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29日、パリは朝からどんより曇り空。午後3時あたりからようやく晴れ間がのぞいた。朝はホテルで原稿書き。味噌汁が食べたくなって、深緑郎さんにお湯を沸かすポットを借りた(深緑郎さん、パリで購入)。出発前に餞別にもらった即席味噌汁である。最近は僕の主食になっている。さて、29日の4試合の内容に触れますので、録画で見る方は気をつけてください。
きょうは一日中、パリ郊外の国際放送センターにいた。ニュージーランド対ルーマニア、オーストラリア対カナダ、ウエールズ対フィジー、スコットランド対イタリアという注目の4試合を観た。深緑郎さんは、オーストラリア対カナダを、僕はスコットランド対イタリアの解説をした。
NZは、SOカーターがふくらはぎの怪我で欠場。キャプテンのマコウもリザーブ(控え)スタートだったが、危なげなくスコアを重ねた。タックルされながらのオフロードパスの連発は見事だった。多くのチームが理想とするところだろう。先発メンバーはプレーが雑な部分も多かったが、リッチー・マコウ、クリス・ジャック、ダグ・ハウレット、コンラッド・スミスらが入ると、ルーマニアの疲れもあって、いとも簡単にトライを重ねた。ジャックのステップは切れてたなぁ。オーストラリアは相変わらず安定感がある。ミスはあっても自分たちの形で攻めているからピンチにならない。最終的には、カナダをノートライに押さえ込んだ。この結果、カナダはボーナス点を得られず、日本代表のプールBの4位が確定した。日本が一次リーグで最下位から脱したのは、1991年大会以来のことになる。
そして、ウエールズ対フィジーである。国歌斉唱時、フィジーのキャプテン、ラウルニの瞳から涙があふれ出した。前半は完全なフィジーペース。SOリトルのPGで先制すると、どんどんボールを動かして、FLンゲラ、WTBデラサウが次々にトライ。前半を25-10とリードする。しかし、前半終了間際にンゲラがファウルプレーでシンビンになると、後半、流れはウエールズに。前半はFW戦一辺倒だったウエールズだが、やはりパスでボールを動かしたほうがリズムが出る。WTBウィリアムズの独走トライなどで、29-25と一気に逆転した。ただし、懸命に追いかけていたウエールズにも疲れの色が。残り30分は死闘だった。互いに譲らない攻防の末、残り4分の時点で、フィジーが逆転トライ。リトルが難しいコンバージョンも決めて、38-34とする。トライをとるしかないウエールズもあきらめずに攻めたが最後はフィジーが粘りきった。
終盤の攻防でリトルが膝を痛め担架で退場。観衆は総立ちの拍手で彼を送り出した。劇的勝利のあと、選手達が毛布をかけられたリトルに駆け寄る場面が現地の映像で流れたのだが、点滴をしていたところを見ると怪我だけではなかったのかもしれない。涙を流してみなと手を握りあっていた。フィジーは1987年大会以来のベスト8進出である。リトルは準々決勝ではプレーできないだろうが、正確なプレースキックがきょうの勝利を呼び込んだのは間違いない。本人も納得の退場だったと思う。表情がそれを物語っていた。フィジーが波に乗って走り始めると誰にも止められない。脅威の攻撃力を再確認した。同時に、もし日本がフィジーとカナダに2勝していれば、ウエールズ、フィジー、日本が2勝で並んだかもしれない、なんて都合のいいことを考えたりもした。ウエールズが決勝トーナメントに進出できなかったのは、1991年、1995年大会に続いて、3度目になる。
解説の前に、すっかりエネルギーを使ってしまった感もあったが、スコットランド対イタリア戦も力のこもった試合だった。降りしきる雨の中、互いにキックで陣地を取り、PGで着実にスコアしていく戦い。しかし、この戦い方はスコットランドが長けていた。正確に陣地を取り、ラインアウトも安定。そして、クリス・パターソンの正確無比のプレースキックが冴え渡った。イタリアは、難しい位置からのPGを狙いすぎた気がするなぁ。モールで優位に立っていたのだから、タッチキックでラインアウトからモールを組めば勝てたような気がする。それだけ勝利に対してプレッシャーのかかる試合だったということか。スコットランドは、これで6大会連続の決勝トーナメント進出となった。試合後は、バグパイプバンドがフィールドに入ってきて勝利を祝福していた。
さあ、30日は、一次リーグ最後の大一番、アイルランド対アルゼンチン戦である。
追記◎ウエールズ戦、カナダ戦で日本代表がセカンドジャージーを着た件でご質問がありましたが、これはコイントスで日本が負けたためです。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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