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この1か月、国内外でたくさんの試合があって、ラグビーファンは嬉しい悲鳴の日々。筆者も高校から大学、国代表レベルまで幅広い試合を解説した。なかでも印象に残った女子ラグビー選手のコメントがある。11月12日に行われた、女子ラグビーワールドカップ・ニュージーランド大会の決勝戦(ニュージーランド代表対イングランド代表)の試合後のインタビューだ。11月28日夜、Jsportsのラグビー番組「ラグビーわんだほー!」で一部が紹介されたが、ここに全文を記しておきたい。
試合は凄まじい激闘の末、ニュージーランドが勝ったのだが、前大会の決勝戦でニュージーランドに敗れたイングランドは雪辱を期して強化し、テストマッチ30連勝を達成。無敵のチームとして決勝に勝ちあがった。ところが、前半18分、危険なタックルに対してレッドカードが出て14人になってしまう。それでも、イングランドは約60分間を14人で戦い抜き、ニュージーランドは高いスキルを発揮して質の高いトライを奪い、観客を沸かせた。
4万人を超える大観衆。地元で連覇を達成したニュージーランドのキャプテン、ルアヘイ・デマントが全身に歓声を浴びながらインタビューに応じる。続いてイングランドのキャプテン、サラ・ハンターがその想いを語る。惜敗直後にもかかわらず、相手に敬意を表し、なお誇りを失わないインタビューは、この大会の価値を高めていた。そこには、ラグビー憲章の「品位、情熱、結束、規律、尊重」がすべて詰まっていた。

◎ルアヘイ・デマント(ニュージーランド代表キャプテン)
Q:どうぞひと息ついてください。自国開催のラグビーワールドカップで45,000人を前に優勝というのは、どういう気持ちですか?
RD:本当に言葉がみつかりません。ただ言える事は「ありがとう」ということです。チームをこれほどまでに誇りに思えたことはありません。
Q:このチームはこの11カ月間あまりにも多くの困難が立ちはだかっていました。それをどのように乗り越え、決勝まで勝ち上がり、このようなパフォーマンスを発揮できたかを教えてください。
RD:明らかにチャレンジングでした。おそらくここにいる多くの方々は昨年私たちのチームが北半球遠征で打ちのめされた事をご存じないと思います。その状況を選手たちが自ら変えてきました。見えないところで色々な努力をしてきました。この舞台にくるまで、この場にはいない多くの選手たちが非常に大きな役割を果たしてきて、私たちをこの場に押し上げてくれました。一生に一度の母国でのワールドカップで勝利するために本当に多くの犠牲を払って最後までやりきることができました。
Q:大会が始まる前から(開催できるだけで)勝利したと言っていました。これだけの応援、50,000人の応援と世界中の多くの人々からのサポートを感じられましたか?
RD:もちろん感じました。これだけ多くのファンがいる事に私たちは慣れていないので胸がいっぱいになりました。NZが私たちを誇りに感じてくれたらと思うし、次世代のスター、将来のブラックファーンズやオールブラックスのスターにインスピレーションを感じてもらえたらと思っています。
Q:お時間ありがとうございました。チームの皆さんのところにお戻りください。
RD:最後に一言、サラとサラのチームにも心からお礼を言いたいです。最後の最後まで死闘でした。それを覚悟して試合に臨みました。イングランドは優勝候補であり、2019年から負けなしなので、この試合は当然勝つはずの試合だったと思います。(それだけ力のある)チームで心から称賛していますし、この上ない相手との決勝でした。今夜、イングランドチームも(同志として)喜び合っていただきたいです。

◎サラ・ハンター(イングランド代表キャプテン)
Q:サラ・ハンター、お時間ありがとうございます。(会場に拍手が沸いて)この歓声が物語っています。これはイングランドのチームへの大きな称賛ですね。
SH:スコアは時に残酷なものだったりします。チームが今夜だけではなくこの3年間力を出しきった事を誇りに思います。円陣で話したのですが、1つの結果だけが、チーム、個人、人間としての今後の成長を決めるものではありません。ここまでの道のりを皆さんに知っていただけることを願っています。今夜の試合は女子ラグビーとは何かを表すものだったと思います。NZのチームを心から称賛します。素晴らしかったです。優勝おめでとうございます。私たちが全てを出し切った事はまぎれもない事実で、優勝杯を持ち帰ることができずに残念な結果でしたが、NZおめでとうございます。優勝にふさわしいチームです。
Q:今夜は60分14名でNZと戦い、加えて45000人の中でプレーしました。そんなイングランドチームをどのように感じますか?
SH:私たちの性分で逆境になり更に火がつきました。前にもこのような事があり、最後の瞬間まで戦いぬきました。時には人数が少ない状況はあるものですが、振り返ったときに誇りに思えると確信しています。全てを出し尽くしたので、結果が思うようにいかなくても、グラウンドでやり残した事は何一つ無いと受け入れらます。今夜、これ以上の事はできないくらい全てを出し尽くしました。そういうチームとここまで達成できた事を誇りに思います。今も心が張り裂けそうですし、この傷は残りますが、チームとしてやってきたことを声高らかに言っていかないといけないし、これから成長して更に強くなって戻ってきたいと思っています。一緒に勝利し、一緒に敗北を味わい、共に胸を張っていく気持ちを失う事はありません。
Q:驚異的な決勝でした。お時間ありがとうございました。安全な帰国ができるように願っています。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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