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土曜日は近鉄花園ラグビー場にいた。日本選手権1回戦をJSPORTSで解説するためだ。僕が担当したのは第1試合の天理大学対キヤノンイーグルス戦だった。天理はSO立川のPGで6-0と先行したが、キヤノンはSO橋野のキックパスを南アフリカ代表のLOアルベルト・ヴァンデンベルグがキャッチしてトライし、CTB三友のPGで逆転すると、前半終了間際にもSO橋野がスピーディーな走りでタックラーをかわし、前半を15-6とリードして折り返した。後半は天理もボールを動かしたが、ハンドリングエラーが多く、スクラム、ラインアウトでも圧力を受け、次第に点差が開いた。
来季からトップリーグ昇格を決めているキヤノンに、天理がどこまで迫れるか、楽しみにしていたのだが、今季はワールドカップの影響でシーズンが長引いたこともあって、大学選手権決勝から約1カ月半の間隔があり、やはりその頃と同じような精度でパスをつなぐのは難しかった。加えてキヤノンの個々のコンタクトプレーの強さが大学チームとは比較にならない。ディフェンスに人数を割きすぎて、ボールを奪ってもすぐに攻撃に切り替えられないシーンが多かった。それでも、攻守に社会人に引けを取らないプレーを見せる場面もあった。後半34分、ラインアウトのサインプレーから、SO立川がタックラーの背中越しのパスで生み出したFB塚本のトライは見事。今季の大学ラグビーを席巻した天理らしさの片鱗を見せた。
立川キャプテンは、攻守に身体をはってチームを引っ張ったが、「社会人一人一人の強さもあって、ボールを動かせませんでした。本当はボールを動かしながらトライを獲りたかったのですが」と残念そうな表情だった。
キヤノンもトップチャレンジの九州電力戦での大敗もあり、いい試合を見せようと気負ったところがあったのかもしれない。ミスも多く、攻撃がつながらなかった。永友洋司ヘッドコーチも「私は天理のラグビーをリスペクトしていますが、きょうのウチ(キヤノン)のパフォーマンスにはがっかりするところが多かったです。こんなことでは、2回戦はとても戦えない」と厳しいコメントだった。
第2試合は、NECグリーンロケッツ対神戸製鋼コベルコスティーラーズという注目の一戦。序盤から拮抗した展開になったが、8分、NECがモールサイドをFLラトゥ、SH櫻井でついてトライ。7-3とリード。前半なかばからはNECペースとなり、CTBツイタヴァキのトライと、SO田村のPGで突き放した。
後半の立ち上がりは、神戸製鋼が攻め込む。3分、HO木津がゴールラインに手を伸ばしたプレーはノックオン。その後、モールで攻め込むもターンオーバーされるなど、NECのFWを崩し切れなかった。7分、NECのNO8土佐がハイタックルでシンビン(10分間の一時退場)になると、さらにゴール前のラインアウトからモールでトライを狙ったが、押し切れず、BKに展開してもミスと、獲りきれない時間が続いた。13分、NECはモールを崩したとしてLO村田もシンビンになって13人に。そして、17分、6人になったNECのスクラムを神戸製鋼が押し込むと、NECがたまらずコラプシング。神戸製鋼にペナルティトライが与えられる。しかも、PR猪瀬がシンビンとなり、12人に。すぐに土佐が戻ったが、またNECは13人で戦うことになった。
しかし、NECはこの苦しい時間帯をしのいだ。27分からは15人対15人の戦いになる。スコアは、17-10であと13分。攻める神戸、粘るNEC。34分、ようやくNECが攻め込むも、今度は神戸が粘る。そしてついにホーンが鳴った。「NECの自信を取り戻せたゲーム」と、岡村要ヘッドコーチ。シンビンを出したことについては、「神戸製鋼やファンの皆さんにお詫びしたい」としたが、ディフェンスの粘りを評価した。
敗れた神戸製鋼の伊藤鐘史ゲームキャプテンは、「ラインアウトをNECに分析され、プレッシャーを感じました。後半はいいファイトができたが、もっと早く攻めに転じたかった。NECのディフェンスの上りが早くて、焦ってしまったところもある」と振り返っていた。報道陣からは来季についての質問も出たが、苑田ヘッドコーチは、「この戦績は私の力不足。ただ、まだやりたいことはたくさんある。日本一を狙える土台はできたと思っている」と語り、自身の進退については明言しなかった。
■日本選手権1回戦結果
帝京大学○83-12●六甲ファンティングブル(前半54-7)
天理大学●13-37○キヤノンイーグルス(前半6-15)
NECグリーンロケッツ○17-10●神戸製鋼コベルコスティーラーズ(前半17-3)
東芝ブレイブルーパス○56-15●ヤマハ発動機ジュビロ(前半21-3)
※この結果、2回戦の組み合わせは次のようになった。
3月4日 熊谷ラグビー場
12:00 NECグリーンロケッツ対キヤノンイーグルス
14:00 帝京大学対東芝ブレイブルーパス
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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