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ラグビー コラム 2014年3月9日

日本選手権・決勝結果

ラグビー愛好日記 by 村上 晃一
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現在の国立競技場で行われる最後のラグビー日本選手権を制したのは、パナソニックワイルドナイツだった。気温15度、湿度30%、絶好のグラウンドコンディション。観客は、19,571人。好ゲームの期待感とともに、試合は、トップリーグのMVP、パナソニックSOベリック・バーンズのキックオフで始まった。

前半4分、バーンズの先制PGで3-0としたパナソニックだが、東芝FLベイツがチームの反則の繰り返しでシンビンになっていた時間帯もスコア出来ず、攻めあぐむ。一対一で確実に前に出て、粘り強くディフェンスしていた東芝は、19分、相手陣で得たスクラムから縦に連続ゲインし、パナソニックのディフェンスが慌てて上がってきたところの裏をつき、WTB大島がトライして逆転(3-7)する。しかし、パナソニックもLOヒーナンの縦突進でできたラックから、田中、バーンズとつないで最後はWTB山田がタッチライン際を駆け抜けて10-7とひっくり返す。それもつかの間、今度は、東芝NO8望月がタックラーをハンドオフでかわしながらインゴールを駆け込み、10-14と再逆転。拮抗した点取り合戦となる。

ハーフタイム。パナソニックのゲームキャプテン北川は、「なんぼ頑張っても肺が破裂するわけじゃない。やり切ろう」とチームメイトにはっぱをかけた。それでもパナソニックにとって苦しい時間が続いた。前半が終わった時点でパナソニックのパス回数は98(JSPORTS調べ)。これはパナソニックがトップリーグで記録した一試合当たりの平均パス回数の128回に迫るものだ。つまり、パスをくり返しながら、攻めきれない展開だったということになる。

後半も一進一退の攻防が続いたが、6分、SOバーンズがゴールライン直前まで自ら突破し、タックル受けながらCTB林にパスをつないだトライで20-14とすると、21分、交代出場のJPピーターセンが左コーナーにトライをあげる。これもバーンズの判断が光った。ゴールラインまで攻め込んだチャンスに、東芝にターンオーバーされそうになったボールを再び取り返した瞬間、バーンズが防御背後に正確なキックをしたのだ。視野の広さとスキルの確かさを見せつけるものだった。

しかし、東芝も負けてはいない。直後のキックオフで東芝の途中出場のクーパ・ブーナが、パナソニックのホラニ龍コリニアシと競り合ってミスを誘い、大野、ブーナが縦突進、最後はリーチマイケルが、山本のサポートを受けつつタックルをふりほどいて一気にインゴールになだれ込んだ。スコアは27-21の6点差。残り時間10分の勝負。観客席も俄然盛り上がったが、34分にバーンズが45m以上のPGを決めて勝利を確かなものにした。

今季四度目の対戦となった両チームだが、パナソニックの北川智規は「一番タフで、一番疲れたし、一番身体が痛いです」と率直に表現した。「東芝には、泥臭く、前に出ようという気迫を感じました。堀江キャプテンがいない中で勝てて、嬉しいというより、ほっとしています」。大活躍のバーンズについては、「夏合宿で初めて合流した時、いきなり名前を呼ばれてびっくりしました。みんなの名前や、サインプレーを覚えてきてくれて、チームに溶け込もうとしていた。オーストラリア代表やったのに、練習も一番最後までやるし、尊敬しています」と、彼がチームに好影響をもたらしたことを説明した。

中嶋則文監督は、「これからは追われる立場になります。トップリーグの各チームが取り組んでいるストレングスとフィットネスは、もっと強化したい。強みを伸ばし、弱みを消すよう常に進化しなければいけないと思っています」と来季への意気込みを語った。

敗れた東芝の和田賢一監督は、「非常に悔しい。私の力不足。しかし、選手はよくやってくれました、チャンピオンになれなかったという事実を来季につなげたい」とコメント。リーチマイケルキャプテンは「ミスでリズムに乗れなかった。2位に終わったけど、来季こそチャンピオンになりたいです。そして、パナソニックの二冠、おめでとうございます!」と相手を称えることも忘れなかった。

■第51回日本ラグビーフットボール選手権・決勝結果
東芝ブレイブルーパス●21-30○パナソニック ワイルドナイツ(前半14-10)

村上晃一

村上 晃一

ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。

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