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どこまでも驚かせてくれるW杯である。フランス対イングランドの準決勝は、地元フランスが敗れる波乱の結末となった。8万283人の大観衆は騒然。フランスのサポーターは座り込み、早々に出口に向かう人も多かった。20,000人がパリに乗り込むという報道もあったイングランドサポーターは歓喜のガッツポーズである。茫然自失のフランス代表選手たち。「先週のように激しくプレーができなかった」(LOプルース)。自信はあったはずだが、やはりオールブラックスを破ったときと同じテンションでは戦えなかったということだろう。
試合は開始早々に動いた。イングランドSHゴマソールの防御背後へのパントをWTBルーシーが追い、これを処理しようとしたフランスFBトライユの目前でバウンドが変わると、跳ね上がったボールをつかんだルーシーが左コーナーぎりぎりに飛び込んだ。ウィルキンソンのコンバージョンは外れたが、これでイングランドが5-0と先制。
フランスもボクシスの2本のPGで逆転したが、この後は攻めきれず。ボールを回せば抜けるように感じるのだが、立ち上がりからSOボクシスが再三ドロップゴールを失敗するなど、ボールを動かしながら最後の詰めができず終い。イングランドは、ブレイクダウン(ボール争奪戦)で徹底的にプレッシャーをかけ、SHエリサルドのパスワークを乱した。前半から続いた相手キックへのプレッシャーも骨惜しみしなかった。シンプルにひたすらプレッシャーをかけ続けて接戦に持ち込み、後半35分、ウィルキンソンのPGで、11-9と逆転すると、37分、ウィルキンソンが慌てずにドロップゴールを決め、14-9として勝負を決めた。
大事なところで外さないウィルキンソンは、さすがである。フランスのWTBクレールがゴールに迫ったときの、ウォーズリーのアンクルタップも効いた。イングランドFWは逞しかった。終盤にきて、イングランドの選手たちがミスしなくなった気がする。集中力がどんどん高まっていくのを感じた。それにしても、フランスはもったいない。十分に勝てる力があるのに、自ら接戦に持ち込んでしまったような気がする。蹴りすぎだよなぁ。強気に攻めれば勝てたはず。悔やみきれないだろう。
僕も最後はちょっとペンをとる手が震えた。夜、こちらの日本人ラグビークラブ、パリ・ジャパニーズの人たちと食事したのだが、落ち込んでいる人も多かった。そこで教えてもらったのだが、試合が終わったあとのスポーツメーカーのテレビ・コマーシャルが、フランス代表の勇ましい映像から、負けたバージョンに変わっていたらしい。
南アフリカ対アルゼンチンは、南ア有利と言われているが、また何かが起こるのだろうか。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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