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6月5日は瑞穂公園ラグビー場にいた。パシフィックネーションズカップ(PNC)の開幕である。第1試合のサモア代表対トンガ代表は、午後5時過ぎから行われ、激しいコンタクトプレーの応酬の末、サモアが、20-18で競り勝った。今大会は、どのチームもワールドカップの翌年でヘッドコーチも変わり、チームを作りなおしている。サモアもキャップ数が少ない選手が多く、この日のメンバー編成では劣勢が予想されたのだが、粘り強くディフェンスし、キックチャージなどからトライをあげて勝利をものにした。ただし、体格的にはトンガのほうが大きく、経験豊富な選手も揃っており、6月10日の日本戦には気合を入れなおして臨んでくるだろう。日本にとって手強い相手となりそうだ。
第2試合の日本代表対フィジー代表戦は、午後7時10分のキックオフ。日本の現在地を知るうえで貴重な機会となったが、やはり、立ち上がりは日本代表選手の突進に対してフィジーのコンタクトが上回り、ボールを抱え込まれてターンオーバーをされるなど、攻撃を寸断されるシーンが相次いだ。それでも、日本代表は粘り強く攻めた。その姿勢に観客席も熱くなる。フィジーの反則を誘っては、FB五郎丸歩がPGを決め、19分の約50mの距離あるPGが成功した時の観客の盛り上がりは感動的ですらあった。
その後は、日本が仕掛けているはずのボールをターンオーバーされて、一気に走りきられるトライを連続で奪われ、9-14と逆転される。前半終了間際に日本に絶好のチャンスが訪れたのだが、ここは最後のラックでノックオンがあってトライが獲りきれなかった。
後半に入ると、日本代表はなんとかボールをキープし、五郎丸のPGで追撃。しかし、19分、フィジーWTBヴォトゥにハイパントキャッチから走られ、最後はCTBゴネヴァにトライを奪われる。結局、これが決勝トライになった。日本も22分、ドライビングモールからペナルティトライを奪って6点差とし、最後まで逆転可能な点差で踏ん張ったが届かなかった。
「みなさんの期待に応えたかったので残念です。でも、下を向いてしまう内容ではない。発展途上のチームだし、まだまだ強くなれる。いい勉強になりました」と廣瀬キャプテン。エディー・ジョーンズヘッドコーチも「結果は残念だが、パフォーマンスに手ごたえはある。きょうの一番の問題点はディシジョンメイキング」と話し、例を挙げながら判断ミスによってチャンスを失い、ブレイクダウンで劣勢になっていると説明した。また、ボディポジションも修正点とし、「高い姿勢に慣れている選手が多く、練習では低くなれても、試合では元の姿勢に戻ってしまう。そこはいま変えている最中。レッスンから学ぶしかない」と説明。「相手の弱みをついてアタックできなかったこと」も大きな問題点とした。ただ、「後半はシンプルなことができるようになった。学びきる前に相手にトライをとられてしまったということ」と、後半徐々に良くなった選手達の修正能力には可能性を感じているようだった。
バイスキャプテンの佐々木隆道は悔しさをにじませながら、「立ち上がりにアジアでの試合と同じようなプレーをしてしまって、ボールをホールドされた。日本は体が小さいのだから、テクニックを使ってボールを出さないといけないのに。でも、自分たちがテンポをコントロールして、考えながら動けていたとは思う。勝てなくて残念」と話した。
まだチームとして、実質の練習は6週間。そう簡単に結果は出ない。スクラム、ラインアウトは安定していたのだが、後半半ばにフロントローのメンバーを入れ替えたあとの大事なスクラムで大きく押し込まれた。そのあと、修正できただけに、あの一本は痛かった。ただし、何度も弾き飛ばされながらも冷静に考えてボールを運び、最後まであきらめずにタックルし続ける姿勢が、この日本代表にはある。次のトンガ代表はさらにサイズも大きく、パワフルだが、一戦ごとの進歩を見せてほしいと願う。
また、日本代表戦のハーフタイムには、元日本代表WTB坂田好弘氏のIRB殿堂(IRB Hall of Fame)入りの特別表彰式が行われた。日本人として初ということだけでなく、世界でも51人目の快挙で、日本ラグビー史の伝説だった坂田好弘のエピソードが、世界中のラグビー関係者が知る伝説となったということになる。1968年の日本代表ニュージーランド遠征での12トライ。1969年ニュージーランド武者修行時代のカンタベリー代表選出など、功績は数えきれないので、次の日記で詳しく触れたいと思う。
■試合結果
サモア代表○20-18●トンガ代表(前半6-9)
フィジー代表○25-19●日本代表(前半14-9)
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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