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4月23日(火)の夜は、高田馬場ノーサイドクラブでの、第65回目のノーサイドライブだった。ゲストは、世界のトップレフリーであるアンガス・ガードナーさん(34歳)と、ベン・オキーフさん(30歳)。ガードナーさんは、2018年のワールドラグビーの最優秀レフリー賞を受賞しており、これからの世界のレフリー界を引っ張っていく2人だ。写真は、右からベン・オキーフさん、原田隆司さん(日本ラグビー協会技術委員会審判部門ハイパフォーマンスグループマネージャー)、岸川剛之さん(日本ラグビー協会技術委員会 審判部門長)、アンガス・ガードナーさん。岸川さん、原田さんも全面的に協力してくださった。

昨年のニック・ベリーさん、ニック・ブライアントさんのトークライブと同様、同時通訳機を使って日本語の質問がすぐに2人に理解できるようにした。スーパーラグビーやシックスネーションズなど、2人のレフリングを見ているラグビーファンの皆さんが多くて、どんな話も理解してくれるので進行役としては最高に楽しかった。
レフリー視点のラグビーの面白さや、普段のトレーニングなど、ユーモアを交えて聞かせてくれて満員の点内は爆笑の連続。「ハリケーンズ対サンウルブズの最後のスクラムは、サンウルブズのコラプシングではありませんよ!」(村上)、「ソー、ソーリー(笑)」(アンガス)。フィジカルトレーニングに熱心で太い腕のアンガスに、「その筋肉、レフリングに必要ですか?」と問うと、ベンが笛を吹きながら手を上げるしぐさ。なるほど、ピシっと素早く手を上げるために必要なんだ(笑)。

印象に残ったのは「レフリーの仕事は試合をファシリテートすること」(アンガス)という言葉だ。僕はこのトークライブのファシリテーターだったわけだが、つまりは、両チームの間に立ち、プレーヤーの良さを引き出して、試合を円滑に進行するのがラグビーのレフリーの役目だということだ。ベンも「競技規則通りに笛を吹いたら、5秒ごとに試合が止まるでしょう」と話した。試合への準備ついて聞いたとき、金曜日のサンウルブズ対ハイランダーズのレフリーをするベンが答えた。「サンウルブズについては先週、アシスタントレフリーとしてプレーを見ることができました。ハイランダーズの映像も見ています。両チームの特徴を知り、彼らのプレーの邪魔にならないような立ち位置(ポジショニング)を考えています」。
レフリーをしていて嫌な思いをしたことや、最悪の選手に会ったこともないという。「それがラグビーの素晴らしさです」(ベン)。2人とも、もし、ワールドカップでレフリーをする試合が選べるとしたら、「日本代表の試合」と答えた。「サンウルブズの試合で感じたのですが、日本の観客の皆さんはラグビーを純粋に楽しんでいる。サンウルブズのトライで盛り上がり、相手チームのトライにも拍手する。もし、ワールドカップの満員のスタジアムで日本代表の笛を吹いたら、鳥肌が立つような感情になるのではないかと思います」(ベン)。
アンガスは、コミュニケーションは、選手だけではなく観客との間でも必要という話を聞かせてくれた。「スタジアムの観客、テレビを見ている人に、今レフリーが何をしているのか、ストーリーを見せることも大切です。私がキャプテンを呼んで話すとき、テレビのカメラはそこを映し出します。それを意識して話しています」
選手の能力を最大限に発揮させる。イエローカードになるような反則を事前に防ぎ、15人対15人で戦えるようにする。観客にも分かりやすいように試合を進行する。そんなことにも心を砕いている2人。ラグビーの魅力を再認識し、レフリーとはどうあるべきかを楽しく学べたトークライブだった。
◎プロフィール
Angus Gardner(アンガス・ガードナー)
1984年8月24日生まれの34歳。 オーストラリア・シドニー生まれ。 子供の頃からラグビーをしていたが、怪我のためにプレーヤー生活を断念。15歳からレフリーの道へ。2010年25歳の時にサニックスワールドユース大会にレフリーで来日。 2012年スーパーラグビーパネルレフェリー、2015年テストマッチデビュー、 同年ラグビーワールドカップイングランド大会にアシスタントレフリーに選出。208年ワールドラグビー・レフリー・オブ・ザ・イヤー受賞。
Ben O'Keeffe(ベン・オキーフ)
1989年1月3日生まれの30歳。 ニュージーランド・ウエリントン在住。 大型のCTBだったが、19歳の時にレフリーの道へ。2015年スーパーラグビーデビュー。2016年シックスネーションズのアシスタントレフリーデビュー。同年6月11日サモア対ジョージア戦でテストマッチデビュー、翌週日本で日本対スコットランド戦のレフリーを担当。
両名ともプロフェッショナルレフリーだが、ベンは眼科医の資格を持ち、ニュージーランドにいるときは週に2回はクリニックで診察もしているという。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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