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太陽が沈み、2003年W杯時より明るくなったナイター照明が、デイリーファーマーズスタジアムの芝生を輝かせていた。「夜は冷え込む」と言われていたが、カーディガンを羽織っていれば大丈夫な程度だった。観客は、4,745人。前日に地元の人が予想していた通りの数字である。まずまずといったところだろう。
午後6時のキックオフ。立ち上がりは日本代表が健闘する。好タックルを連発し、FL佐々木が相手ボールに絡んでペナルティを誘うなど、オーストラリアAの攻撃を寸断し、CTBクロスに先制トライを奪われたが、SO小野のPGで追撃。12分には(※時間はすべて僕のストップウォッチでのもの)、小野が抜け出しWTB遠藤が大きくゲインしてゴールラインに迫る。しかし、マイボールラインアウトが確保できず、トライには至らず。18分、FBに入ったブライス・ロビンスが相手キックをチャージ。「ボールを拾ったら前に誰もいなかった」と40mを走りきってダイビングトライ。10-7と逆転する。オーストラリアAのスーパーキッカーWTBシフコフスキーに同点PGを決められたが、25分までは拮抗した試合展開だった。しかし、27分にラインアウトからCTBクロスの突破を簡単に許すと、30分に、FBヒューアットの個人技で防御を破られ、36分には、SOバーンズがタックルされながら背中越しにパスし、CTBペレササが抜け出し、最後はSHホームズがトライ。この3連続トライで勝敗は決した。いずれも、SOとインサイドCTB周辺を抜かれており、カバーディフェンスが難しい位置ばかりだった。
オーストラリアAは、対応能力の高さを発揮し、ゲーム途中からワイドな展開で日本の防御の弱点をついてきた。後半立ち上がりにもトライを追加。日本も粘り強いディフェンスで辛抱したが、残り10分でまたしても突き放された。日本は、プラン通りボールをできるだけ保持して攻撃を試みたが、「ボールを回そうとしても、いつも相手が2枚ほど余っている状況だった」と、途中出場のFB有賀も語っていた通り、手詰まり状態で逆にボールを奪われて失点する悪い流れに陥った。両チームの実力差を考えれば、ある程度の失点は予想されたとはいえ、一次攻撃で簡単に突破されることが多く、粘っている時間がもったいなく感じるトライばかりだった。
いつもは前向きなコメントで始めることが多いカーワンHCも、さすがに表情は厳しかった。「結果は非常に残念です。最初の20分間は、我々がやろうとしていることが充分に出来た。しかし、セットピースのディフェンスでミスがあった。このレベルで犯してはいけないミスです。W杯には2チームで臨む構想を持っています。若手選手がこのレベルで戦うことに慣れる必要がありました。どこまでやれるか見えた試合でもあります。我々がやろうとしていることを勇気を持ってやっていかなくてはいけない。勇気を持てなければW杯の成功もありません」
戦後の日本代表で最年少キャプテンを務めた佐々木隆道も険しい表情だった。
「今日の試合の良かった点は、前に出てしっかりタックルして仕留めたプレーがいくつかあったことです。でも、前で止めてもターンオーバーまではできないし、悪い内容だったと思います。最後まで集中力が切れなかったのが唯一の収穫でしょう。オーストラリアA代表は、パススピードの速さとランニングコースの深さが我々と違っていました。トライの獲られ方がすごく悪かったし、大事なところでミスも多かった。リードされてからは、キックマネージメントを使える状況ではなくなりました。勝つためにチャレンジして攻めたからこそ、この点差になってしまったと思います。スコアを整えるより、チャレンジしたことは良かったのですが、結果がついてきませんでした。今の力が足りないということでしょう」
数名の選手に話を聞いたが、「何もさせてもらえなかった」という言葉が多かった。FL木曽は、ラインアウトについて、「オーストラリアAは、試合中に修正してきて、やりにくかった」と、対応能力の高さを語っている。実際に間近で試合を見ていて、オーストラリアAの強さは印象的だった。タックルも堅実で重い。グラウンドを全体に見ても、ディフェンスの穴はまったく見つからなかった。LOキャンベルがほとんど一人で日本のモールを食い止めているのには驚かされた。カーワンHCの言うとおり、2チームでW杯に臨むためには必要な経験だったし、試練の場ということなのだろう。このオーストラリアAはW杯で対戦するカナダやフィジーより強いと思われるが、実力差はあまりに大きく、W杯での勝利の難しさを再認識させられる試合内容だった。会場で発表されたマン・オブ・ザ・マッチは、オーストラリアA代表FLポーコック。
カーワンHCは、「日本での2試合は経験豊富な選手を軸に臨む」と言っていた。まずは仙台でのサモア代表戦でいい結果を残したい。
◆PNC結果
オーストラリアA代表○71-10●日本代表(前半36-10)
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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