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サンウルブズが、スーパーラグビー参戦3年目にして初のシーズン3勝目をあげた。シンガポールでの勝利も初めてのこと。ミスから失点する苦しい戦いの中での逆転勝利だった。キャプテンのヴィリー・ブリッツは、リードされても精神的に落ち込むことはなかったと話した。「ファンの皆さんに約束したからです。サンウルブズは、ネバーギブアップだと。それをいつも意識しています」。足を痛めつつ、激しいプレーを続け、チームを引っ張った。
今回はJSPORTSのレポーターとしてシンガポールに行っていた。巨大なナショナルスタジアムへは、中心部のシティーホールから電車に乗り、スタジアム近くの駅から20分ほどかけて歩いてみた。気温は30度くらいで蒸し暑く、汗だくになったが、もしかすると、いまの日本よりも過ごしやすいのかもしれないと感じた。スタジアムは密閉されてはいないが、ほとんどの客席、ピッチ全体が屋根に覆われており、空調もある。キックオフも午後7時55分だったので、今の秩父宮ラグビー場で試合するよりも選手は楽だっただろう。だから、気候によるアドバンテージはサンウルブズに薄いのではないかと思っていた。
しかし、気候とは関係なく、サンウルブズはキックを多用せずにボールを動かした。前半2分、CTBマイケル・リトルが抜け出し、最後はSOヘイデン・パーカーがトライ。18分には、ラインアウトからのサインプレーでSH内田啓介がトライ。14-0とリードする。しかし、22分、キックをチャージされ、27分にはクイックスローのミスからブルズのCTBジェシー・クリエルにトライを許す。14-14となり、せっかくのリードが消えてしまった。加えてブリッツがモールを止めるディフェンスの際の反則でシンビン(10分間の一時退場)になり、前半はもう1トライ追加されて、14-21で折り返す苦しい展開となる。
後半は点の取り合いになった。ブルズは、スクラム、モールで圧力をかけ、FW周辺のパワープレーを多用。対するサンウルブズはディフェンスで粘り、スピーディーにボールを動かした。何度リードを許しても、サンウルブズはあきらめなかった。28-34と6点差で迎えた後半25分には自陣でのディフェンスから切り返し、マイケル・リトルがゴール中央にトライをあげる。そして、いつも通り完璧なプレースキックを見せていたヘイデン・パーカーがゴールを決めて、35-34と逆転に成功。その後、1PGを決められて逆転されたが、35分、ラインアウトからの攻撃で交代出場のFLラーボニ・ウォーレンボスアヤコがトライし、42-37で再逆転。そのままのスコアで試合終了となった。
「このチームは歴史を作りました。カルチャーを築き、ゆっくりと前進してきました。ディフェンスもリーグ序盤はうまくいきませんでしたが、選手が自信を持つようになり、ボールを奪い返すことができるようになりました」。ブラウンHC代行は、チームの着実な歩みを喜んだ。報道陣から「ジェイミー・ジョセフHCもニュージーランドで喜んでいるでしょう」と問われると「ジェイミーのことは忘れていました(笑)」とジョークで返した。前半、クイックスローのミスから失点したことについては「ミスになってしまいましたが、ブルズに対してはクイックスローで攻めようと話していたから起きたことです。そういう姿勢が後半に生きたと思います」と説明した。「(交代出場の)田中史朗がモーメンタム(勢い、気運)を変えてくれました」。田中以外の交代選手も良い仕事をし、まさにチーム一丸となった勝利だった。
もう少し詳しいマッチレポートをサンウルブズの公式サイトに書くので、この日記ではこのあたりで。ブラウンHCは、オーストラリアでの残り2試合について問われると、こう答えた。「毎週、選手が上手くなって、勝つことが大切です。まずは、次週のワラターズ戦に向けてプランを作って戦うのみです」。
前日練習のとき、ブラウンHC代行は「サンウルブズは、スーパーラグビーのどのチームにも勝つ可能性のあるチームになってきている」と話した。結果はその言葉通り。日本代表選手の多くが参加しない中での勝利はチーム全体のレベルアップを示している。残り2試合は今回参加しなかった日本代表選手も合流する予定。メンバーが変わっても、質の高い試合をしてもらいたい。
■スーパーラグビー2018第17節
シンガポール・ナショナルスタジアム
6月30日、午後7時55分キックオフ
サンウルブズ◯42-37●ブルズ(前半14-21)
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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