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試合前、NZのジョン・キー首相、日本ラグビー協会の森喜朗会長が選手とともに整列して、クライストチャーチと東日本の震災の犠牲者に対して黙とうをささげた。点差が開いても、観客席の雰囲気が温かく感じたのは、両国にとって特別な意味を持つ試合だったからかもしれない。

ワイカトスタジアムには、たくさんの日本のサポーターの方々が訪れていた。試合後に会ったみなさんは、がっかりした表情だったが、「小野澤選手のトライが見られて良かった。次の試合も行きます」など、前を向くコメントも多かった。頭が下がります。
選手たちは必死で戦っていたわけだが、JK体制で日本代表が4年間やってきたことにおいて、すべてオールブラックスが上を行っていた。個々のパワー、スピードで上のオールブラックスが、組織力、運動量、基本プレーで上回っているのだから、どうしても点差は開いてしまう。きょうの試合は、点数より中身が大事だと思っていたのだが、日本代表の見せ場があまりに少なかったのは残念だった。
小野澤のインターセプトからの40m独走は、相手SOスレイドにマリー・ウィリアムズと大野均でプレッシャーをかけ、小野澤の経験が生きたトライ。スレイドの苦し紛れのパスに見事に反応した。小野澤はこの試合でW杯10試合目。日本ラグビー選手で最多記録となった。交代出場の畠山の背面パスもトライになれば、大会ベストトライのひとつに数えられたはずだが、これはスローフォワードの判定だった。
PR川俣は、オールブラックスのスクラムについて「これまでの相手は、変則的で組みにくいということはありましたが、オールブラックスは単純に強かった。組む瞬間のヒットスピードで勝っていても、そのあと後ろからの押しが来る。重かったです」と語った。日本代表もニュージーランドのコーチングを受けているので、組み方は似ている。日本としてはヒットスピードと、8人で足をかいて素早く前に出ることで相手の重さに対抗しようとしたのだが、8人のまとまり、後ろ5人の押しもオールブラックスのほうが上だったということ。
このスクラム戦での消耗がFWの足を止め、FWが密集周辺に寄るようになって、BKが一対一になる局面が増え、やすやすとトライを奪われた。タックルミス22は多すぎるが、一対一の局面を多く作られればどうしてもそうなる。起点で押し込まれているので、前に出るディフェンスもできなかった。
この試合は、中4日で戦うトンガに勝利するために主力を温存する形になったのだが、トンプソン・ルーク、ホラニ龍コリニアシ、ニコラス・ライアンなど、相手ディフェンスに杭を打てる選手がいないと、前に出ながらのテンポのいい攻撃ができない。今の日本代表の現状を表してもいた。SH日和佐が懸命に素早いさばきを見せたが、前に出ていないので、攻撃が横に動くだけになってしまった。でも、日和佐、リーチの頑張りは際立っていた気がする。
自陣のPKからの速攻は疑問。チームとして決めた方向性らしいが、きっちり陣地をとってラインアウトから攻めてもよかったと思う。なんだかダラダラと書いてしまう。ラグマガにもマッチレポート書くので、このあたりで。
さあ、この敗戦を引きずっている時間はない。21日にはトンガ代表戦が待っている。ここは絶対に勝たなければいけない。選手は頭を切り替えて、トンガ戦に集中してほしいと思う。
◎W杯日本代表第2戦結果
ニュージーランド代表○83-7●日本代表(前半38-0)
追記◎試合後、ミックスゾーンに現れたソニー・ビル・ウィリアムズ。今や、ダン・カーターをしのぐ人気者である。出てきたときの歓声は一番だろう。きょうも個人技で観客を魅了したが、インタビューに答える様子はまるでハリウッドスター。

村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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