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午後5時20分、セレモニー開始。待ちきれない観客席がウェーブを始める。IRBのベルナール・ラパセ会長から挨拶があった。10年後、2019年ワールドカップ日本開催、そしてこの日行われるブレディスローカップへの期待が語られた。続いて、ジョナー・ロムー氏が登場すると大歓声が。「2019年のワールドカップ日本開催おめでとうございます。きょうは最高の舞台を楽しんでください。(中略)アリガトゴザイマシタ」。日本ラグビー協会の森喜朗会長は「大変なことになりました。この試合が日本で行われることになるなんて、夢にも思っていなかったのですが、実現しました。(中略)これからも日本ラグビーをぜひご支援ください」と語った。

キックオフ直後から両者のタックルの激しさ、反応の早さ、ハンドリングスキルの巧みさで客席は何度も沸いた。立ち上がりはブレイクダウン(ボール争奪戦)でワラビーズが圧力をかけたが、オールブラックスも次第に盛り返した。ギタウ、カーターの両SOが互いにPGを決め合って6-3とワラビーズがリードして迎えた前半20分、オールブラックスは、ドネリー、マコウ、ムリアイナらが見事にパスをつなぎ、最後はWTBシヴィヴァトゥが左隅に飛び込む。ゴールも成功して10-6と逆転。その後、PGを決め合うもペースはオールブラックスに傾くかと思われた。しかし、34分、ワラビーズはSHゲニアの好判断のロングパスからWTBハインズが右コーナーぎりぎりにトライし、16-13と逆転に成功する。
ハーフタイム。観客数が44,030人の発表。聖火台の周辺は少し空席があったがあとは概ね埋まっていた。
後半開始まもなくオールブラックスWTBジェーンのオフロードパスからCTBスミスが右中間にトライして、20-16とゲームは二転三転する展開に。ワラビーズもなんとか7点差として残り10分、ここからはワラビーズの反則が多くなり、SOカーターがPGを次々に決めた。アシュリークーパーのカウンターアタックなどで何度かチャンスを作ったワラビーズだが、ミスでそれを生かせなかった。
後半、ジョージ・スミスが登場すると大歓声が起こるなど、海外ラグビーのスター選手達が日本でも浸透していることを感じさせる反応も多かった。ワラビーズがよくスコアを離されずついていったが、やはりゲームメイカーのインサイドCTBベーリック・バーンズの欠場は痛かった。オールブラックスのディフェンスに与えるプレッシャーが足りなかった気がする。
東京での初開催。よく仕事をするソーンや、マコウの流れを変えるプレー、ギタウの切れ、ゲニアの運動能力の高いプレーなどなど、素晴らしいプレーは山のようにあった。
試合後の会見。ワラビーズは、エルソム主将、ディーンズ監督、ギニア、ギタウの2選手が出てきたが、みな、敗戦に厳しい表情だった。
「敵陣22mライン内に入ったところでミスをするなど、チャンスを生かせなかった。後半も我慢強く戦えたが、細かいパスが通らずボールをキープできませんでした」(ギタウ)
「ブレイクダウンは以前より良くなっていたが、セットピースでプレッシャーをかけることができなかった。改善したい。しかし、観衆の熱心さには心を打たれました」(ディーンズ監督)
オールブラックスは、ヘンリー監督、ハンセン、スミス両コーチに、マコウ主将が出席。「結果は満足ですが、まだ70%くらいの出来で課題が多いのは確かです。きょうのワラビーズは我々にプレッシャーを与えました。その中で今年4連勝できたことは素晴らしい。この後のツアーに勢いがつくと思います」(ヘンリー監督)
日本の観衆に対する質問について。
「大観衆の前でプレーできたことは素晴らしい。黒いジャージを着ているファンも多く、嬉しかったです。良いラグビーのプレー、スピリットも見せることができました。日本のファンのみなさんにも楽しんでもらえたと思います」(マコウ主将)
「オールブラックスのサポーターがこんなにたくさん日本に住んでいるとは知りませんでした。素晴らしい試合を見てもらえて良かった。日本でのラグビー人気がさらに高まれば嬉しいです」(ヘンリー監督)
◎ブレディスローカップ東京結果
ニュージーランド代表オールブラックス○32-19●オーストラリア代表ワラビーズ(前半13-16)
関東大学対抗戦◎この試合の前、秩父宮ラグビー場で早大対帝京大の試合を取材した。素速い展開を目指したはずの早大だが、ブレイクダウンで再三ターンオーバーを許すなど、帝京大の粘り強い防御の前に攻撃が継続できず。双方ノートライのまま、6-3で早大が競り勝った。
「タイトなゲームで力を出し切れなかったが、粘り強いタックル、アタックはできたと思う」と帝京大の野口主将。早大の中竹監督は勝ちはしたものの、「終始受けてしまい、やりたいことが何も出来ない0点に近いゲーム内容でした。ボールを展開しないと早稲田のラグビーにならない」と厳しいコメント。その言葉通り、両チームともキックが多く、もっともっとボールを動かしてチャレンジしてほしかった気がした。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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