ラグビー愛好日記

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このブログについて

プロフィール写真【村上晃一】
1965年京都市生まれ。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。
ラグビーの現役時代のポジションは、CTB(センター)、FB(フルバック)。1986年度西日本学生代表として東西対抗に出場。
87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者、ラグビージャーナリストとして活動。J SPORTSのラグビー解説は98年より継続中。1999年から2019年の6回のラグビーワールドカップでコメンテーターを務めた。著書に「仲間を信じて」(岩波ジュニア新書)、「空飛ぶウイング」(洋泉社)、「ハルのゆく道」(道友社)、「ラグビーが教えてくれること」、「ノーサイド 勝敗の先にあるもの」(あかね書房)などがある。

試合レポート 2008年09月23日

近鉄対ヤマハ結果・追記

ラグビー愛好日記 by 村上 晃一
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23日は花園ラグビー場だった。カミナリで順延となったトップリーグ第3節、近鉄ライナーズ対ヤマハ発動機ジュビロ戦をJsportsで解説するためだ。朝、東京から新幹線で大阪に向かい、キックオフ2時間前の午後1時くらいに会場入りしたのだが、大阪は2日前とは打って変わって快晴。東花園の駅から10分ほど歩いただけで汗が出るほど暑かった。上着は不要だった。

ヤマハは、日曜、月曜と大阪のホテルに延泊し、22日は花園ラグビー場の練習グラウンドで調整練習をしたようだ。昨日、花園の第2グラウンドは芝の種をまいていたため。このあたりは花園がホームの近鉄の選手達に比べてハンディかと思ったが、連敗スタートとあって、この日ばかりは負けられないという気迫がみなぎっていた。

トップリーグ発足年の開幕節から連続出場記録を更新し続けていた大西将太郎選手は、前節のアキレス腱損傷で全治6週間という診断。この日はスタンドからトップリーグ初観戦となり、記録は61試合で途切れた。ただし、トップリーグ発足以来の連続出場は大西選手しかおらず、この記録は抜かれることはない。

午後3時キックオフ。前半6分、近鉄がSO重光のPGで先制も、直後の8分、ヤマハは、敵陣22mのラインアウトからCTBサウが抜けだし、すぐに7-3と逆転する。その3分後にも、ヤマハは、NO8木曽の突進をサポートしたWTB五郎丸が連敗の精神的プレッシャーから解放されるような連続トライで突き放しにかかる。その後も、プレースキック好調の五郎丸が2本のPGを決め、20-3として試合の主導権を握った。

前半は、ヤマハが蹴りこんだボールの処理ミスや、地域挽回のタッチキックが短いなど、近鉄にミスが続き、ヤマハはいい位置でセットプレーを得て好機を得点に結びつけていた。また、ブレイクダウン(ボール争奪局面)でも、しっかりまとまって相手を押し込む場面が多く、結束力もヤマハが上回っていた。

近鉄も前半24分、SO重光が好ステップで防御ラインを突破して追撃のトライを上げるが、直後のキックオフで近鉄がキャッチミス。このあとのスクラムから、CTBマッコイドがパスを受ける前に外側に伸びる好走で抜け出してトライ。30-10とする。完全にヤマハペースかと思われたが、後半は、近鉄が猛反撃。自陣からも簡単にタッチに出さず、ハイパントにプレッシャーをかけてヤマハのミスを誘うなど、チャンスを作ってはボールをつないだ。その連続攻撃は試合後ヤマハの堀川監督が、「うちが目指すボールを動かすラグビーを相手にやられてしまった」とコメントしたほど。攻めにかかった近鉄はミス無くゴール前までボールをつなぎ、HO重枝らのトライで、後半13分、ついに27-30の3点差に迫った。

点の取り合いは最後まで続き、ノーサイド寸前は、43-37のヤマハ6点リードで白熱の攻防となった。最後はヤマハが守りきったが、観客を大いに沸かせる壮絶な試合だった。ヤマハはようやく今季初白星で、勝ち点5を獲得。近鉄も破れはしたが、4トライ以上と、7点差以内の負けのボーナス点2を獲得した。五郎丸は、1トライ、4ゴール、5PGの28得点をあげ、プレースキックは100%の成功率だった。

近鉄のピーター・スローンヘッドコーチは、「前半簡単に14点取られてしまったが、選手達はあきらめなかった。いろんな国でコーチをしてきたが、トンプソンのような素晴らしいリーダーシップは見たことがない。負けたことは残念だが勝ち点2を獲得できたことは、嬉しく思っています」と選手達の健闘に手応えをつかんだ様子だった。

キャプテンのルーク・トンプソンも、「きょうはトップリーグのレベルの試合ができたと思う。集中力が切れて簡単にトライされた時間帯もあったが、よく立て直してくれた」と一定の評価をしていた。

近鉄は4季ぶりのトップリーグ昇格だが、上位陣を脅かす地力のあるところを見せた。ただし、自陣での単純なミスや反則もあり、雑なところも多い。このあたりは接戦を経験するごとにプレーの正確性を高めたいところだ。外国人選手のSOが大活躍する中、SO重光も健闘も光る。パスワークも落ち着いているし、プレースキックも正確で、自らもトライできるタイプ。3節を終えた得点王争いでは、48点で3位につけている。今後も期待できそうだ。

ヤマハの堀川監督は嬉しい勝利ではあるものの表情は厳しかった。「前半はゲームプラン通りでしたが、後半はミスで流れを悪くしました。きょうの反省を生かして、休止期間あけの試合に臨みたいと思います」。相手を突き放すまで得点を畳みかけられないところや、簡単に破られた防御など課題は多い。それでも、この勝利は大きい。まだ2敗である。ここから巻き返す時間は十分にある。

◎トップリーグ第3節結果(23日)
近鉄ライナーズ●37-43○ヤマハ発動機ジュビロ(前半13-30)

トップリーグは、7人制日本代表ワールドカップ・アジア地区最終予選のため、2週間の休止となる。再開は、10月10日(金)の第4節「NECグリーンロケッツ対クボタスピアーズ」(19時30分、秩父宮)より。こちらも注目試合である。

追記◎この試合の終盤、近鉄の攻撃時に、SO重光選手がヤマハの選手の足につまずいて倒れるシーンがあった。足をひっかける行為はケガにつながりやすく、重い反則である。明らかに故意の場合はレッドカードが出ることもある。ここでは、アシスタントレフリーのフラッグインでペナルティとなった。背番号が確認されていなかったのだが、試合後、足をかけたのが五郎丸選手と映像で確認された。トップリーグ表彰懲罰委員会は検証審議を行い、前節にも足をかける行為で厳重注意を受けていた五郎丸選手への処分を決定した。6週間の試合出場停止(9月24日〜11月4日)である。相手に抜かれそうになって思わず足が出た行為とはいえ、危険な行為には違いない。五郎丸選手はこの試合でマンオブザマッチに選出されたが、この賞も取り消され、この試合のマンオブザマッチは該当者なしとなった。

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