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神戸製鋼コベルコスティーラーズとクボタスピアーズの試合を見るため、東大阪市の花園ラグビー場に行ってきた。近鉄・東花園駅を降りて、びっくり。駅が違うところにあった。間違えたかと思った。いま、東花園駅は改修中で、京都方面行きと、難波方面行きのホームがちょっと離れたところにある。京都から東花園に向かう人はご注意を。
さらにスタジアムまで歩く途中に長らく経営していた「ハーフタイム」という喫茶店の後には、こんな可愛い喫茶店が。このあと結果を書きますので、録画で見る人はこの先読まないでください。
キックオフは午後3時だったが、その前に「ラグビークリニック」(10月25日発売)の取材で、元神戸製鋼FB綾城高志氏に話を聞いた。FBの匠の技についてである。面白かった〜。同時代にプレーした選手のことを取材して書くのは楽しい。FBは「フリーマン」だという話は面白い。記者席で話を聞いていたら、窓にバッタが。
試合は僅差勝負になると思っていたのだが、予想外の差がついてしまった。しかも、完敗したのは神戸製鋼だった(7-28)。クボタは、初戦の敗北から気持ちを切り替え、チャレンジャーとしての粘り強いディフェンスを見せた。神戸製鋼のトライは、前半6分、SH後藤がクボタNO8ケフのキックをチャージして約50mを走りきったものだけ。クボタは、ケフ、SH西田、SO伊藤、FBマクイナリを起点に陣地を進め、ゴール前で着実に得点していった。神戸製鋼のディフェンスはとても淡泊に見えた。
クボタにとっては非常に大きな1勝だが、神戸製鋼には痛すぎる。試合後の記者会見、増保監督からしばらく言葉が出なかった。「みっともない試合をしてしまいました。コメントが出てきません」。
松原キャプテンはこう話した。「終始ドタバタしてしまった。修正能力がなかったということです」
神戸製鋼の選手たちは、おそらくクボタには勝てると思っていただろう。では、何で勝とうとしていたのか、という点では疑問が残る。この試合に関しては、上回っていたものはなかったからだ。増保監督は「やり直します」と言った。メンバー編成を含めてのことだと思う。
神戸製鋼のラグビーは難しい。個々の判断能力が重視されるからだ。しかし、どう見ても個々の判断が有機的に15人につながったかつてのスタイルではなかった。選手には迷いが見える。もっとシンプルに方向性を定めることを選手は求めているのかもしれない。増保監督も、ここは頭を悩ませるところだろう。この敗戦を深刻なものにしない唯一の方法は、このあと勝ち続けることだけである。しかし、神戸製鋼が負けるのはドキドキする。やはり強いチームというイメージがあるので、負けるとなると緊張するのだ。
クボタの荻窪監督は興奮気味に語った。「創部以来初めて神戸製鋼に勝ちました。そのことがなにより大きい。飛躍の第一歩になればと思います」。そう、クボタにとっては勝つことが重要だった。しかも、前半12分のCTB吉田のトライは、サインプレーをSO伊藤と吉田でわざと裏切ったもの。神戸のディフェンスを読み切ってのものだった。どうする神戸。
◎出会い
神戸の試合を見た夜、ラグマガの森本優子さんと、ベースボールマガジン社大阪支社で長年活躍される写真家の江見洋子さんと食事した。いろんなことを話すうち、高校ラグビーの話になった。そこで、江見さんが、昭和55年度、全国高校大会決勝の伏見工業対大阪工大高の決勝戦の写真も担当したことを聞いた。その試合とは、のちにスクールウォーズでドラマ化される決勝戦のことである。伏見工の最後のトライに至るシーンは、何度もラグマガや他メディアで紹介されてきた。その栗林君のトライを、江見さんは目の前で撮影していたらしい。思わず握手してもらった。歴史の証人に対する尊敬の念がわいたのである。江見さんは、「これまで取材した中でも、あれほど印象に残ったものはありません」と言った。
尊敬である。その角度にカメラを構えていた人は約10名ほどで、撮影後は、互いの露出など確認していたらしい。誰にとっても凄い瞬間に立ち会った感動があったのだろう。江見さん、尊敬です。お話できて光栄でした。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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