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水曜日の夜は、大阪・北浜のラグビー促進居酒屋「ラグビー部マーラー」でのトークライブだった。ゲストは、昨季の高校王者・東海大仰星の湯浅大智監督だった。湯浅監督は、チームのキャプテン、コーチ、監督という3つの立場で高校日本一を経験している。大阪市東住吉区の出身で、中野中学でラグビーを始めた頃から、日本一を3度経験するまでの話をいろいろ伺った。

中学時代は、選抜チームで廣瀬俊朗選手(現・東芝)とともにプレーしたことがあり、当時から廣瀬選手の頭の良さは際立っていたという。「大学4年生の時、廣瀬に就職はどうするの?と聞いたら、大学院に行こうと思う、とか言うんですよ。お前、そんなところ行ったら頭悪くなるぞ、社会人でプレーしたほうがいいって言いました。勉強はラグビーを辞めたあとでもできるからって。今の彼があるのは、僕が言ったからかも(笑)」。
キャプテンとして優勝した1999年度の全国高校大会では、決勝戦で勝った後、中学時代の友達が肩を組んでガッツポーズしているところをスタンドに見つけた。「これまで友達ではなかった人同士も結びつける。そういう力があるのだと感じました。ただ、自分たちの力を証明するために日本一になるためにプレーするのではなく、こういうことのために優勝するんだ、と。そして、この景色を見れば、これからの人生でも、もっと人と人のつながりを大切にしようって思える。僕はそう感じました」。こうした考えは今も生徒たちに伝え続けている。
高校時代は、1年生では大阪府予選で大阪工大高(常翔学園)に敗れて花園には行けず、2年生では大阪代表になったものの、啓光学園と大阪工大高の伝説的名勝負となった決勝戦を見ながら悔しい想いをした。そして、3年生で日本一になる。「2年生の決勝戦はスタンドのど真ん中で見ました。土井監督に、来年はここで表彰されることをイメージしよう、と言われて。でも、試合内容が凄すぎて言葉が出ませんでした。帰りの近鉄電車で、ラグビーファンのおじさん達が僕らの近くで話していました。『大阪って、もう一つどこが代表やったかな』。屈辱でした」
翌シーズン、湯浅はフランカーとしてキャプテンを務め、チームを日本一に導く。そして、スタンドを見たわけだ。その景色も、3度見た。「少しずつ、スタンドで仰星の色が濃くなっている気がします」。それは仰星を応援する選手、OB、家族などの輪が着実に広がっていることを実感したということなのだろう。
最後は質問コーナー、そしてプレゼントタイムとなったのだが、どんな質問にも丁寧に答える湯浅監督に、参加者のみなさんも感心しきりだった。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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