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11月3日、東京都調布市の味の素スタジアムは、43,751人の観衆が集った。日本代表の勝利を信じた人も多かったはずだが、最終スコアは、69-31。何度もディフェンスラインを引き裂かれる完敗だった。
ニュージーランド代表オールブラックスは、テストマッチの経験の浅いメンバーが多かったとはいえ、スーパーラグビーで活躍する選手たちのスキル、スピードは世界トップレベル。日本代表の激しく前に出るディフェンスが機能しているうちは拮抗した展開になったが、スコアが開いた後半はオールブラックスが自在に走り始めてトライを重ねた。
日本代表も前半3分、LOアニセ・サムエラがFBジョーディー・バレットのタッチキックをチャージしてトライ。33分にも連続攻撃からNO8ツイ ヘンドリックがトライし、前半終了間際にもCTBラファエレ ティモシーがトライして前半を38-19で折り返した。後半の立ち上がりにも、さらに点差を詰めようと連続攻撃を仕掛けたが、チャンスでのラインアウトを2本連続で確保できず、そこからオールブラックスのバックスに走られ、交代出場のWTBジョージ・ブリッジにトライを奪われた。スコアは、45-19。その後も攻めてトライを追加した日本代表だったが、4トライを畳みかけられた。
良いアタックも多かっただけに、大量失点がもったいない敗戦だった。僕はJSPORTSで清宮克幸さんと解説していたのだが、清宮さんが「記憶に残るトライ」と言ったのが、後半30分のラファエレのトライだ。左タッチライン際で松田力也からパスを受けた福岡堅樹がタックラーを2人かわしながら前進し、内側にサポートした松田力也、ラファエレがつないだもの。福岡の活躍はこの日も出色だった。
ジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチは、「結果にはガッカリしていますが、オールブラックスから5トライを獲れたのは良い兆しではあると思います」とコメント。「世界選抜戦からスクラムを改善できたことは良かった。しかし、ティア1の国に勝つにはまだまだ強化が必要です。後半はキックを蹴りすぎていました。もっとボールをキープして攻めていれば展開は違っていたでしょう」。リーチ マイケルキャプテンは「練習を厳しくやっていたつもりでしたが、もっと厳しくやらないといけないと感じました。ソフトな失トライが多く、それをどうやって直すか、やっていきたい」と話した。
ボールが速いテンポで出せなかったことについて、リーチキャプテンは「タックルした後、ボールキャリアーを離さないオールブラックスのプランに対応できなかった」とコメントしたが、この点は、その後の会見でオールブラックスのスティーブ・ハンセンヘッドコーチも「ブレイクダウンは一つのテーマでした。クイックボールを出させないことがキーポイントだった。それができれば、後のプレーが楽になりますから」と話していた。
ジョセフヘッドコーチが、キックが多すぎたと話したのは、簡単にボールを相手に渡してしまうキックが多すぎたという意味だ。カウンターアタックが得意なオールブラックスにプレッシャーのないキックを蹴っては失点というパターンが続いた。スペースをうまく攻め落とすキックもあり、キックを使う判断の改善は引き続き必要になる。スクラムは安定していたが、ラインアウトは苦しんだ。上背がないのは分かっていること。ここを改善しないとイングランド代表との戦いはさらに苦しくなる。
リーチキャプテンの「イングランドとロシアに勝って帰って来たい」と力強く語った。その言葉を現実にするため、簡単に抜かれたディフェンス、何度もターンオーバーされたブレイクダウンの修正を急がなくてはいけない。
■試合結果
11月3日・東京・味の素スタジアム
日本代表●31-69◯ニュージーランド代表(前半19-38)
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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