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ラグビーの縁がつながって、土木の専門誌を送っていただいた。「土木技術 Vol.75 No.2」(発行・土木技術社)。社会と土木を結ぶ総合雑誌ということで、これまでにも、「子育てと土木」、「歌と土木」、「夏休みと土木」、「自転車と土木」、「登山と土木」などの特集が組まれている。そして、12月1日から全国の書店に並ぶ最新号が「ラグビーと土木」。巻頭言には次のようにある。
【今回はラグビーワールドカップ2019を陰で支えた土木技術や元ラガーマン技術者によるリーダーシップ論など盛りだくさんでお送りする。ラグビーの精神的至言であるone for all,all for one は、土木技術者らにも相通ずる理念である。さあ、ラグビーと土木の世界へ、キックオフ!】
『ラグビーとリーダーシップ』。筆を執るのは藤本貴也さん(パシフィックコンサルタンツ特別顧問)。灘高校でラグビーを始め、東京大学工学部土木工学科卒業。建設省に入省した専門家だ。藤本さんは灘高校時代はFW第二列、FW第三列、そしてフルバックも経験したそうだ。平尾誠二さんとも親しかったそうで、平尾さんの言葉も引用しながらリーダーシップを論じている。「どのスポーツにも社会の縮図のような面がある。とりわけラグビーのようにチームプレイが主体で、各個人の基本的な役割は決まっているものの時々刻々状況が変化し、それに即応して臨機応変の対応が必要な類のスポーツは社会の組織運営に大いに通じるところがあるように思う」。
『2019 対スコットランド戦を成功に導いた鶴見川多目的遊水地』。こちらは岸上仁さん(国土交通省関東地方整備局)が書いている。横浜国際総合競技場と鶴見川の関係、周辺の地形、過去の水害などに触れ、遊水地にどのように競技場が建築されたかが説明される。そのうえで、スコットランド戦前日、水が流れ込んだ様子が詳しく解説されている。理系はまったく苦手の僕には難しい記号が並ぶが、図と写真でなんとか理解できる。当然のことながら、試合中も排水作業は行われていた。これを読むと、試合会場が横浜だったことが感動を増幅させた気がする。ピロティ建築(高床式)。覚えておこう。
『スタジアムのあるまち調布の取組』では、調布市の道路管理者が競技場周辺の基盤整備、調布駅前広場のファンゾーンの安全対策の取り組みなどについて紹介している。歩車道のバリアフリー化、道路表面の温度を下げる効果がある遮熱性舗装など、改めてその準備を知った。
このほかにもたくさん興味深い記事があるのだが、『釜石鵜住居復興スタジアムにまつわる話』は必読だろう。国内初の床土改良型天然芝は、人工繊維と天然コルク、砂を混ぜ合わせた特殊床上土に寒地型の芝草種子を組み合わせたハイブリット芝。維持費が安くなり、稼働率向上が期待できるそうだ。『サラリーマンラガー 清水建設ブルーシャークスの挑戦』という記事もある。ここには書ききれないので、興味のある方はぜひ書店で手に取っていただければ。土木という専門的な視点からいろんなものを見ていく誌面作りは、かつて専門誌ラグビーマガジンで働いていた身として共感でき、楽しく読ませていただいた。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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