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7月26日、神戸のトークライブから京都への帰り道は、JR京都線が止まって3時間くらいかかった。滋賀県の野洲まで電車が動かず、JRの職員が京都駅のタクシー乗り場で声をからしていた。電車代わりの代行タクシーの行列を初めて見た。なんとか自宅にたどり着き、翌朝は東京へ。7月27日の夜は、高田馬場のノーサイドクラブで「ノーサイドライブ vol.37」の進行役をした。

今回は、タレントの山田雅人さんの新作「帝京大学ラグビー部物語、八連覇編」を「かたりの世界」で堪能。それを肴に帝京大学の岩出雅之監督とトークを繰り広げる趣向だった。山田さんの「かたり」を、目を閉じて聞いていると、昨季の大学選手権決勝の東海大学戦の接戦が鮮やかに蘇った。先制トライをされたとき、岩出監督はスタンドで笑っていた。それを見た選手達が安心感をおぼえる。白熱の試合実況のあとは、岩出監督のラグビー人生へ。岩出さんが高校時代に腰に大きな怪我で負い、ラグビーから離れたとき、教育実習生が投げかけてくれた言葉で再びラグビーに没頭していく。そして、教育者を目指す。大人が子供にかける言葉の大切さが身に染みた。
岩出監督といえば、多くの人が勝負の世界で生きる厳しい表情しか見たことがないはず。しかし、この夜の岩出監督は、僕と山田さんにいじられながら、爆笑を誘う軽妙なトークで、多くのお客さんのイメージを覆したと思う。大半の話は、自ら考え行動できる人を育てる環境づくりのことだった。グラウンドの練習だけではチームは強くならない。上級生が率先して雑用をこなすことで下級生がそれを手伝う。そんな環境を長年かけて作ってきたノウハウ、学生の心をつかむ術は説得力があった。中学の教師をしていたときは野球部の監督、高校ではラグビー部の監督。「監督をしてきた経験が今に生きています。監督はすべての責任を負いますから」。
帝京大学ラグビー部と言えば、毎年、キャプテンが話す言葉の立派さが話題になる。これも教育があってこそ。岩出監督の言葉が印象に残った。「すごく立派で良いことを言う選手がいます。でも、それを相手に言わせるようになろう、と話しています」。強い組織を作るコツのような気がした。「初優勝の頃の自分は未熟でした。あの頃の選手に申し訳ない」。そういう思いをしないように勉強していくことが今のモチベーションだという。
楽しいトークの最後は、山田雅人さん十八番の即興の「競馬実況」。トウカイテイオー、オグリキャップなど名馬から、馬の名前はワイドショーを騒がせる人々、そして僕やノーサイドクラブ、最後に「イワデマサユキ」へ。その名調子を聞けて幸せだった。僕ら世代で関西育ちの人なら、山田雅人さんが関西のテレビに出まくっていた頃を知っているだろう。「かたり」で新境地を開いて10年。今回の帝京大学ラグビー部物語も含めて、「かたり」の作品は100本以上になるという。すべて頭に入っていて、DVD化などはしていない。生で聞くしかない「かたり」。いろんな場所でライブがあるので、ご興味のある方はぜひ。岩出監督、山田さん、参加者の皆さん、ありがとうございました。

村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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