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フィギュア スケート コラム 2022年1月25日

第71回全国高等学校スケート競技・アイスホッケー競技選手権大会(インターハイ)フィギュアスケート競技 女子シングルレビュー

フィギュアスケートレポート by 中村康一(Image Works)
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2022年1月18日~21日、青森県青森市、盛運輸アリーナにてインターハイ、フィギュアスケート競技が開催された。新型コロナ禍の中、無観客とはいえ無事に開催できたことは僥倖だった。今回は五輪シーズンということもあり、ややメンバーが手薄な印象ではあったが、それでも個人の目標のため、そして学校別対抗というインターハイならではの目標のために精一杯取り組む高校生達の姿は感動的だった。男女それぞれ上位8名の入賞選手を全員ご紹介したい。

1位 住吉りをん

住吉りをん

今回の会場、盛運輸アリーナはとにかく寒い。6分間練習をして体を温めてもすぐに冷えてしまう。住吉選手も「今までで一番ぐらいに寒いリンク」と、演技直前まで体を温めて臨んだという。フリー演技の冒頭には、公式戦で自身3度目となる4トウループに挑戦。惜しくも転倒したものの、過去の挑戦の中では最も成功に近いものだった。

「軸もすごく良くて上がりも良くて、自分の中で『あ、降りた』って思ったんですけど、着氷でうまく力を伝えることが出来ませんでした。本当に着氷だけのミスです」

しかし、そこからの立て直しは見事だった。大技への挑戦を始めた選手は、得てして大技の失敗を引きずり、その後の演技を壊してしまうケースが多いのだが、この日の住吉選手は全くそんなことを感じさせなかった。

「全日本の時は、4回転を入れた構成での練習ができていなくて、準備不足の状態で挑戦してしまったんです。この1ヶ月で大分この構成に慣れて、4回転で失敗しても、他で失敗しないという練習ができていたので、それが試合で出せました。世界ジュニアでも4回転に挑戦したいです」

その世界ジュニア、昨年は新型コロナ禍のために中止となった。今も開催地のブルガリアでは新型コロナの蔓延が続いている。

「開催されることを祈っている状態なんですが、本当に開催される、行けるとなったら、もう楽しむしかない。楽しんでいい演技をしたいです。世界ジュニアでは、順位の目標は考えていなくて、ショート、フリーと納得のいく演技を揃えたいです」

3年生で迎えた最後のインターハイ、個人での優勝とともに、学校別対抗でも優勝を果たすことが出来た。

「駒場学園が優勝するのは本当に久し振りのことなので嬉しいです。他の2人(穂積乃愛、猪股早哉子)とは、最初から『今年、狙い目だよね、頑張ろうね』と声を掛け合っていました」

住吉選手は幼少時よりずっと努力を怠らない選手だった。しかしノービス時代には華々しい活躍を見せたものの、ジュニアに上がってからは練習が試合の結果に結びつかない時期が続いていた。それが今年、今までの努力の積み重ねが一気に花開いた印象だ。

「原因はメンタルだと思っています。試合になると自信がなくなり、跳べないかもしれない、ってネガティブな気持ちになっていたんですけど、今年になってようやく試合で自信を持って演技をすることができるようになってきたんです」

その精神面での成長が、演技での余裕につながって、試合で結果を出せるようになったのだ。また、この大会が開催された青森市にある三内丸山遺跡の見学にも行けたのだという。

