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真夏の夜、ここ十数年の日本ラグビーを牽引してきた選手が集う夢のような試合だった。ネクタイ姿が目立つ。浴衣も多かった。しかし、大畑大介だったなぁ。アキレス腱断裂から約7カ月での復帰戦でキャプテンとして登場し、先制トライを奪うのだから、この人の運の強さとトライを獲る感覚は天性のものだ。前半3分、カーワン・ジャパンの象徴的トライパターンである、キックパスからの先制トライだった。客席を埋めた1万152人の観衆も多くも、その意味を知っていた。大畑選手に千羽鶴を贈ったファンの方と話せたのだが、「涙が出ました」と言っていた。だからこその温かい拍手だったと思う。写真は、JSPORTSの放送席で撮影したもの。
アジア・バーバリアンズ(AB)の頑張りも感動的だった。ベテランは多いし、準備期間も少ない中で、それぞれの選手が身体を張った。廣瀬のタックル、坂田のセービング、元木のパス、田沼のチャージ。どれも感嘆のため息が漏れた。アジア各国の選手も潜在能力は高かった。大畑のトライに続いて、ABのSO廣瀬が40mのPGを決めた時、思わず放送席で「これで入場料のもとはとれたのでは」と言ってしまった。いいもの見せてもらった。ABのCTB元木とビスレーの素速く前に出るプレッシャーは、日本代表選手達に好影響を与えたと思う。前半36分、元木がディフェンスを引きつけて、LO谷口がトライしたプレーは、意図通りのはず。簡単にディフェンスラインに穴を作ってしまった日本代表は大いに反省すべき失トライだった。
「選手はゲームプラン通りやってくれました。ミスは減らさないといけませんが」とジョン・カーワンHC。その言葉通り、ABのディフェンスを完全に崩しながら、ラストパスが乱れたり、ボールをこぼしたり。また、ディフェンスとぶつかるポイントでもミスが出る。気温が高く、汗でボールが滑りやすくなっていたことを割り引いても、ハンドリングエラーは多かった。ある選手は、「相手のディフェンスの分厚いところばかり攻めている。もっとスペースにボールを運ばないと」と語り、攻撃選択の未熟さを指摘した。ただし、この日は、新しいサインプレーなどを次々に試したこともあったし、このメンバーが軸になったW杯第一戦のオーストラリア戦に向け、あと1か月で課題を修正してもらいたいと思う。
試合後、カーワンHCが、日本語で挨拶。「サポーターのみなさん、いつも応援ありがとうございます。W杯では勝ってきます。サポーターの応援が力になります〜」と力強く語った。僕はメインスタンド最上段の放送席にいたのだが、日本代表を後押ししようとする客席の温かくて優しい空気を感じたなぁ。
◎試合結果
日本代表 69-10 アジア・バーバリアンズ(前半31-10)
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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