)をほぼノーミスで折り返す。
また結成3季目ながら、コロナ禍の影響で外国遠征を始めたのは今季から……というエミリー・チェン&スペンサー・アキラ・ハウも、ソロジャンプのわずかなズレ以外はすべてを申し分なくやりこなし、僅差でSP3位につけた。
SP後に3組が口を揃えて「良いパフォーマンスが誇らしい」「ハッピーだ」と語り、それぞれにパーソナルベストを更新したのだとしたら、FSはすべての組にとって決して満足できる演技とは言えなかった。
ルー&ミトロファノフ組は、ソロジャンプで女性に転倒があった。ペアコンビネーションスピンは、珍しく軸が大きくずれ、要求事項が満たされなかったとして基礎点が下がる「V」マークが付いた。ただしスピード感は群を抜き、肢体のしなやかなルーはいつもどおり華やかで、彼女を支えるミトロファノフは優しく頼もしかった。
「結果を出せたことには満足しています。あとは家に帰って、フリーの練習を続けるだけです。完璧を目指してさらに努力を重ねていきます」(ミトロファノフ)
逆転優勝の可能性もあったウォルシュ&ミショー組は、むしろ逆転を許しSP2位から総合3位に陥落した。コンビネーションジャンプの失敗で大きく失点をくらった。身長差の少ない2人は、肩を並べて対等に滑る世界観が魅力的だが、またペア独特のエレメンツでは時に苦労もする。スロージャンプでは着地に手付きがあったし、最後のリフトでは、NHK杯でもそうだったように、男性がわずかにぐらついた。
「結果とショートの出来は満足です。でもフリーは見直したい部分が多々ありますね。今日ミスを犯した部分をもっと上達させる必要があります」(ミショー)
最終2位に飛び込んだチェン&ハウもまた、FSは完璧からは程遠かった。特に2度のスロージャンプで、2度とも苦しんだ。1度目は転倒があり、2度目はステップアウト。それでもエレメンツでレベル4の判定を受け、ベースバリューだけなら優勝組を上回る出来だった。
なにより日本の古賀亜美とのペアを、女性の転倒負傷を理由で解消し、その後パートナー探しに難航したハウと、シングルで全米ジュニア1位に上り詰めながらも、22歳でペアに転向したチェンにとっては、とてつもなく大きな一歩。
「僕らにとって素晴らしい披露の場となりました。この先はさらにエレメンツを磨き上げ、僕たちの強みであるスケーティングもさらに高めていきたい」(ハウ)
38歳ディアナ・ステラートは、30歳マキシム・デシャンと組んで3季目にして、四大陸での自己最高4位に食い込む奮闘。ステラートの元パートナー、ネイサン・バーソロメイは、新しいパートナーであるケイティ・マクベスと共に5位で終えた。
アイスダンス
北京後がますます楽しみになった。ISUシニアチャンピオンシップ初出場の3組が四大陸選手権のメダルに輝き、フレッシュな風を吹き込むと共に、アイスダンス界の明るい未来を予感させた。
アイスダンス大国アメリカが2組を表彰台に送り込み、4大会連続で優勝カップルを輩出した。結成3年目のキャロライン・グリーン&マイケル・パーソンズ組にとっては、初めてのタイトル獲得だった。
「チームとしての成長を感じています。自分たちに対しても、プログラムに対しても、より大きな自信を抱いてこの大会に乗り込みました。私たちの滑りにもそれが現れていたと思います」(グリーン)
元世界ジュニアチャンピオンにして、柔らかで力強いスケーティングに正確な技術力が光る26歳パーソンズ率いる同組は、なにより革命的なほどに独創性豊かな2本のプログラムで魅了した。ビートの効いたリズムダンス(RD)は、アクロバティックな動作満載で、フリーダンス(FD)はまるで前衛的な芸術作品。
「アイスダンスほど芸術とスポーツを完璧にミックスさせられる競技は他にないと思っています。パートナーと共にコンセプトを作り上げ、そこに自らのイメージを投影できるんです。これはアイスダンスならではで、だからこそこの競技が好き」(パーソンズ)
いずれのエレメンツも高い出来栄え点(GOE)が加点され、演技構成点の「構成」や「音楽の解釈」では極めて高い評価を得た。両プログラムともにパーソナルベストを更新しーーFDだけなら現役で世界8番目に高いPBーー、世界10組目となるトータル200点超さえも実現した。
「私たちは進化し続けている」と語る18歳グリーンは、こうして四大陸アイスダンスにおける史上最年少勝者となった。後に3度五輪に出場し、金2・銀1を持ち帰った偉大なるテッサ・ヴァーチュの記録を、163日上回って!