「試合に集中し過ぎないで楽しんだ方がいい、と最近思うようになったので、そういった観光もするようにしたいです」

世界ジュニアの開催される、ブルガリア、ソフィアでも観光しつつ、練習通りの演技をしてもらいたいものだ。

2位 千葉百音

千葉百音

フリーでは、珍しく得意のルッツで転倒してしまった。

「6分間練習で綺麗に跳べていたルッツが跳べなかったことが悔しい。今回初めて入れた2アクセル+3トウループも含めて、しっかり跳べるようにしたいです」

ルッツはいつも安定している印象だが、今日は「跳び急いでしまった」のだという。そしてこの試合では、2回目のルッツがキックアウト扱いとなってしまった。3ルッツ、3フリップ、3トウループをそれぞれ2回ずつ跳んでしまったためだ。転倒したルッツを3回転判定ではないと思い込んだのか、あるいはセカンドの3トウループを、1回しか挑まない予定だったものを間違えて2回跳んでしまったのか。いずれにせよもったいないミスだった。ただ、ルッツ、フリップともにエッジエラーがついていた以前と比べると、最近はしっかり跳び分けもできており、ジャッジからの評価は着実に上がってきている。現在師事している、田中総司コーチの指導の影響も大きいのだろう。その田中コーチ、現役時代はジャンプの得意な選手だった。大技の指導も受けているようだ。

「今は4回転トウループとトリプルアクセルに挑戦しています。私はあまりアクセルが得意ではないんですが、田中コーチからアドバイスをもらって挑戦しています」

口ぶりからして、どうやら4トウループの方が実現の可能性が高そうだ。

「来季は、できれば4回転とか難しいジャンプを試合に取り入れていきたいです。来季はジュニアに残るか、シニアに上がるか考え中なんですけど、国際大会に派遣されるようになりたいです」

大技を1つ身につければ、一気に国際舞台での活躍が見込める逸材だ。大いに期待したい。

3位 江川マリア

江川マリア

昨シーズンのインターハイでは2位と活躍を見せ、今年は3位。相性の良い大会のようだ。今季はPCSなど、ジャンプ以外の部分で高い評価を得られるようになった印象だ。

「今季はジャンプも新しい3ルッツ+3トウに挑んだりと、強化をしたんですけど、それ以上に、プログラムを感情移入して演技をすることができるようになったことが評価されるようになった原因かな、と思います」

情感のこもった、見事な“レ・ミゼラブル”だった。昨年のインターハイでは、閉鎖の危機を迎えていたホームリンク、パピオの話題を質問したのだが、その後、署名活動の甲斐なく閉鎖が決まってしまった。昨年の夏は飯塚アイスパレスまで通っていたという。

「リンクが全くないわけではないんですけど、あっても練習時間が限られていたので、毎回、大事に滑る、短い分、必死にやり、それ以外の時間で陸上トレーニングをやったりしました。リンクが閉鎖されて練習環境が悪くなっても、気持ちが落ちることなく成長できたことは良かったと思います」

この春から大学生になる。取材時点ではまだ大学名は公表できないようだったが、進学後もスケートを続けることは決まっているそうだ。より良い環境で、一層の飛躍を期待したい。

4位 横井きな結

横井きな結

今季、あまり調子の良くない演技が続いていた。そんな中、このインターハイは精一杯の演技を披露した印象だ。

「本当に、今シーズンは全然上手く行きませんでした。でも最近はジャンプの感覚もすごく良くて、いい状態でこの試合に来ました。なのに本番で悪くしてしまったところが反省点です。ひとつ転倒するとその後を悪くしてしまうのが私の悪いところで、本番では自分で跳べなくしているので、その癖を直していきたいです」

来季については、
「もちろん全日本選手権を目標にしているんですけど、まだジュニアに残るかシニアに上がるか決めていなくて、ジュニアに残るのであれば全日本ジュニアで6位以内、今シーズン、残りの試合で自分のできることをやっていきたいです」

以前は試合でトリプルアクセルを着氷したほどのポテンシャルの持ち主だ。復活を期待したい。

5位 三枝知香子

三枝知香子

全日本ジュニアでは、フリー当日に大学の面接があり、東京と名古屋を往復し、あわや失格ギリギリの時間にリンクに現れたのだった。その時はさすがに準備不足で良い演技はできなかったのだが、今回は、きちんと準備して試合に臨み、ミスはあったが5位という成績を残すことができた。

