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青木恵斗(帝京大学)
明治大学の得点機は少なくなかった。
前半26分の敵陣ゴール前ラインアウト。後半8分の敵陣22m内アタック。後半17分の敵陣スクラム。
しかし帝京大学の真骨頂であるフィジカリティ、セットプレーで圧力を受けた。一方の帝京大はフィジカル勝負を前面に押し出しつつ、数的優位とみればスペースにボールを運ぶ判断力、ハイスキルで、高確率で得点を重ねていく。
獲り切る帝京大学。
獲り切れない明治大学。その差が最終スコアに表れた。
関東大学対抗戦、5戦全勝同士の首位攻防戦。創部100周年で1位(勝点25)の明治大学と、2位(勝点24)で大学3連覇を狙う帝京大学が11月19日、秩父宮でぶつかった。
「ミスから得点されたシーンも多く、取り切るべきところで取れないなど、自分たちの詰めの甘さが出た試合でした」
主将のHO江良颯は「さらに成長していくための大きな分岐点になるのでは」と早稲田大戦を振り返っていたが、その予感は確信に変わったかもしれない。反省を活かし、明治大戦ではシンプルにフィジカルを押し出した。
明治大は序盤、PR床田淳貴のジャッカルなどで帝京大の攻撃を食い止めていた。しかし最初の本格的な敵陣攻撃をロングキックで終えると、これをクリーンキャッチされてしまい逆襲を受ける。
小村真也(帝京大学)
最後はWTB小村真也が右隅で快走。伏見工業(現・京都工学院)を花園初優勝に導いた山口良治氏を祖父に持つ3年生ランナーが、先制トライを決めた。
明治大、この日唯一のトライは前半11分だった。
一度はモールを止められたものの、敵陣2度目のラインアウトモールで、堅固な塊を維持したままトライ。相手の圧力をいなし、入れ違うようにインゴールへ雪崩れ込んだ。ゴールは失敗で帝京の2点リード(7-5)となった。
ラグビー 関東大学対抗戦2023
【ハイライト動画】明治大学 vs. 帝京大学
注目点の一つは、お互いに譲れぬプライドがあるスクラムだった。
夏の練習試合はプレッシャーを受けていた帝京大が、平均体重108kgのフォワードで魅せる(明治大は平均102.5kg)。前半18分に帝京大は、初の自軍投入スクラムで強烈なヒット。秩父宮がどよめく迫力だった。
帝京大のPR平井半次郎は、前戦の反省として「シンプルに取りに行けば取れていたのではないかというシーンがいくつかあった」とコメントしたが、前半22分のFL青木恵斗の2本目は、シンプルかつ計算されたスコアだった。
相手スローフォワードで迎えた敵陣スクラム。
一方の明治大も的確なパスワーク、連携力で押し込み、前半35分には2年生のCTB平翔太がショット成功。じわり5点差(8-12)に詰め寄った。
しかし誤算はここから。
帝京大のハイパントに対応できず、WTB小村真也にクリーンキャッチを許す。オフロードパスを受けた途中出場ダアンジャロ・アスイがロングゲイン。この窮地で、明治大FB池戸将太郎が不当なプレーでシンビンとなる悪循環に。
帝京大はここでのペナルティから3点追加(15-8)。バックスで数的優位の帝京大は、さらにWTB小村がクレバーにキック「50:22」を成功させ、ラインアウトからモールではなくFL奥井が間隙から突進。
準備したスペシャルプレーで見事に3本目。狙ったプレーがハマる帝京大が、前半14点リード(22-8)で後半へ入った。
後半の明治大は46分にショットで3点追加。11点差(11-22)として15人に戻ったが、以降の得点は刻めなかった。
ジャッカルから敵陣に入るが、帝京大がPR津村大志の一撃タックルから、HO江良主将がジャッカル。得点機にスコアを獲りきれない。
ふたたび敵陣スクラムの好機も、帝京大はCTB久木野太一の猛タックルから攻守交代。またも得点機を逃すと、今度は帝京大が相手陣内で12フェーズの猛攻。
明治大もPR為房慶次朗、バックロー(FL森山雄太、FL福田大晟、NO8木戸大士郎)らが、接点に走り込むランナーを必死に止めた。
しかし13次目でFL奥井がラック脇の一瞬に飛び込み、スコアラーに。「獲りきる帝京大」がゴール成功で29-11となった。
さらに後半30分、FL青木が衝撃のプレー。
バックスではなく相手の両ロック2人を弾いて、防御線を独力突破。そのまま豪快にトライを決め、ゴール成功でスコアは36-11となった。
締めくくりは、この日攻守にわたり大活躍だったWTB小村。
キックカウンターからチェイスラインに突破口を見つけてブレイク。そのまま相手FBも振り切り、ゴール成功で43-11とリードを広げ、6本目を華麗に奪った。
快勝した帝京大だが、懸念があるとすれば、HO江良主将ら先発フロントローが78分出場したことだろうか。後半38分にフロントロー3人が替わると、直後のスクラムでペナルティを奪われた。スクラムの一貫性は伸びしろだろう。
開幕6戦全勝で首位(勝点29)に躍り出た帝京大。次戦は12月2日の慶應義塾大学戦だ。2戦連続で40点台の失点を喫してしまった明治大。翌3日、東京・国立競技場での早明戦を復調への転換点にしたい。
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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