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11日の土曜日は、熊谷ラグビー場にいた。トップリーグ第4節をJsportsで解説するためだ。僕は第2試合の東芝ブレイブルーパス対近鉄ライナーズ戦の担当だったので、取材を進めつつ第1試合の三洋電機ワイルドナイツ対九州電力キューデンヴォルテクス戦を見た。
三洋は、SOブラウンのPGで先制すると、12分、NO8龍コリニアシ、FB田井中のライン参加で敵陣深く入り、左隅でできたラックからブラウンが右タッチライン際にキックパス。これを、一番端にいた劉(ユ)とヒーナンの両LOが追いかけて劉がキャッチしてトライ。以降も、九電のしつこいボールへの絡みを激しく押しのけて、ボールを大きく展開し、WTB三宅、FL若松らが次々にトライラインを駆け抜けた。前後半合わせて8トライである。ブラウンのコンバージョンも100%の成功率だった。他チームの関係者に数名お会いして話したが、みな、一様に「三洋、強いね」と昨季より一段階上がった強さに複雑な表情を浮かべていた。
東芝対近鉄は、前半4分、ラインアウトからSH吉田朋生が抜け出してチャンスを作り、CTB仙波が先制トライをあげる。タックルされながらも、次々にボールをつなぐ東芝は、一枚上の組織力を見せ、FLベイツ、NO8豊田が連続トライ。一時は、24-3と突き放した。ところが、東芝は差が出たことでやや動きが鈍り、近鉄が盛り返す。前半22分には、FWの密集サイドを執拗に攻め、防御を集めておいてショートサイドに走り込んだSO重光が抜け出し、FB坂本が左隅に飛び込む思惑通りのトライを決めた。
このあとも、何度も東芝が突き放しにかかるが、そのたび近鉄は追いつき、スタンドは大いに沸いた。試合終了間際には、N08統悦がLOトンプソンのパスを受けて4トライ目をあげ、ボーナス点をゲット。44-35と9点差に詰め寄った。ゴールが決まれば、7点差以内のボーナス点も得られるところだったが、重光のゴールキックは強風に煽られた。
互いに果敢に攻めたこともあって、見ていて興奮する面白い試合だった。東芝は簡単に3トライできたことで緩んだ感じだ。廣瀬キャプテンも「近鉄のチャレンジしてくるスピリッツは勉強になりました。前半、もう一本トライをとれなかったことで、こういう流れになってしまいました」と近鉄を称えつつ、勝利を素直には喜べない様子。瀬川監督も、「3トライで全員が動かなくなり、人任せになった」と厳しい表情だった。
後半、熊谷ラグビー場には強風が吹き込んだ。後半の近鉄は強い向かい風のなかで陣地を戻せず、これは明らかに試合に影響していたと思う。近鉄は、SH金のPKからの速攻や、CTBイエロメの突破などで流れを作った。ディフェンスのリアクションも良く、今後もこのチームからは目が離せない。一方で、自ら蹴ったボールにうまくプレッシャーをかけられずに、トライを奪われるというアバウトな面もあり、このあたりの完成度では東芝が一枚も二枚も上だった気がする。

試合後、東芝のPR大室歩選手にインタビューをした。3節のマンオブザマッチに関することだ。「なぜ僕なんですか?とコミッショナーに聞いたくらいです」と驚きながらも、「このトロフィーは墓場まで持っていく」と試合後にコメントしたほど最高に嬉しかった様子。スクラムだけでなく、フィールドプレーでもよく動いていたことが評価されたようだ。まもなく30歳。今年から先発で試合に出始めた遅咲きの選手だが、今後もみなさん、ぜひご注目を。手にしている写真は、愛娘の菜々美ちゃん。写真を肌身離さない優しいお父さんでもある。
東芝と近鉄の試合後、神戸製鋼が敗れたという情報を聞いた。サニックスSO小野の決勝ドロップゴールだったようだ。
福岡サニックスブルースの広報からのプレスリリースでの藤井雄一郎監督コメント
「第3節から今日までの3週間、神戸製鋼戦をめがけて準備したことが、今日の試合では、うまく機能しました。選手たちには、ここがターニングポイントとなる、とプレッシャーをかけてきました。そのなかで、選手たちの意識が変わり、上のステージを目指して、個々の選手が、それぞれの持ち味を出してくれたと思います」
◎トップリーグ第4節結果(10、11日)
NECグリーンロケッツ○21-14●クボタスピアーズ(前半11-11)
三洋電機ワイルドナイツ○65-8●九州電力キューデンヴォルテクス(前半34-8)
東芝ブレイブルーパス○44-35●近鉄ライナーズ(前半24-17)
神戸製鋼コベルコスティーラーズ●22-25○福岡サニックスブルース(前半12-10)
トヨタ自動車ヴェルブリッツ○48-21●コカ・コーラウエストレッドスパークス(前半12-14)
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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