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28日の近鉄花園ラグビー場は快晴だった。1回戦2日目。僕はJSPORTSで尾道対春日丘の解説をした。昨年の1回戦で12-12の引き分け。抽選により、尾道が2回戦に進出した因縁の試合だった。春日丘(はるひがおか)は花園で勝ちきるために攻撃を磨き、尾道はいつもの通り、まっすぐに粘り強くボールをつなぐチームとして花園にやってきた。
立ち上がりは、春日丘がブレイクダウンでもよく前に出て、SH藤河らのトライで12点を先行したのだが、自陣でのミスもあってピンチを招き、尾道がモールを軸に攻め込み、28分には途中出場のFL盛田のトライで14-12と逆転する。後半に入ると、春日丘がラインアウトでミスを連発するなど苦しめながらも、NO8姫野のトライで19-14とひっくり返す。しかし、尾道もFB久内がトライを返し、19-19の同点となる。
30分過ぎからは、互いに勝ちたい気持ちで攻め合い、春日丘が2度PGチャンスを得る。10メールラインとハーフウェイラインの間くらいだったので、攻めてもいいと思ったが、やはり距離が届かず、尾道が2度ともカウンターアタックに出た。互いにペナルティで試合が途切れるため、インジュリータイムは9分ほどもあった。最終的には引き分け。昨季と同じく抽選で2回戦への出場権を決めることになった。なんという結末だろう。
結果は春日丘が2回戦に進出することになったのだが、その後の両キャプテンの態度が立派だった。尾道の宮田遼キャプテンは、報道陣に囲まれても涙を見せなかった。「お互いのチームが頑張った結果です。ピンチもみんなでディフェンスできたので、後悔はありません」。梅本監督も冷静だった。「受け身の試合をしてしまったけど、よく盛り返してくれた。抽選でどういうことが起ころうと、感情はコントロールしようと常に言ってきました。勝った時も敗者がいるのだから、優しい気持ちを持つ人間になってほしいと伝えてきました。結果としてこうなりましたが、胸を張って帰りたい。泣き崩れてほしくないです」。

話をする監督をまっすぐに見つめていた宮田キャプテンは、集まった選手たちに、「みんなと力を出し切って戦えたことを嬉しく思う。これをバネに、次へ進んで行こう」と話し、一人一人と握手して仲間をロッカールームに入れた。凛々しかった。でも、やはり最後はこらえ切れなくなって、チームメイトと抱き合って泣いていた。
そのほんの20mほど離れたところでは、春日丘の菅沼慎キャプテンが報道陣に引き締まった表情で応対していた。「尾道が謙虚に接してくれた」と昨年、2回戦に進めなかったこともあって、あまり大喜びはせず、冷静に試合を振り返った。花園は人を育てるなぁ。春日丘のコーチであるロペティ・オトさん(元日本代表WTB)に長距離のPGを狙ったことを訊いてみると、「もう、とにかく相手陣深く入れば何かが起こると思って」と関係者の切実な思いを代弁していた。その気持ち、わかる気がする。
そして、なんともう一試合、引き分けが。関西学院対新潟工業である。7-7だった。こちらは、新潟工業が2回戦への進出権を得た。今井将大キャプテンは、抽選で「出場権アリ」を引き当てたが、表情を変えなかったことについて報道陣から質問されると、こう答えた。「引き分けですから。お互いに頑張った結果であり、力の差はない。その相手の前で喜ぶことはしませんでした」。樋口監督も「何より、いいゲームをしてくれた。最後も反則をしないでよく止めてくれた。練習してきたことを、やってくれたことが嬉しいです」と話していた。
このほかも好ゲームは多かった。飯田と高鍋は20-18の僅少差で飯田が勝利。日本航空第二は大阪朝高を破り、深谷はSO山沢の活躍もあって関西に快勝。長崎北陽台は秋田中央を下した。30日はシード校が登場する2回戦。実力が拮抗している今大会は、シード校といえども接戦が多くなりそうな気がする。
お知らせ◎花園ラグビー場の資料室で、1958年の全早大対オールブラックスU23の映像のダイジェスト版を見ることができます。これは、ベースボールマガジン社から発行された「日本ラグビー激闘史」の全巻購入特典用DVD(30冊にあるプレゼント用の応募券が必要)。この試合に出場している日比野弘さんによれば、現存するラグビーの試合映像(一部破損あり)の中でもっとも古いそうです。当時の実況を生かし、副音声では、日比野さんと藤島大さんが、当時のルールなどを解説。藤島大さんのお父さん、藤島勇一さんも選手として出場しています。日本ラグビー激闘史・全巻購読特典の応募締切は2012年1月15日です。

村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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