「悔しい出来ではあったんですが、気持ちの面では良かったところもあったと思います。体が冷えないように意識して出番を待っていたんですけど、中盤、動きが鈍くなってしまいました。大学は日本大学に進学します。来季はシニアになるので、レベルも上がっていくと思うので、自分もそれについていけるように頑張ります」

来季はインカレで活躍する姿が見られることだろう。

6位 田中梓沙

田中梓沙

表現力豊かで、スケーティング、技のつなぎなど、ジャンプ以外の見どころの多い選手だ。ただ今回は思うような演技ができなかった。

「こちらのリンクに来てからジャンプの調子が悪く、不安が大きくてそれが試合に出てしまいました。練習で調子が悪くても、試合でちゃんと調子を合わせられるような選手になりたいと思うので、今回はそれが反省点です」

田中選手は練習では素晴らしいのだが、試合本番では良いとき、悪いときのばらつきが大きい印象だ。その原因は、やはりメンタル面だろうか?

「前だったら、メンタル面の問題が大きかったと思います。ただ今回はメンタルではなく、普通に調子が悪かったんです」

ただ昨シーズンは怪我の影響で長い休養を余儀なくされていた。今季は復帰にこぎつけただけでも良しとするべきかもしれない。

「怪我をしてしまって、氷に乗れない期間がすごく長くて、不安があったんですけど、何とかここまで戻ってこれて、続けていられて良かったです。来季がどうなるか分からないんですけど、自分の目の前にあることを精一杯やりたいです。1つ1つこなしていきたいです」

今は大きな目標は立てられていないようだが、1つ1つこなすことで、いずれは大舞台での活躍を目指してほしいものだ。

7位 清水咲衣

清水咲衣

演技中のポジションがとても綺麗な選手だ。そしてジャンプの安定感のある選手との印象だ。

「今季はジャンプだけじゃなく、表現に力を入れてきました。前よりはジャンプの安定感が出て、高さも前よりも出ていると思います。今回はフリーでミスしてしまったんですけど、今季を通しては安定してきたと思います。でもまだまだ直すところが沢山あります。今回の試合で、もっと上手くなりたいと強く思いました」

上手な選手達と一緒に滑ることで、取り組む思いを新たにしたようだ。今後の目標については、
「プログラムの中で表情をもっと出せるようにしたい。スケーティングはまだまだなので、オフシーズンに磨きたいと思います。トウループが苦手なので、コンビネーションのトウループを安定させたい。ループもコンビネーションに入れていきたいです」

セカンドの3トウループは現在もプログラムに組み入れているが、より向上させたいとのことだ。セカンドループが入れられるようになれば、大きな武器になることだろう。

8位 柳川加奈

柳川加奈

いつも笑顔で演技をする選手だ。以前、ルパン三世のプログラムでファンに受けていた選手、といえばご記憶の方もいるかもしれない。

「ミスはあったんですが、笑顔で楽しく滑ることが出来ました。初めてのインターハイは、緊張することなく楽しく滑ることが出来ました。フリーの曲は私の好きな韓国ドラマの曲で、コスチュームもそのドラマの衣装を参考に作ってもらいました」

ルッツ、フリップの得意な選手ではあるが、現在は3+3のコンビネーションを入れられていない。今後は、ルッツ、フリップのセカンドに3トウを付けられるようにしたいとのこと。そして彼女は名古屋西高校に進学した。スケートの世界では名前を聞くことのない公立高校だ。昨シーズンは受験勉強のためにあまり試合に出られなかったのだという。

「実は夢があって、教師になりたいと思っているんです」

その夢のために、文武両道で頑張る決意をしたのだそうだ。是非頑張って夢を叶えてほしい。

文:中村 康一 / Image Works

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中村康一(Image Works)

フィギュアスケートを中心に活躍するスポーツフォトグラファー。日本全国の大会を飛び回り、選手の最高の瞬間を撮影するために、日夜シャッターを押し続ける。Image Works代表。

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