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1月1日の夜、東京に出てきて、2日は国立競技場に向かった。一昨年までは、東京に帰ってきた、と表現していたのだけど、今や上京である。大学選手権準決勝2試合が行われた国立競技場には強風が吹き荒れていた。観客は、2試合目時点で1万6377人。第1試合は、2回戦で早稲田を破った関東学院と、2回戦で慶應義塾を破った天理の戦いだった。FW戦では関東が有利、スクラムと得意のモールで圧力をかければ関東の流れになるかと思われたのが、風下の天理は、前半開始早々からSO立川の軸にラインブレイクを連発し、圧倒的な攻撃力で次々にトライを重ねた。

前半5分、SO立川の突破からつないで最後はWTB宮前が先制トライ。15分には、ゴール前のラックからSH井上が持ち出したところにLO上田が走り込んで2つ目のトライ。関東学院も22分、モールを押し込み、最後はラックサイドをLO後藤が持ち出してトライを返したが、その後も天理のスピーディーな攻撃が関東学院ディフェンスを翻弄し、前半だけで5トライをあげた。ただし、強風下だったこともあってトライ後のコンバージョンキックが入らず、27-7とスコアが伸びなかったのは気になるところだった。
後半に入ると、関東学院が密集サイドとタッチラインの間の狭いスペースを執ように攻め、大きくゲインすると、LO後藤、NO8安井が立て続けのトライし、27-17に迫る。さすがに試合巧者の関東学院である。このまま拮抗した展開になるかと思われたのだが、12分、またも立川のロングパスからチャンスが生まれ、WTB木村が俊足を飛ばして左コーナーへダイブ。残り時間にもう2トライを追加して天理が快勝した。それにしても、最近の大学チームでこれだけ綺麗にトライをとるチームはなかった。「両CTBにプレッシャーが行っていたので、僕の前が空きました」と立川は謙遜したが、タックラーを翻弄するステップワーク、ハンドオフ、素早く長いパス、そして正確なキックパスは見事。プレースキックは不調だったが、高速BKラインを見事に操った。
「素直に嬉しいです」と天理の小松節夫監督。「トスに負けて、向こうがボールを取ったので、こちらは風下を選びました。風下で前半は我慢しようと思ったら、意外にボールが動きましたね。FWがよく頑張ってボールを出してくれました」。選手をたたえて笑顔だった。天理は初の大学選手権出場だが、小松監督は、同志社大学時代に決勝戦で早稲田と戦ったことがあり(1987年度)、その経験は大きいだろう。
第2試合は、帝京対筑波の対戦だった。この試合は、第1試合から一転して、FWの密集周辺にボールが集中した。彦坂、竹中という俊足WTBを擁する筑波に対して、帝京はFWで圧倒する戦い方に徹した。強力なスクラムで圧力をかけ、12分、この日大活躍だったHO白の前進でできたラックサイドをLOボンドがついて先制トライ。17分に筑波が帝京ゴールライン直前まで攻め込んだが、HO白がターンオーバーに成功し、27分には、筑波ボールのスクラムを押し込み、ボールコントロールを乱してボールを奪い、最後は、白がポスト下にトライをあげた。
筑波も反撃を試みるのだが、自陣でダイレクトタッチなどミスを犯し、攻撃しやすいボールをなかなか獲得できなかった。何度かWTB彦坂が抜けそうになったのだが、帝京のLOボンドが事前にスペースを消すなど、帝京のディフェンス意識は高かった。後半は、筑波が「ボールを動かしていきます」(古川監督)と、果敢に攻撃を試み、1年生SO松下がPGを決め、3-17とし、なおも攻めたが、11分、帝京はSH滑川がインターセプトから約50mを走りきった。筑波の反撃ムードを断ち切る値千金のトライだった。
「きょうはFWで圧倒しようと話していました。全員が、しぶといプレー、痛いプレーをしてくれた。試合のテーマは【一つ】でした。一つ一つのプレーをしっかりやる。一つに全精力を出し切ろうということです。決勝に向けては、もう一度強みを整理して臨みたい」と岩出監督。試合前、「きょうは最初からがんがん行きますよ」と話していた岩出監督だが、筑波の個々の強さもあって、圧倒するところ前はいかなかった。しかし、ボールキープ力は確かで危なげはなかった。これで、帝京は4年連続の決勝戦進出である。大学選手権史上2チーム目の三連覇に王手をかけたわけだが、このFWの強さがある限り、決勝戦(対天理)も優位に戦えそうだ。
天理の攻撃力が果たしてどこまで通じるか。というより、攻めるボールがどれだけ確保できるかが決勝戦のポイントだろう。天理のフラット(横)なパスで防御を崩すスタイルは、就任19年目の小松監督が、少しずつ積み上げてきたものだ。有望選手の獲得がままならず、体格も小さい天理は、運動量豊富に動き回って、リアクションスピードを上げることでしか勝つことができなかった。だから、FW戦が劣勢でも、確保できるボールが少なくても攻めきるスタイルを磨いてきた。そうやってAリーグに復帰し、機が熟したところで、立川、ハベア、バイフという大学ラグビー界屈指のタレントを得た。ベースがしっかりしているからこそ、この3人も輝くのである。今も、ほとんどの選手が高校時代は無名。きょう出ていたFL唄(ばい)圭太は、167㎝、62㎏。高校大会でも見られないような小さなFLだ。決勝進出は立派。このチームが帝京にどこまで戦えるのか興味深い。
■第48回全国大学選手権大会準決勝・結果
関東学院大学●17-42○天理大学(前半7-27)
帝京大学○29-3●筑波大学(前半14-0)
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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