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2022年8月27日の夜は日本のラグビー界にとって大切な日になった。サクラフィフティーン(女子15人制日本代表)が女子アイルランド代表に初勝利した。そして、日本ラグビーフットボール協会が、女子日本代表選手にもキャップを贈ることを決め、その贈呈式が行われたからだ。(写真©JRFU)
ハーフタイムに日本協会の土田雅人・新会長から各世代を代表する女子日本代表の6名にキャップが贈呈された。はからずも涙が出て、JSPORTSの解説席で声が上ずった。僕がラグビーマガジンの編集部にいた若いころ、女子のキャップ第1号になった岸田則子さんを中心に日本女子ラグビーフットボール連盟が立ち上げられた。1988年のことだ。日本で初めての女子チームは、1983年に発足した世田谷レディースだといわれる。その後、たくさんのチームが生まれたが、80年代は女子ラグビーを見る目は珍しいものを見るという感じで、メディアの取り上げ方も茶化したものが多かった。
当時、岸田さんとそんな話をしながら、専門誌として真正面から取り上げなくてはいけないと肝に銘じたのをよく覚えている。1991年、女子日本代表チームは第1回女子ラグビーワールドカップに参加した。自己負担でだ。まだ日本ラグビー協会に認められていなかったから、代表ジャージも今とは違った。日本協会に正式加盟するのは2002年のこと。その後、女子ラグビーはオリンピックで7人制ラグビーが正式種目になったこともあって着実に競技人口を増やしていく。単身海外留学して腕を磨く女子選手も次々に現れた。それでも扱いは男子と差があった。
女子アイルランド代表との試合で活躍した齊藤聖奈選手に話を聞いたことがある。30歳の彼女が大学時代でさえ、女子ラグビーの練習環境は整っておらず、練習できる環境を求めてさまざまなチームで練習していたという。そんな歴史を垣間見ていた身としては、キャップをかぶった岸田さんの淡々とした挨拶が、よけいに感動的で涙してしまったのである。
本来であればもっと早くキャップ制度を整えるべきだった。それでも始まったことを歓迎したい。5月には世界ランキング5位(当時)のオーストラリア代表を破り、今回、世界ランキング6位の女子アイルランド代表を破ったことは、キャップ制度始動の価値を高めた。歴史を繋いできた選手たちも感謝しているだろう。日本全体のラグビー人口は減少し続けているが、女子のラグビー人口は増えている。今後、さらなる発展が期待できる。女子アイルランド代表との試合後、両チームのヘッドコーチのコメント、両チームの選手たちの互いをリスペクトする姿にラグビーが大切にしてきたスピリットを感じた。ラグビー精神を大切にして献身的に戦う選手たちを応援する人も増えるだろう。

現在発売中のラグビーマガジン10月号の表紙は、サクラフィフティーンのキャプテン南早紀選手が突進する写真だ。8月25日発売なので歴史的勝利は掲載されていないが、女子選手が一人でラグビーマガジンの表紙を飾るのは、1972年創刊以降初めてのこと。2016年に女子選手が表紙を飾ったときは4人でのポーズ写真だった。そして、8月28日、女子日本代表が9月24日(土)にオークランド(ニュージーランド)で女子ニュージーランド代表とテストマッチを行うことが発表された。2017年のラグビーワールドカップで優勝し、今年の自国開催のワールドカップで連覇を狙うチームだ。試合前にはハカもある。なにもかもが歴史に刻まれることばかりだ。
9月9日~11日、7人制ラグビー日本代表(サクラセブンズ)は、南アフリカで行われるラグビーワールドカップ・セブンズ2022に出場。サクラフィフティーンは、10月8日、ニュージーランドで開幕するラグビーワールドカップ2021に臨む(コロナ禍で1年延期になったため名称はそのまま)。これまで女子ラグビーに接する機会のなかった皆さんには、ラグビーの新たな楽しみが増えた感覚だろう。最後は皆さんにお願い。サクラのエンブレムを胸に世界に挑む選手たちに、ぜひ熱い声援を!

村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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