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2020年1月11日は、新しい国立競技場に初めて行ってきた。放送席に座り、JSPORTSで矢野武さん、野澤武史さんと実況解説だった(午後7時よりの録画放送)。スタジアムに入った瞬間、前の国立競技場と規模感が大きく違うことに圧倒された。前がいかにコンパクトな作りだったか再確認。観客は、57,345人。現状、客席として使える部分はほぼ満席だった。なんとなく、ラグビーワールドカップの雰囲気を思い出し、どっちかのチームがウォークライでも始めるような錯覚にとらわれた。
やや明大有利の声が多かったわけだが、内容的には早大の攻撃はプランが次々と決まり、ディフェンスでも昨年12月の早明戦から打って変わって前に出続ける勝利だった。知恵と工夫で相手を凌駕する早大の伝統が表現された戦いでもあった。強くて、賢い勝利だった気がする。
前半9分、齋藤直人の先制PGから早大は得点を重ねた。ブラインドサイトを攻めたNO8丸尾崇真のトライ、ラインアウトから一発のサインプレーでCTB長田智希が走り切ったトライと、明大のディフェンスを翻弄する。結局、前半だけで31得点という大量リードを奪った。明大は、SO山沢京平を起点にいったんボールを後ろに下げてからアタックすることを繰り返し、早大の前に出るタックルを受け続けた。プランを変更し、SHを起点にFWを前に出す、あるいは防御背後へのキックを織り交ぜるなど、早大のディフェンスラインを前に出さない工夫ができれば流れを変えられたかもしれない。そういう意味では、早大のディフェンスの勝利でもあった。ワールドカップでオールブラックスがイングランドのタックルを受け続けて負けた試合が重なって見えた。
後半に入ると明大は、3分、WTB山村知也のトライで反撃に出たが、10分、早大はSO岸岡智樹のパスを受けたWTB古賀由教がトライ。38-7と突き放す。結果的にはこのトライが大きかった。この後明大が3連続トライをあげたが、スコアは、38-28。1プレーでの逆転圏内には迫れなかった。最終スコアは、45-35。早大の会心の勝利だろう。対抗戦の早明戦での完敗からディフェンス面を立て直し、セットプレーからの攻撃を磨いたコーチ陣の手腕も高く評価できる。11大会ぶりの大学日本一。勝利の部歌「荒ぶる」が久しぶりに国立競技場に響き渡った。早大のメンバー外の部員が優勝Tシャツを着て涙ながらに出場メンバーを抱き合っている姿にぐっときた。試合に出られなかった選手たちも、最後まで赤黒ジャージーを着るために挑戦を続けたはず。それが大事。それがチームの力になる。
早大の相良南海夫監督は、試合終了直後、インタビュアーの質問に感極まって言葉を失った。「うれしいっす。いくら点を取っても安心はできなかった。選手が体を張ってくれた。長らく(頂点から)遠ざかったので、この戦いが財産になるでしょう」。齋藤キャプテンは「優勝で聞く声援は格別なものがあります」と言った。明大の田中澄憲監督は早大を称え、「いい準備をしたつもりでしたが、何か足りないものがあったということでしょう。しっかりレビューしたい」とコメントしている。
相良監督は、息子さんで早大1年生の相良昌彦のトライについて報道陣に質問され、こう答えた。「いいプレーヤーですよね(笑)。ディフェンスもよくやっていました。(息子としてではなく)いいプレーヤーだと思いました。この大舞台でトライをとるのも大したものです」。
■第56回全国大学ラグビーフットボール選手権大会
決勝結果
明治大学●35-45○早稲田大学(前半0-31)
会場:東京・国立競技場
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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