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ラグビー コラム 2006年2月16日

記憶について

ラグビー愛好日記 by 村上 晃一
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15日朝のスポーツ紙などに「2月14日はマッチの日」と記事があった。実は僕はそれに気付いていなかったのだが、知人からファックスやメールが送られてきた。僕のマッチ好きもかなり浸透してきたぞ〜。来年の2月14日も武道館でライブをやるという話なのだ。正月に購入したマッチ箱を何度も聞いているのだが、最近は「ためいきロカビリー」にはまっている。「愛はひとつ」もいいかも。

コメントで反応の多かった「グースステップ」については僕はキャンピージの印象があまりに強く、日本人選手のことが思い浮かばないのだが、明治大学の吉田義人選手がよく使っていた印象がある。普通に走っている選手が少しスピードを緩めたかと思うと突然足を跳ね上げて加速する。ペースの変化でタックラーを惑わすステップだ。直線的な動きだから、タッチライン際などスペースがないときに有効。goose-stepで英和辞書にも載っている。早稲田のCTB今村選手あたりは、できそうな気がする。

水曜日はある大学の指導者の方とじっくりお話しする機会があったのだが、もう40年ほど前になる中学時代の試合を詳細に話してくれた。たくさんの選手にインタビューしてきたが、選手の記憶というのは恐ろしいくらい細かく正確なことが多い。試合全体の内容はおぼろげでも、トライの瞬間やパスの軌道、相手を抜く時の動きなどは鮮明に記憶に刻まれているのだ。僕も小学生の頃、ラグビースクールで初めて相手のキックをチャージした瞬間の気持ちとか、手の感触を憶えている。コーチの「おいっ! 楽に蹴らしていいのか?」という声に「くそ〜、行ったれ〜!」と思って飛び込んでいった。 意外に痛くなかった。高校で本格的にラグビーを始めてからの初トライは一生忘れないだろう。僕に最後のパスをくれた瞬間の先輩の顔まで憶えている。それから卒業まで約30本くらいトライしたけど、ほぼ思い出すことができる。

逆に言えば、敗因となった自らのミスなど思い出したくないシーンも記憶に刻まれるわけだ。僕は大学3、4年生はフルバックだったから最後にタックルを外されるような嫌な思い出がいくつかある。だからかもしれないけど、敗因になるようなミスをしてしまう選手がいると、僕が落ち込んでしまうときがある。解説をしていても、あ〜っ、これ一生背負うだろうなぁ、なんて思って黙ってしまうのだ。長くラグビーをやっていれば仕方ないことだけど、選手達の会心の記憶が多くなる試合を、残りの日本選手権に期待したい。

日本選手権準決勝まで、あと3日。

◎愛好的観劇日記
【時代劇 桜飛沫 さくらしぶき】(企画・制作/阿佐ヶ谷スパイダーズ)観ました。世田谷パブリックシアターにて。作・演出=長塚圭史、出演=橋本じゅん、水野美紀、山本亨、山内圭哉、中山祐一朗ほか。長塚作品は「LAST SHOW」以来だったけど、相変わらず、僕のあらゆる感情を刺激してくれる。気持ち悪かったり、笑ったり、怒ったり、泣いたり、大変だった。残酷に人が死ぬけど、どこかに優しさがある。桜は、ただあるだけで感動する。かっこいい芝居だと思った。最近はCMの「ひであき〜」でおなじみの中山さんも大活躍だった。

村上晃一

村上 晃一

ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。

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