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3月1日の夜は、神戸のスポーツバーSPORTEREA(スポルテリア)でのトークライブだった。ゲストは、神戸製鋼コベルコスティーラーズの有田隆平選手と山下楽平選手。トップリーグ優勝で関心度も高まっているのか、スポルテリアのラグビーイベント史上最多の応募があったという。残念ながらお断りしなくては行けなかった皆さん、申し訳ありません!
こういうトークライブは初めてだという有田選手と、スポルテリアだけでも3回目でトークがこなれてきた山下楽平選手。有田選手が早稲田大学のキャプテンとして活躍している頃、山下選手は京都産業大学の1年生。「スターでしたよ」と言いながら、いろんな角度から先輩をいじり、それに有田選手の救われたようで次第にリラックスして語るようになった。超満員の客席が何度も爆笑となるトークライブになった。
有田選手はコカ・コーラレッドスパークスで2011年から18年までプレー。腰の椎間板ヘルニアで一昨年は引退を考えていた。「去年のシーズン後、結構式で山中亮平(早稲田大学時代の同期)に会ったら、神戸製鋼に来ないか、と声をかけてくれました。最初は冗談だと思ったら本気でした。でも、僕は腰が日常生活も難しいくらいに悪くなっていて、手術が決まっていました。それでも来てくれということで、リクルーターの方が病院に見舞いに来てくれて」。そうして、神戸行きが決まる。大学卒業後の若い時には強豪チームからの誘いもあったが、すべて断った。コカ・コーラというチームが好きだったし辞める気はなかった。一方で、どこかに強いチームで戦いたい気持ちは残っていた。「このまま終わっていいのか、行け」と、多くの友人が背中を押してくれたという。
「でも手術の後、夏までリハビリだったので、みんなになんだコイツって思われているのでないかと肩身が狭かったです」(有田)。「陰で言ってましたよ~。リハビリしに来たんかって(笑)」(山下)。
チームの変化については、神戸製鋼の会社の歴史、ラグビー部の歴史を学び、なぜ戦うのか、なぜ勝たなくてはいけないのか、そうしたウィニングカルチャーが植え付けられたことが優勝の一因だと2人も感じている。しかし、お客さんが神戸製鋼の変化を感じたのは、コーチ陣の厳しい態度について話したところだろう。「練習の予習をしなくてはいけないんです。きょうの練習はこういうところが悪かったから、次の練習ではここを改善したい、とか。それを毎日ノートに書く。ときどきチェックがあって、書いてないと、めちゃくちゃ叱られる。一度書いていないことがあって、書いていないと言えなくて家に忘れたと答えたら取りに帰らされました(笑)」(山下)。「練習も1分でも遅刻したら練習に入れてもらえない。帰らされるのです。実際に帰らされた選手もいました」(有田)」。
プレースタイルはシンプル。FWが細かくボールをつなぎ、外側のスペースを作ってBKを走らせる。その精度が次第に高まってチーム力が上がった。しかし、2人が優勝を意識できるようになったのは、順位決定トーナメント1回戦のリコーブラックラムズ戦だという。「リコーもパナソニックに勝って勢いがあって緊張感がありました。あれ以降は負ける気がしなかったですね」(山下)。
ダン・カーター(DC)の凄さについて有田選手は「DCにパスをもらうと、タックラーと丁度よい距離間で、すぐにタックルされることもなく、プレーしやすいんです」と説明。山下選手は、「僕はWTBとかFBのプレーヤーなので、ディフェンスを見る余裕があり、どのあたりが空いているか、内側の選手から声を求められる。でも、DCに対しては声を出す必要がない。外の人間が感じることを、DCも分かっている。ここが空いているなって思ったときにはそこにキックを蹴ってくれたり、欲しい時にパスをくれたり。僕がやることは、そこにいる、ということだけです。グラウンドの中にいながら、上の方から俯瞰して見ている感じなんですよね」。
ちなみに、カーターは練習の予習も完璧。「きょうは、こんなスキルを獲得したいとか言っている」。まだ獲得したいスキルがあるんですね? 「僕から見たら完璧なんですけどね(笑)」(山下)。「あのDCがそこまでしているのに、僕は何もしていなかった。これはやらなあかんと思いますよね」
お客さんからの質問コーナーでは、最初、手が上がらなかったので、山下選手は何か有田選手に聞きたいことはありますか?と振ってみると、「えっと~、LINEライブの時に~」。質問、あるんかい!(笑)。「彼女募集していましたけど、あれはどうなりましたか」。「なんの反響もないよ」(有田)。すると客席から、「すぐにメッセージを送ったのですが」とのコメント。ん?「山中さんが、すべて(情報を)持って行ってるんじゃないですか?」(山下、笑)。
プロ選手の山下選手はオフの間もジムでトレーニング。有田選手はゆっくり休んだようで、トレーニングを開始したばかり。「完全に休養したら、5㎏太りました」。ちなみに有田選手は建築資材の営業職で、社員採用。「僕は正社員でやりたいんです。僕は怪我も多くて、いつどうなるか分からないので」と堅実派の一面も見せていた。じっくりと準備をして新シーズンへ。トップリーグ制覇の原動力となったダン・カーター他の外国人選手、日本代表選手がいない中で、どんな戦いを見せるのか、そのあたりも楽しみだ。
有田選手、山下選手、そして、スポルテリアのスタッフの皆さん、参加された皆さん、ありがとうございました。また僕の誕生日も祝っていただき、本当に嬉しかったです。重ねて感謝申し上げます。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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