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23日は、秩父宮ラグビー場でトップリーグプレーオフセミファイナルの三洋電機ワイルドナイツ対トヨタ自動車ヴェルブリッツの試合が行われたが、僕は近鉄花園ラグビー場だった。JSPORTSでワイルドカードトーナメントの解説である。勝てば日本選手権出場、負ければシーズン終了という試合。当然、内容は白熱したものになった。
第1試合はトップリーグ6位のNECグリーンロケッツがリコーブラックラムズと対戦。開始早々にラインアウトからのサインプレーでCTB櫻谷が抜け出して先制トライするも、その後はリコーが一対一の局面でよく前に出て、WTB星野の2トライで逆転。前半は22-12とリコーがリードで折り返した。
後半に入るとNECはSH藤戸からのハイパントを多用。ボール処理にもたつくリコーに圧力をかけ、WTBロコツイが連続トライ。24-22とスコアをひっくり返した。しかし、リコーもNECがキックオフのボールをキャッチミスすると、これを奪ったPR伊藤が4人のタックルをかわしてインゴールまで走きるなど、逆転につぐ逆転のシーソーゲームとなった。最終的には、後半の大半の時間を相手陣で戦うことに成功したNECが競り勝ったが、残り3分のところで、リコーがSO河野のPGで6点差とするなど、勝敗の行方が最後まで分からない緊迫感ある試合だった。
第2試合は、リーグ5位の神戸製鋼コベルコスティーラーズが福岡サニックスブルースを迎え撃った。トップリーグ第2節では、サニックスが後半投入されたWTBヘスケスの大活躍で逆転勝ちしている。「リーグ戦で負けていたので、1点差でもリベンジする強い気持ちだった」と、苑田ヘッドコーチ。立ち上がりすぐに、ゴール前のスクラムを押し込んでNO8伊藤鐘史が先制トライを奪うと、優位に立つスクラムを起点に、FB濱島の2トライなどで主導権を握った。
後半に入ると、ヘスケスを投入したサニックスが反撃を開始。NO8西端に続いて、FL菅藤の突破から最後にパスを受けたヘスケスがトライすると、ゲームが大きく動き出す。神戸製鋼も濱島のこの日3本目のトライで、41-21と突き放したが(後半21分)、ここからは完全にサニックスの時間帯。LOパリンガタイ、小野、アヒオのCTBを軸にボールを動かし続けて、なんと3連続トライ。ついに41-40に迫った。スタジアムは異様な興奮状態になったが、神戸製鋼は後半切れ味ある突破を何度も見せていたCTB今村雄太が個人技で防御を破って中央にトライ(後半35分)。勝利を決定づけた。
「めちゃくちゃしんどかったです。でも、このまま負けたらまた同じ事だと思って、踏ん張りました」。ゲームキャプテンを務めた大橋はサニックスの凄まじい波状攻撃を振り返った。試合後、両チームの選手達に大きな拍手がわき起こった。神戸製鋼のサポーターも、サニックスの選手達に惜しみない握手を送っていたのは印象的だった。
実況解説席も興奮。実況の谷口さんは酸欠状態になっていた。この結果、NECと神戸製鋼が日本選手権出場権を獲得した。同日行われたプレーオフセミファイナルの結果は以下の通りで、日本選手権では、トップ4の組み合わせをプレーオフとは入れ替えるため、「東芝、三洋電機」、「サントリー、トヨタ自動車」が同じブロックに入る。東芝は1回戦でNECと、トヨタ自動車は神戸製鋼と対戦することになった(2月6日、近鉄花園ラグビー場)。
■ワイルドカードトーナメント2回戦結果
NECグリーンロケッツ○38-33●リコーブラックラムズ(前半12-22)
神戸製鋼コベルコスティーラーズ○55-40●福岡サニックスブルース(前半22-7)
■トップリーグ・プレーオフセミファイナル結果
トヨタ自動車ヴェルブリッツ●10-32○三洋電機ワイルドナイツ(前半7-11)
■第18回全国クラブ大会決勝戦結果
北海道バーバリアンズ●22-24○タマリバクラブ(前半12-9)
※本結果により、タマリバクラブが2年ぶり8回目の優勝を果たし、2月6日より開幕する日本選手権に出場する。
愛好的読書日記◎【武骨なカッパ 藤本隆宏】(ワニブックス刊 松瀬学著)を読んだ。ソウル、バルセロナオリンピックの競演代表から舞台俳優へ。そして、「坂の上の雲」で海軍軍人・広瀬武夫役を熱演した藤本さんの熱血ストーリーだ。藤本が演じた広瀬のことをこんなふうに語るところがある。「広瀬さんの魅力は自己犠牲だと思うのです。僕も水泳で日本一になるまでは、自分のためだったけれど、日本の代表となってからはそうじゃなかった。喜んでくれる方のために泳いだのです。そして、オリンピックはどうしたって国を意識するんです。国や周りのために体を張る、広瀬さんにも同じ事を感じるのです」。頑張れば、いつか夢はかなう。元気の出る本だった。ラグビーやってたら、この人は、ものすごくしつこいタックラーになっていただろうなぁ。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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