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【村上晃一】
1965年京都市生まれ。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。
ラグビーの現役時代のポジションは、CTB(センター)、FB(フルバック)。1986年度西日本学生代表として東西対抗に出場。
87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者、ラグビージャーナリストとして活動。J SPORTSのラグビー解説は98年より継続中。1999年から2019年の6回のラグビーワールドカップでコメンテーターを務めた。著書に「仲間を信じて」(岩波ジュニア新書)、「空飛ぶウイング」(洋泉社)、「ハルのゆく道」(道友社)、「ラグビーが教えてくれること」、「ノーサイド 勝敗の先にあるもの」(あかね書房)などがある。
9月27日、NZネーピアのマクレーンパークは快晴だった。前日から街にはカナダと日本のサポーターがたくさん集い、観客席も両国の国旗があふれていた。試合前のウォーミングアップでは、1勝もせずに帰るわけにはいかない日本代表選手たちの厳しい表情があった。その表情は悪くないと思っていたのだが、そのあと、カナダの代表がロッカールームに引き上げる際、全員が肩に手をかけたり、シャツを持ったりして、小さく固まって歩いているのを見た。その姿を見るだけで胸が熱くなるような一体感。トンガに粘り勝ち、フランスに迫った結束力が垣間見えた。
午後5時キックオフ。3分、いきなり日本がピンチを迎える。ハーフウェーライン付近の日本ボールラインアウトでボールが後ろに流れ、カナダCTBファンデルメルヴァに抜け出される。ここではウェブ将武がアンクルタップでつまずかせ、立ち上がってなおも走ったところを、小野澤のトライセービングタックルでしのいだ。これがノックオンに判定されなかったことで、カナダボールのスクラムからトライされてしまうのだが、今大会の小野澤の集中力の高さを物語るカバーディフェンスだった。しかし、相変わらず試合の入りが悪い。
トンガ戦ではブレイクダウン(ボール争奪局面)を制圧され、ミス連発で敗れた日本だが、カナダ相手には、ミスを少なくするよう攻撃プランを絞り込み、短いパスで狭いスペースを攻めること、早めにキックを使って地域を進めることで試合を優位に進めた。細かなミスはあったが、カナダもミスが多く、HO堀江、WTB遠藤のトライなどで前半を17-7とリードした。
後半開始直後、自陣から攻めた日本にスローフォワードの反則。カナダボールのスクラムとなり、サインプレーからWTBマッケンジーにトライを奪われる。細かなミスが失点に直結し、17-12。後半20分すぎ、17-15と迫られたところで、LO大野均、FLタウファ統悦が登場、二人のアグレッシブなプレーがもう一度日本に流れを引き寄せた。特に大野のブレイクダウンでの激しさは、与えられた役割を全うする責任感にあふれ、見ていて胸が熱くなった。
互いにPGを決めあって、20-15となった後半33分、SOアレジがPGを決めて23-15。しかし、8点リード以降は、カナダの猛攻を受けることになる。勝利が見えてやや気持ちが守りに入ったのかもしれない。懸命に粘ったがカナダもミスなくボールを動かして、トライを取り切り、23-20。その後もボールをキープされ、最後は痛恨の反則。PGで同点に追いつかれた。残り2分、日本も攻め込んだのだが、SOアレジのドロップゴールが外れてチャンスを逸した。もう少し我慢して攻めればトライがとれたかもしれない。判断を焦った気がする。
日本代表の2011年W杯が終わった。結果は、4年前と同じ3敗1分け。引き分けの相手も前回と同じカナダだった。キーボードを打つ指が重い。トンガ戦の課題を修正し、目指す素早い連続攻撃も、ある程度は見せられた。だが、スクラムでは圧力を受け、大事なラインアウトでもミスがあった。課題のセットプレーは課題のまま残った。試合の入りの悪さ、チャンスでのハンドリングエラーなどミスもなくならない。タックルミスは、公式の数字で、後半12(前半5)、カナダは、後半5(前半8)だった。試合後、小野澤選手が、「悔しいねぇ、勝てないねぇ」と実感のこもったコメントをしてくれた。目にはうっすらと涙が浮かんでいた。彼の4年間を思うと、言葉にならない思いがこみ上げた。
マン・オブ・ザ・マッチには、負けチームながら、バツベイシオネ選手が選出されている(失礼しました。引き分けでした)。
◎マン・オブ・ザ・マッチ/バツベイシオネ選手
「勝ちたかったけれども、自分自身、全力を出し切れたと思います。今回ワールドカップ4試合でマン・オブ・ザ・マッチを3人も受賞したことは、日本のラグビーがレベルアップしている証拠だと思います。少しでも次に繋がると思います。応援ありがとうございました」
◎ジョン・カーワン ヘッドコーチ
「今日は勝ことができた試合でした。ほとんどの時間において、ゲームを支配することができ、ジャパンがやりたい攻撃を多く示すことができたゲームだったと思います。後半簡単なミスが多く、最後の一押しがなく、引き分けに終わったことは本当に残念です。選手たちは、全てを出し切ってプレーしてくれたと思います。勝利することはできませんでしたが、最後まで持てる力をこのゲームに捧げてくれました」
■試合結果
日本代表△23-23△カナダ代表(前半17-7)