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4月7日は、埼玉県の熊谷ラグビー場に行っていた。第16回全国高等学校選抜ラグビー大会決勝戦の取材だった。3月30日に開幕した同大会で決勝に勝ち残ったのは、大阪の東海大仰星と大阪桐蔭。あいにくの雨となったが、正午のキックオフから両チームが激しい気迫でぶつかりあった。
前半7分、仰星はモールで攻め込み、最後は密集サイドをSH西久保がついて先制トライ。SO岸岡が難しいゴールを決めて、7-0とする。20分、大阪桐蔭はようやく仰星陣22mライン内に攻め込んだが、左中間のスクラムからの右オープン攻撃で、パスをインターセプトされてしまう。パスをキャッチした仰星WTB滝本は約60mを駆け抜け、サポートの選手につないで、最後はWTB中がトライし、14-0と突き放す。勝敗の分岐点ともいえるシーンだった。
後半10分、大阪桐蔭はFWの波状攻撃で仰星ゴールに迫ったが、仰星は粘り強いディフェンスで約3分にわたる猛攻をしのぎ、トライを許さなかった。28分、仰星がトライを追加し、21-0で完封勝ち。第7回大会以来、選抜では2度目の優勝を飾った。

「よくディフェンスしました。しつこさ、意地、たんぱくにならずにプレーしてくれました。一年生の頃から、大阪桐蔭や常翔学園など戦力が充実しているチームに対して、自分達はほんとうにできるのかと、自信のない学年でした。それが今年の近畿大会あたりから、やろうとしていることがピタっとはまる感覚を覚えて自信をつけた。(大阪の上位校の中では)小さな選手が勝ってくれたのは嬉しいです」。湯浅大智監督は、心から嬉しそうな表情を浮かべていた。湯浅監督の言葉通り、仰星は強豪校の中ではサイズは小さい。「しつこさを磨いていきたい。それしかありませんから」と、冬を見据えた。
実は大阪桐蔭もそう大きくはない。今大会を最初から見ている取材者、関係者の話を総合しても、今年の高校ラグビーは本命不在の混戦模様だ。大阪桐蔭・綾部監督は「正直、疲れがありました。身体が動いていなかったです」と、ふともらした。仰星ももちろん疲れているのだが、大阪桐蔭は予選リーグでは石見智翠館、國學院久我山、長崎北陽台と戦い、決勝トーナメントでも東福岡、流経大柏という強豪との激闘を勝ち抜いてきた。準優勝に終わったが、立派な戦いだったといえるだろう。
どうやら、今年の高校ラグビーは昨季の東福岡のような存在はいない。各チームがこれからどこまで成長するか、その競争が始まったわけだ。
■決勝戦結果
東海大仰星○21-0●大阪桐蔭(前半14-0)
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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