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9月6日の夜は熊谷ラグビー場にいた。観客は、2万2258人。僕は、JSPORTSのピッチサイド解説を担当したので、メインスタンドの前のタッチライン際で試合を見ていた。放送席での実況、解説は矢野武さんと、沢木敬介さん。2人の話をイヤホンから聴きながら、ときりピッチサイドの感想を伝えた。
試合前の国歌斉唱。南アフリカ国歌を歌詞カードを見て歌う日本のファンの皆さんに微笑ましさを感じ、君が代の大合唱に心を揺さぶられた。ベストメンバーを組んできた南アフリカ代表スプリングボクスへの渾身のチャレンジを客席も一体となった後押しした。しかし、内容は優勝を狙うチームの底力をまざまざと見せつけられることになった。
爽快なトライが多かったパシフィック・ネーションズカップに比べて、日本代表が攻めてもなかなか決定機を作り出すことができない。ピッチサイドで何度も言葉を失ったのは、南アフリカ代表選手の圧力が、これまで僕がピッチサイドで見てきた試合の中でも屈指の重さで、激しいものだったからだ。日本代表選手たちはすべてのプレーに最大のパワーを発揮して戦い続けなくてはいけなかった。日本代表の戦い方をしっかり分析してきたところも含めれば、これまでの相手で最強かもしれない。タックラーを一人かわした直後に重く低いタックルが次々に突き刺さってくる。その生真面目な動きにも感心させられた。
前半7分、ゴールラインを背負った相手ボールスクラムを低い姿勢で耐えた日本代表だが、南アフリカSHファフ・デクラークのサイドアタックからの攻めでWTBチェスリン・コルベにトライを奪われた。22分、自陣の22mライン内からのSO田村優のハイパントを南アフリカFBウィリ・ルルーにクリーンキャッチされ、WTBマカゾレ・マピンピにトライされてしまう。前半風下の日本代表は地域を戻すキックに苦心し、相手と競り合うキックを多用したが、ことごとくチャンスを作り出すことはできなかった。
前半を終え、日本のボール保持時間は61%、タックル成功率は92%(南アフリカは95%)。それでもスコアは、0-22。南アフリカの凄まじい圧力に、一人一人が前に出られず、パスでボールを横に動かすだけになった。機を見て防御背後に蹴るキックも少なく、攻めさせられているような感覚がずっと続いた。日本代表唯一のトライが観客を沸かせたのは、後半20分のことだった。CTB中村亮土が前に出るタックルでミスを誘い、浮いたボールをCTBラファエレ ティモシーがタップパス、アタアタからWTB松島幸太朗に渡ったものだ。弾けるような大歓声と、客席の笑顔。重苦しい雰囲気がやっと明るくなった瞬間だった。
その後は交代出場の松田力也、徳永祥尭らが奮闘し、何度もチャンスを作ったが、田村のパスをインターセプトされるなど一気に切り返されてトライを追加された。「自分たちのミスからリズムをとれなくなって、それを修正できなかった。ファンの皆さんに勝利を届けられなくて残念です」(松島)。「チャンスを作ってもトライまで行けないのが、優勝を狙うチームとの差なのでしょう」(流大)。選手たちからは反省の言葉が続いたが、オールブラックスすらもパニックに陥れることがある南アフリカの強力なディフェンスを体感できたのは何よりの財産だろう。南アフリカは防御背後へのさまざまなキックで日本代表を揺さぶり、日本代表の弱点を露にした。スクラム、モールのディフェンスは及第点か。
日本代表にとって開始早々のWTB福岡堅樹の負傷退場は痛恨だった。NO8アマナキ・レレイ・マフィも肩を痛めて退場しており、FW、BKの攻撃のキーマンがダメージを受けたのは不安材料だ。この敗戦をポジティブなものにできるかどうかは、これから2週間の準備にかかっている。まずはロシア戦をどう戦うか。開幕戦勝利に向けて入念な準備をしてもらいたい。
■リポビタンDチャレンジカップ2019
9月6日(金)19:15キックオフ
埼玉・熊谷スポーツ文化公園(県営熊谷ラグビー場)
日本代表 7-41 南アフリカ代表(前半0-22)
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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