村元&高橋組
日本の2人もまた、歴史を作った。35歳の高橋大輔(高橋の「高」はハシゴ高)は、全種目を通しての四大陸最年長表彰台記録を塗り替えた。4年前にはアジア籍アイスダンスカップルとして史上初の四大陸表彰台に上がった村元哉中と共に、2人で挑んだ初めてのISU選手権で、アジア史上最高位となる銀メダルを獲得。また男子シングルで世界選優勝1回・四大陸優勝2回の高橋は、まさに史上初の快挙となる、シングルとアイスダンスという異なる種目でISUチャンピオンシップメダルを手に入れた。
「アジア初の銀メダルを獲得できたというのは、大きなニュース。日本でカップル競技はメジャーではないけれど、結果を出すことで注目してもえますし、興味を持ってもらうチャンスでもある。そういう『きっかけ』のひとつに自分たちがなれたのは、嬉しいですね」(高橋)
結成わずか2シーズン目にして、たったの6試合目という本番経験の少なさが影響し、RD「ソーラン節」のスタート直後には「練習ではしたことのない」転倒もした。ただし個々の選手としては長い経験を持つ2人は、すぐに切り替え演技に集中。正確な足さばきで、パターンダンスのキーポイントではYYYYとYesを4つ並べた。
RDでは日本の粋と勇壮さで世界を興奮させた村元&高橋組は、FD「ラ・バヤデール」では繊細でクラシカルな美を披露した。本物のバレエの一幕を見ているかのような、濃密な4分間。要素とレベルで計算されるベースバリューだけならグリーン&パーソンズ組を上回り、確固たる技術力も証明してみせた。
「私たちはまだまだ進化するポテンシャルを有しています」と村元は断言し、「2人で表彰台の真ん中に立ちたい。もっといろいろな景色が見たい。そんな意欲が芽生え始めています」と、高橋も未来に目を向ける。まずは3月に、カップルにとって初めての世界選手権で、さらなる進化を見せてくれるはずだ。
3位クリスティーナ・カレイラ&アンソニー・ポノマレンコ組は、すでに4年先を見据えている。21歳の2人は、カップルを組んで8年。世界ジュニア選手権では銀メダルを手にした経験も持つが、シニアのチャンピオンシップ出場はやはり初体験。
2人にとっては難しいシーズンだった。「たくさんのアップダウン」があり、国内選ではまるで納得の行く演技ができなかった。RDもやはり「上手く行った部分と、行かなかった部分」があった。ただしFDでは「シーズンで最高の演技」ができたと語る。
「自分たちの演技を誇らしく思っています。今大会に向けてメンタル・フィジカル共に、たくさんの準備を積んできました。この成績が、今後4年間の飛躍材料となってくれるよう、願ってます」(ポノマレンコ)
またアメリカの3組目エミリー・ブラッティ&イアン・サマーヴィルは、瑞々しい魅力をリンクいっぱいに振りまいた。つい2週間前の全米選手権出場時には、ISU国際スケート連盟の公式HP内の選手データベースにさえ掲載されていなかったほど……カップル歴の浅いカップルでありながら、結成初年度シニア1年目シニア選手権初挑戦5位と大健闘。グリーン&パーソンズやカレイラ&ポノマレンコと共に、4年後、8年後の活躍を見届けたい。
4年前に銀メダル経験のあるキャロラーヌ・ソシース&シェーン・フィルス組は、RDを表彰台までわずか0.2点差の4位で折り返したが、逆転ならず総合でも4位で終えた。欧州選は3度出場経験があり、今季フランスからカナダへ所属を移動したマリー=ジャード・ローリオ&ロマン・ルギャック組は、FDで転倒。RDから1つ順位を落とした6位で、初めての四大陸選手権を終えた。
文:J SPORTS編集部
J SPORTS 編集部
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