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土曜(21日)の夜は、ハイネケンカップの決勝戦(レンスター対ノーサンプトンセインツ)をじっくり観戦。ハイネケンカップは表彰式まで見るのが面白いのだが、ノーサンプトンのベン・フォーデン、レンスターのブライアン・オドリスコルのマッチアップは見応えがあった。内容も観戦者を十分に楽しませてくれたし、最後の最後まで見て寝不足に。
翌日(22日)は、朝から大阪・心斎橋のスポニチプラザで開催されていた「ONE FOR ALL ALL FOR ONE いまこそラグビー精神だ!ヒーローズ震災支援プロジェクト」に行ってトークイベントの進行役をしてきた。そのあとの夕方6時からは、立売堀のミームカフェで、神戸製鋼コベルコスティーラーズを引退したばかりの後藤翔太さんとのトークライブだった。長くなるので、2回に分けて書きたい。

心斎橋での12時からのトークイベントでは、まずは、林敏之さんが5月15日に盛岡に行った際の映像などで被災地の状況が説明され、そのあと野上友一さん(常翔学園高校=前・大阪工大高)と高崎利明さん(伏見工業高校)の高校ラグビー指導者を迎えて、両チームの伝説的エピソードや工大高・荒川博司先生(故人)、伏見工・山口良治先生という2人の師にあたる名監督の指導法など語ってもらった。荒川先生が常にベストゲームにこだわり、山口先生がものすごい負けず嫌いだという話しは両者のチームカラーにも現れている気がして面白い。
ONE FOR ALL,ALL FOR ONEにまつわる話では、関西の11高校(常翔学園、常翔啓光学園、東海大仰星、大阪桐蔭、大阪朝鮮、伏見工業、京都成章、天理、御所実業、報徳学園、八幡工業)が震災後いち早く義援金を集め、宮城県で被災した仙台育英に寄付をしたことなど語られた。野上先生が届けたのだが、仙台育英のグラウンドは完全に津波で海水に浸かってしまい、練習もままならない状況。当初は選抜大会へも出場の意向だったが、現実的には難しかったらしい。伏見工業も京都の中心街で募金活動をするなど、チームを越えた支援の輪は広がっている。

15時からの第ニ部は、釜石シーウェイブスの支援団体「スクラム釜石」代表である石山次郎さんも来場。急きょ、林敏之さんとのトークとなった。お二人は、日本代表でも一緒にプレーした。スクラムでは林さんが石山さんを後ろから押していたわけだ。石山さんは、1980年、林さんが初めて日本代表の海外遠征に選ばれたときのことを披露してくれた。2人は同部屋だった。「僕は試合の3日くらい前から気持ちを高めていくのですが、林君は試合の直前までぐーぐー眠っているんです。そして、直前になって顔を自ら殴ったりして気合いを入れていく(笑)。ずいぶん違うモノだと思いました」
すると林さんが言った。「いやいや、ただぐーすか眠っていたわけではないですよ。それは僕がいつもやることで、試合の日は直前まで力を使いたくないんです。すべてを試合に注ぎたかったから」。それは神戸製鋼時代も変わらぬスタイルだった。
石山さんは新日鐵釜石の7連覇時代、すべての優勝にレギュラーとして活躍した5名の一人。まさに真のV7戦士なのだが、釜石は7連覇の晩年はスクラムトライをしなかった。これについて石山さんはこう説明した。「スクラムトライはやるほうも、きついんです。だからできれば勘弁してほしかった。そして、これは松尾雄治さんの考え方なのですが、ゴールラインが見えたら前に行くな、と言うんです。そこは相手もディフェンスが堅くなるからトライを取るのが難しい。だからボールを出せ、と。そのほうがラグビーが面白くなるということもありました。できれば見ている人も面白いラグビーがしたかった。僕と一緒にスクラムを組んでいた洞口さんもボールを回すほうが好きだったんです。だから、釜石はタッチフットをして走ってと、そんな練習が多かったんです」
石山さんは引退後、一切メディアに出なくなった。ラグビーの思い出の品はすべて京都の知人に預け、仕事に没頭した。それが今回、スクラム釜石の代表として苦手な人前で話していることについては、多くの関係者が驚いている。「震災から2週間後に釜石に行きました。あの惨状を見ると、人前に出るのが恥ずかしいとか、話すのが苦手とか言っている場合ではないと感じました。一人でも二人でも、釜石シーウェイブスのサポーター会員になっていただければと思い、話しをさせてもらっています」と真摯に語られた。澄み切った心のこもった一つ一つの言葉に感動の輪が広がった。
内容は非常に面白かったので、いくらでも書きたくなるのだが、またの機会に。イベントに参加した皆さん、林敏之さんはじめ、運営に尽力された皆さん、お疲れさまでした。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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