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7日の朝、京都から熊谷に向かった。本当は準々決勝から決勝までずっと熊谷にいたかったのだが、どうしても6日は京都にいなければならず熊谷へ。でも、意外に時間はかからない。
熊谷に到着すると雨が落ちていた。午前11時から降ったり止んだりが続くという。悪コンディションが心配されたが、グラウンドの熱戦は天候のことなど完全に忘れさせるものだった。今回、準々決勝、準決勝、決勝と続けて見たが、東福岡が絡んだ3試合は特に見応えがあった。決勝は大阪朝鮮の激しいタックルが東福岡に突き刺さり、拮抗した展開に。この試合は、明日(8日)、JSPORTSで放送されます。このあと内容と結果に触れますのでご注意を。
東福岡のキックオフで始まった試合は、開始1分、大阪朝鮮のミスボールを拾った東福岡がボールをつなぎ、最後はFB藤田がタッチライン際を駆け抜けて先制。直後のキックオフでもCTB布巻の相手の背中を通す見事なパスでCTB大場、WTB中野が快走して敵陣深く入る。しかし、ここでミスが出て、結果的にPGの3点で留まったことで、大阪朝鮮が息を吹き返す。7分、CTBコン・ユインのタテ突進を起点に、CTBキム・ヨンヒがトライ。17分、SOパク・ソンギのPGで10-10とするなど拮抗した内容になる。
ひたすらボールをつなぐ東福岡に、大阪朝鮮が突き刺さる展開が続いた。前半を終えて、17-10と大阪朝鮮がリード。それでも、準決勝で桐蔭学園に15点をリードされながら逆転した東福岡のこと。後半立ち上がりから巻き返すかとおもいきや、後半開始5分には、CTB布巻がインゴールでキックをチャージされ、大阪朝鮮NO8チョウ・ソンギョンにトライを許す。この時点で24-10となり、熊谷ラグビー場に緊迫した空気が流れた。しかし、東福岡は慌てなかった。ワイド展開は完全に止められていたので、FW勝負に切り替え、FW陣がしつこく前に出て、機を見てのキックで陣地を前に進めた。そして、13分、NO8西内が追撃のトライ。20分にもモールを押し込んで同点に追いつく。
さらに白熱した内容になったのはここから。同点なら両者優勝ということは、頭にないようにお互いに思い切って攻め合い、陣地は行ったり来たりした。後半28分を過ぎても、互いにまったく逃げずに攻める。そして、インジュリータイム。東福岡の攻撃を、大阪朝鮮が前に出るタックルで押し戻し、このまま守りきるかと思われたとっころで、自陣22mライン付近から、ついにWTB中野が抜け出して、交代出場の藤崎にパス。藤崎はそのまま約60mを走りきって決勝トライをあげる(当初、石松を書いていました。大変失礼しました)。長い長い攻撃で、時計の針は、34分をさしていた。
選抜大会史上初の連覇に谷崎監督は「正直、最後は引き分けでもいいかな?と思った。でも選手はそうじゃなかったですね。謝らなければいけないし、敬意を表します」と微笑んだ。水上チームキャプテンは、「最初に簡単にトライがとれたことで、安易なパスやミスが出て、つけ込まれました。ただ、どんなに点をとられても負けないのが、今年のチームの強みだと思います」と冷静に語った。
敗れた大阪朝鮮の呉英吉(オ・ヨンギル)監督は、「身体を張って自分たちの力を出し切ってくれた。負けはしましたが、ベストゲームに近い。ただし、東福岡はBKが止められたらFWで来るのは分かっていたのに、それを止められなかったのは力不足です」と潔かった。それでも、いつもはチームプレーに徹するSHリャン・ジョンチュを「自由にやってこい」と送り出して、天才肌のプレーを発揮させるなど手腕は光った。最後まで、集中力を切らさず戦った大阪朝鮮には心から拍手を送りたい。
試合後、報道陣、関係者からは、「面白い試合だったですね」という言葉が飛び交っていた。厳しいタックルにミスが重なってもひたすら攻める東福岡、それを止め続ける大阪朝鮮の戦いぶりは、さわやかな感動があった。後半28分を過ぎて同点の時も大阪朝鮮は自陣から冒険的に攻め勝利を狙った。だからこそ東福岡の決勝トライが生まれた。両チームとも逃げなかった。それがいい。
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一次リーグから接戦が多く、決勝トーナメントに入ってからも紙一重の試合が続いた。その中で負けなかった東福岡に底知れぬ強さを感じたが、今季の高校ラグビーはハイレベルで上位陣の実力が拮抗している。これから一年、彼らの成長が本当に楽しみだ。
◆決勝戦結果
東福岡○31-24●大阪朝鮮(前半10-17)
追記◎ここ数日、ラグビー関係者と話すと必ず渡邉マンキチ君の話になる。4日の日記に短いコメントは書かせてもらったが、急逝されたことが未だに信じられない。そういえば、選抜大会に出場した常総学院のベンチには、石塚武生さんの遺影があった。高校生達は遺志を継いで健闘した。渡邉さんの激しく、熱いプレーも、東芝ブレイブルーパスや日本代表が引き継いでくれるだろう。それにしても、寂しい。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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