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◎6月19日 秩父宮ラグビー場 観衆14,913
アイルランド代表○47(7t6g)-18(2t1g2pg)●日本代表
(前半14-10)
2005年春の日本代表シリーズが終わった。まずは、選手スタッフのみなさんお疲れさま。そして、粘り強く日本代表をサポートしたファンのみなさんも、お疲れさま。最後は、なんとか2トライもとれて、観衆が沸くシーンも多く、第1テストマッチに比べると、スコアはほぼ同じでも内容は違っていた。それでも、7トライ奪われて、いい試合だったとは言えない。
「攻めないと勝てないですから」。2トライの大畑選手の言葉だ。この日のジャパンは、PKからも速攻を仕掛けたし、前に出るタックルからのターンオーバーでトライもとった。前半の10-14は、観衆に勝利を予感させすらした。なぜこれをスーパーカップや、第1テストでやらなかったのか悔やまれるほど、アグレッシブだった。一方で、ラインアウトから一発でトライされたり、ターンオーバーされてトライを許すなど、簡単なタックルミスや判断ミスもあった。勝てる戦い方ではなかった。
意識的にボールを動かしたSO廣瀬はこう言った。
「意識してボールを保持していきたかったのですが、有効な攻撃が出来なかったです。ボールの争奪戦で後手を踏んでいて、難しかった。もっと一次攻撃で大きくゲインをしたかったが、その精度も悪かった。後半の最初は(シンビンで)14人だったので、あまり攻めずに敵陣に行きたかったのですが、簡単にボールを相手に渡してしまいました。最後までもつれさせて、お客さんに喜んでもらいたかったので残念です」
この点については、箕内キャプテンも言っていた。
「後半の最初は離されずについていきたかったが、逆にボールを動かしすぎて、トライされてしまった」
4点差で迎えた後半の立ち上がり。日本は14人。相手が突き放そうと攻撃的にくるのは決まっている。そこでのゲーム運びの大切さが、全員に共有されていなかったということだ。あそこは手堅くキックで陣地をとれば良かった。ところが、カウンターアタックに出てあっさりターンオーバーを許す。チーム全体で勝つイメージが共有されていないのである。これこそがギリギリの試合をたくさん経験することが求められる理由である。そして、試合はやればいいというものではなく、勝つための約束事を守りつつ戦っていかなければ真に強いチームはできない。この日のジャパンは健闘した。精神的にタフになったことは認めるが、ここ2年の強化の延長線上にあるチームには見えなかった。今年だけでも3月から一緒に過ごしたわりに、選手達の共通理解が少ないような気がしてならないのだ。スーパーカップで、きょうくらいの攻撃的な試合運びができていれば、アイルランド戦でもっといい経験を積めただろう。
本人は不満だったようだが、廣瀬のライン・コントロールはさすがだった。彼が前に出て仕掛けるので、アイルランドの防御は的が絞りにくくなる。ジャパンのラインが蘇った気がした。森田を育てたいなら、この春も廣瀬と交互に出場させるべきだった。きょうの健闘は、箕内、村田、廣瀬、大畑、元木ら、海外の列強に日本が勝つために何をすべきか分かっている選手がリードした。しかし、それは彼らが経験で得てきたモノであり、それを理論化してチームに落とし込むことはできていなかった。
首脳陣は進退を問われるべきだと思う。毎度進退問題に思うことだが、あまりナーバスにならず、目標が達成できたら続投する。達成できなかったら辞める。そういう明快な決め方でいいのではないか。今年の日本代表の目標で達成されたのは、アジア予選の1位通過だけだ。イタリア代表のカーワン監督だって、いいチームを作ったのに、今年の6か国対抗で全敗して解任された。誰もがカーワンの功績を認めている。それでも、格上の強豪国相手にも負ければ責任をとる。そういった明快さが、いい流れを作る。イタリアは新監督が敵地でアルゼンチンを下した。これはスポーツであり、人格を否定するモノではない。運もあるし、チームとの相性だってある。そして、辞めた人には新しいチャンスも開ける。2007年W杯は目前である。ポジティブに判断を下してもらいたいと思う。
追記◎アイルランド代表の生真面目さには、またまた感動した。ライオンズに主力12名を奪われても、あのひたむきさがあれば、どんな相手にも大崩れはしない。日本に攻め込まれたときのディフェンスの戻りの速さ、危機意識の高さには感心した。あの姿勢こそ、もっとも見習うべきモノだったと思う。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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