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10月3日、日本代表がサモア代表を破り、ラグビーワールドカップ(RWC)に参加して8大会目で初の2勝をあげた。しかも、26-5という快勝だった。4トライを奪うボーナス点は獲得できなかったが、走らせると怖いサモアの選手を粘り強いディフェンスで封じ込め、スクラムを押し込んで反則を誘うなど堂々たる勝利。現地では、圧倒的にサモア有利の下馬評だったが、南アフリカ戦勝利に続いて世界を驚かせたことになる。
日本代表は前半5分にFB五郎丸のPGで先制すると、ボールをキープしながら攻め続け、サモアにチャンスボールを与えなかった。21分には、スクラムを押し込んでペナルティートライ(※反則がなければトライになったとレフリーが認めた場合に与えられる)で10-0とし、攻められても相手一人に対して2人でタックルし、反則にならないようにすぐに起きあがって次に備える運動量豊富なディフェンスを続けた。五郎丸がPGを追加した後、前半終了間際には同じ方向に何度も攻撃を継続し、最後はWTB山田章仁がタックルを半転しながらかわして、右コーナーに飛び込む技ありのトライ。角度の難しいゴールを五郎丸が決めて20-0とした。後半は2PGを追加。終盤は4トライを狙って攻めたが取りきれずに1トライを許し、最終的には26-5で勝った。
JSPORTSで清宮克幸さんと一緒に解説したのだが、見ていて不思議な気分になった。世界の大舞台で完全にゲームをコントロールして堂々たる戦いぶりをする日本代表。かつてなかった安定感ある試合運びに感銘を受けた。清宮さんも「みんなが献身的に体を張っていた。こういうのが見たかった」と感動した様子。エディー・ジョーンズヘッドコーチの作り上げたスタイルは、粘り強くボールをキープするラグビーで、次々にトライを奪うようなスタイルではない。しかし、だからこそ攻撃力あるサモアを封じ込めたとも言える。ハードワークで体に染み込ませたプレーが苦しい時間帯でもよく出ていた。ただ、ときおり試合が途切れた時の選手の表情からは相当な疲労を感じた。全身全霊で戦い、最後まで集中力を保ったのは立派だった。
山田章仁が負傷退場したほか、多くの選手が満身創痍の状態だが、プールマッチはもう一試合(対アメリカ代表)ある。勝ち点計算上は決勝トーナメント進出が厳しいが、RWCでは過去2敗を喫しているアメリカを下し、まずはプール3位以上を確保してもらいたい。あとは他チームの戦績次第。しかし、サモア戦勝利で日本代表が決勝トーナメントに進出するにふさわしいチームだと証明したのは確かだ。
「一週間準備してきたことを、グラウンドで表現できました」と五郎丸。スタジオの清宮さんから声をかけられると、「RWCを楽しめています」と笑顔で語った。プレーメイカーとしてチームを前に出したSO小野晃征は、「トゥシ・ピシがすぐに寄ってきてくれて、おめでとう、と言ってくれたのはありがたかったです」と、サントリーのチームメイトとのノーサイドの風景を教えてくれた。80分、走り続けたリーチ マイケルキャプテンは「ずっとプレッシャーをかけられたのが勝因です。最後の5分は両足がつってしまいましたが、みんなが頑張ってくれた」と仲間に感謝した。
■エディー・ジョーンズヘッドコーチ
「これまでラグビーワールドカップで1勝しかできていなかったチームが本大会で2勝し、日本ラグビーの歴史を変えることができた。今日は特にFWがセットピースを圧倒し、素晴らしかった。あと2トライでボーナスポイント獲得というところだったが、次のアメリカ代表戦が重要。その試合で日本が素晴らしいラグビーをしていることを証明できる」
■堀江翔太選手
「試合は想定通りだった。スクラムだけ予測できていなかったが、最初の1、2本目で組んでみていい感触だったので、どこで勝負をかけるかという状況だった。シンビンで相手が少なくなって、勝負所がここだと仕掛けた結果が認定トライにつながった」
■ホラニ龍コリニアシ選手
「この歴史に残るメンバーの一員になれたことが嬉しい。練習で準備していたとおり、相手のキーマンをしっかり押さえることができた。やはり試合は見ているよりグラウンドでプレーするのがいい」
■山田章仁選手
「(トライの場面で)ボールを置く時はスローモーションのように感じた。トライまで持っていけてよかった。チャンスが来そうな気がしていたので、しっかりコミュニケーションをとってプレーしていた」
■試合結果
10月3日(土)14:30キックオフ(現地時間)
イングランド・スタジアムMK
サモア代表● 5-26○ 日本代表(前半0-20)
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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