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3月9日(金曜)の夜は高田馬場のノーサイドクラブでトークライブだった。ゲストは、リコーブラックラムズの武者大輔選手と中澤健宏選手。リコーは昨季、あと一歩でベスト4を逃したが着実に力をつけている。武者選手は「3年前に入替戦に行ったときがあって、あそこから選手の意識が変わったと思います」と話した。中澤選手はチーム加入2年目。「入る前のイメージですけど、都会にあるチームだし、遊びに行ったりすることが多いのではないかと心配していたのですが、そんなことはまったくなかったです」。
ずっと気になっていた武者選手の名前について。「父は、先祖が武士だったと思っていて、僕には剣道をやらせたかったようなのです」。たしかに、武者という強い剣士がいたらカッコいい。で、お父さんは何をしていたのですか? 「体操です」(客席、爆笑)。「僕は小学生のころは空手をしていて、同世代の大会で日本一になったこともあります」(客席、どよめく)。で、どうして空手を続けずにラグビーをしたのですか?「父が、よく考えろ、と。ラグビーなら、高校、大学、会社にも行けるぞ、と」。考え方がめちゃくちゃ堅実じゃないですか(笑)。でも、空手やっていたから、すごいタックルができるのかもしれないですね。「負けず嫌いには、なったと思います」。
仙台育英高校では、最初はWTB、FBだったが、丹野監督から「日本代表になりたいなら、FLをしたほうが良い」とポジションチェンジ。それがその後の成功につながった。いまでは誰もが認めるハードタックラーだが、大学時代、倒せなかった選手の名前を聞くと。「マイケル・リーチ(当時)。思い切り太ももに入ったのに、こっちの肩がしびれました」。リコーでは、元ヘッドコーチのダミアン・ヒルさんから、武者選手だけ低いタックル禁止令が出たこともあるという。それほど強烈だということだ。いまも目標は日本代表。「今年は自信があったのですが、選ばれなかったので、2019年に出るためにはこの秋が勝負かなと思っています」。ひたすらに上を目指す武者選手の今後に期待。
中澤選手は、埼玉の所沢北高校でラグビーを始めた。「ラグビー部の監督が熱心にさそってくださって。毎日のように教室に来て勧めてくださったのです」。言葉が丁寧すぎて、逆に、怖い(客席、笑)。こんな感じで、中澤選手はずっと丁寧に話し続け、最後は丁寧に話すだけでお客さんが大笑いするほどに。
立教大学卒業後、みずほ銀行に就職したのはなぜですか。「いくつかラグビー部のある企業から誘っていただいたのですが、ラグビーを辞めた後、会社の仕事をしたとき、同期の社員と差が出てしまうのが嫌で最初からしっかり働こうと」。でも結局、転職することになりましたね。「2015年のワールドカップでの日本代表対南アフリカ代表戦をテレビで見ていました。感動して、次のワールドカップには僕と同世代の選手たちが日本代表になって出場するのかと思って」。いてもたってもいられなくなったのですね。「はい、それで上司に気持ちを話し、有給休暇を使って、転職先を探したいと言いました。理解のある人でそれを許してくださいました」。リコーでも正社員なのですね。「はい。リコーはコピー機などを扱う会社なのですが」。知ってるわ!(笑)。「そこで営業をしています。僕が営業をしているのは、みずほ銀行なので、何が必要かよく分かるんです」(客席、笑)。
熱い気持ちで第一線のラグビーに戻ってきたのに、引退後もまじめに会社で働こうとしている中澤選手は、生真面目な堅実派。「最初はプロ契約しか難しいということだったのですが、社員にしてくださったので、しっかり勤めさせていただこうと思います」。
なんか、面白い。こうして書いていても笑ってしまう。中澤選手、今後も注目である。ところで、その堀の深い顔立ちについて。「両親も、姉も薄い顔でして、突然変異なんです」(笑)。
武者選手は宮城県出身。東日本大震災について聞いてみると。「あのとき、僕は大学生で仙台駅にいました。新幹線で東京に戻るところでした。そこで強い揺れがあって、とりあえず、一緒にいた今の妻と近くの避難所で一夜を明かし、翌日、自宅まで30キロの距離を自転車で帰りました。奇跡的に家族は無事でした。ラグビーどころではなくて、被災した親戚の家の掃除をしたりして1カ月ほどたった頃、みんなが、お前、ラグビーしなきゃ、ラグビー頑張ってこい、と背中を押してくれて」。この時のことが、いま、ラグビーに必死に取り組む原動力になっているという。
とても充実したトークライブだった。武者選手、中澤選手、参加者の皆さん、ありがとうございました。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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