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今朝のニュープリマスは、曇り空から少し青空がのぞいている。ホテルからは、こんな感じで海が見える。昨夜、ホテルのパブで、元サモア代表プロップのファティアロファさんと話していた。1990年W杯予選の秩父宮ラグビー場でのことを話していたら、宿沢広朗さんの訃報が入ってきた。宿沢さんはその時、監督だった。トンガ、韓国を破ってのW杯出場。中島、梶原、ラトゥのFW第三列のタックルが次々に突き刺さり、平尾、朽木の両CTBが防御に接近してパスを放つ。フィニッシャーは、WTB吉田義人。あのチームはまとまっていた。宿沢さんは日本ラグビー界にとって大切な人だった。思い出は尽きない。ご冥福をお祈りします。
きのうは試合のあと、パブで、オールブラックス対アイルランド、オーストラリア対イングランド、最後は自分の部屋で南アフリカ対スコットランドを連続して観戦した。北半球の各国が南半球勢に挑んだわけだが、オーストラリアとイングランド戦以外は、かなり拮抗した内容になっていた。特にアイルランドの地力には感心さられた。最終的には27-17だったが、勝ちそうな雰囲気が出ている時間帯もあったし、堂々たる戦いだった。
日本の試合を見てから各国の試合を見ると、防御網の分厚さ、各選手の守備範囲の広さ、攻撃面でのパスの長さ、速さ、スペースに走り込むスピードなど、違いが明らかになる。一番気になるのは、日本の攻撃にはスピードの緩急がないことだ。スコットランドもアイルランドも、相手の激しいプレッシャーのなかで、すれ違いざまのプレーで防御を突破していく。ボール保持者と周囲の選手の動きでスペースを作り、走り込む選手のスピードで抜くのだ。日本の試合でいえば、2003年W杯フランス戦で、難波選手のパスを受けたコニア選手のトライみたいなプレーが連続する。接近プレーは日本の得意技だったはずなのだが、今や世界のどの国もやっている。スピード、運動量、スキルレベル、すべてが急速に進化している。
この状況の中で日本人の特徴を生かして、いかにトライをとるかを考えるのはコーチの仕事だと思う。日本代表がフランス人コーチを招聘したのは、スペースを巧みに突く戦いを学びたかったからで、一対一の強さやディフェンス面の整備に主眼が置かれる現状は、かなり遅れていると言わざるをえない。きのうも書いたが、パシフィックファイブネイションズに入れた幸運をなんとしても生かしてほしい。カナダやアメリカは「なぜ、日本なんだ」と不満のようだ。かつてシックスネイションズでお荷物と言われていたイタリアがここまで強くなったのだから、日本もこの機会を生かして強くならなければ。相手が強いからこそ分かることは多いのだ。
ニュープリマスの海を見つつ。
追記◎昨日の試合が行われたヤロー・スタジアムの、ヤローは、パンのメーカーらしい。この競技場の元々の名前は「ラグビーパーク」。趣のあるスタジアムだった。

村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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