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29日は、大阪の関西大学で「日本ラグビー学会第2回大会」が開催された。午前中はさまざまな分野の研究者の発表があったが、そのなかに、元神戸製鋼の平尾剛さんの顔もあり、「ラグビーにおけるコンタクトの意味」について発表。このほか、頚椎損傷のこと、デフラグビーのこと、ラグビーの父、クラーク先生の足跡など、全12演題の内容は多岐にわたっていた。
午後からはシンポジウムが2つ。1つめは、僕がコーディネーターを務め、今年度の全国高校大会のベスト4監督が「強豪チームの秘策を探る」と題して語り合った。写真は左端2人目から常翔啓光学園・杉本誠二郎監督、東福岡高校・谷崎重幸監督、京都成章高校・湯浅泰正監督、御所実業高校・竹田寛行監督、右端は、学会の溝畑寛治会長。秘策といっても、もちろん細部は話してくれないのだが、面白い話がたくさん出ていた。どの監督も、選手とのコミュニケーションに気を配っているし、個性を最大限に生かそうと努力されているのが伺えた。

この内容は、4月25日発売のラグビークリニックに掲載されるが、少し紹介すると、竹田先生に「今思えば、決勝戦はもっとこうすれば良かったとかありますか?」と問うと、「立ち上がりに奇襲攻撃を仕掛ければよかった」という答え。杉本監督は、「決勝戦は他の試合と雰囲気がまったく違う。その気持ちは体験してわかっていたので」と、立ち上がり、御所の動きが硬きなるのを見越して強気に攻めたことについて語った。
「常翔啓光学園はあのハンドリングラグビーをどうやって教えるのか?」という質問をしたとき、杉本監督が「ボールをトップスピードでもらうことは徹底します。もらうときに音がするくらいに」と答えた。谷崎監督は「僕は啓光は縦が強いイメージがあります。いくらパスでボールを動かしても、縦に行けないと抜けないんですよ」と補足。加えて「僕も音は意識しますね。試合前の練習は、コンタクトバッグに当たる音など聞いて、きょうはいいな、と感じますよ」と興味深い話も。
どの監督も、シンプルに考えをまとめて試合に臨んでいることも共通していた。たとえば、湯浅監督は、試合ごとにキーワードを決める。御所との準決勝では、「ボールはひとつ」だったという。「御所はいろんな攻めができる。的を絞りにくい。でも、ボールはひとつ。惑わされるな、と話したんです」。などなど。正直なところ、進行役をすると内容はあまり頭に入らない。次の質問を常に考えてしまうから。ラグビークリニックを楽しみに待とう。
そういえば、参加者の方から、最近スポーツ選手のモラルが低下しているのではないか、そのあたりをどう指導しているのか?という質問に対し、それぞれの方法論が語られたのだが、谷崎監督の次のような話が胸に響いた。「NZ留学したとき、ちょっと問題の多い学校の校長になぜそうなるのか聞いたんです。そうしたら、子供達は悪くない、悪いのは我々大人です、と言われました。そうなる環境を作っているのは大人なんです」。
シンポジウムⅡは、「他競技から学ぶ」と題し、剣道の専門家である木寺英史さん(久留米高専 准教授)、相撲から川口浩さん(関西大学講師 元相撲部監督)、川村幸治さん(大阪府立阪南高校校長)がシンポジストとして参加。京都大学教授の小田伸午さんがコーディネーターを務め、武道からラグビーにヒントになるような身体の動きについて意見がかわされた。
昔の日本人は力を入れるときに足の裏全体をつけていたことや、足の運び方、力の発揮できる姿勢など、ラグビーの動きのヒントになる話も満載で聞き入った。今回もいろいろ勉強させてもらった。この学会は、来年の3月28日に第3回が開催される予定だ。またぜひ参加したいと思う。みなさん、お疲れさまでした。
学会終了後、大学ラグビー部同期の夫人に声をかけられた。旦那さん(友人)が来られなかったから代わりに来てくれたのだ。大学の頃から知っていた顔だから懐かしく話をした。別れ際、飴をくれた。「あめちゃんくれるって、大阪のおばちゃんやん!」、「そうや、もうおばちゃんやで〜」。学会の最後、図らずも「大阪のおばちゃんは、あめちゃんをくれる説」が実証されて、なんだか嬉しかった。ありがとう、あさちゃん。
追記◎土曜日夜は、都内のホテルで行われた本郷高校ラグビー部50周年&大浦一雄先生定年退職のお祝いに参加してきた。会場はOBを中心に500名以上の関係者が集う盛大なもので、NECの浅野良太選手や、東海大学の木村監督など著名なOBを多数詰めかけ、43年間にわたって本郷高校ラグビー部を率いた大浦先生の人柄をしのばせるものだった。当日の昼間には、本郷と親交の深い大東大一高とのOB戦、現役同士の試合が行われ、ここでも、錚々たるメンバーが顔を揃えていたようだ。まむし軍団が、ラグビー界に残してきた足跡を感じる式典だった。

東海大の木村監督、下村大樹レフリーも本郷高校出身。

村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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