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ラグビー コラム 2019年4月1日

再び「国際リーグ」の可能性について。スーパーラグビーからの除外が決まったサンウルブズ

後藤健生コラム by 後藤 健生
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ラグビーのサンウルブズがオーストラリアのワラターズに31対29で競り勝った。オーストラリアのチーム相手のアウェーでの勝利は初めてだそうだ。

これで今シーズンのサンウルブズの成績は2勝5敗。もちろん、負け越しはしているが、今シーズンは敗れた試合でも接戦を演じている試合が多い。僕も、3月16日には秩父宮ラグビー場でのレッズ戦を観戦に行ったのだが、最終的に逆転負けを喫したものの互いにオープンで攻撃的な面白い試合だった。

昔のラグビーはボールがスクラムの中に入ってなかなか出て来ないとか、タッチキックの蹴り合いが続くといった退屈な時間があったが、最近はボールが早いタイミングでピッチ上を行きかい、スピーディーな展開で観客を楽しませてくれる。ラグビーもプロ化したことでお客さんを楽しませるように努力しているのだろう。とくに、オーストラリアでは展開の速い13人制のラグビー・リーグの人気が高いので、15人制のユニオン・ラグビーもリーグに対抗して速い展開の面白いラグビーを志向しているのだろう。

そんな、南半球式のラグビーに日常的に接することができるのも、サンウルブズがスーパーラグビーに参加してくれたおかげである。

しかし、そのサンウルブズが2020年のシーズンを最後にスーパーラグビーから除外されることが決まってしまった。

先日も、このコラムで「国際リーグ」として注目していたアイスホッケーのアジアリーグが今シーズン限りで消滅してしまうのではないかという話題を取り上げたが、スーパーラグビーからもサンウルブズが締め出されてしまうことが決まってしまった。こちらも残念なことである。

第7節 ワラターズ vs. ヒトコム サンウルブズ スーパーラグビー2019 ハイライト

サンウルブズの参戦は、もちろん今年のワールドカップに向けての日本代表強化策の一つだったのだろうが、単にチーム強化ということだけでなく、世界のラグビー文化に直接触れる機会がなくなってしまうのはとても残念なことだ。たとえば、あのスピーディーな南半球式のラグビーを身近に見られなくなってしまう。

サンウルブズとスーパーラグビーの関係には、様々な難しさがあったのだろう。

報じられているところでは、スーパーラグビーを運営するSANZAAR(オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ、アルゼンチンの南半球4カ国による組織)はサンウルブズの2021年以降に参加するために10億円の拠出を要求したというが、詳しいことは僕は知らない。ただ、北半球を本拠地とするサンウルブズがスーパーラグビーに参加することには多くの困難があったのは確かだろう。しかも、サンウルブズの競技力が低いままではテレビ視聴率も取れない。それを覆すためには、日本側からの何らかの財政的な支援がなくては……ということなのか。

オーストラリアやニュージーランドはともかく、アルゼンチンや南アフリカのチームにとっては日本への遠征は大きな負担だろう。なにしろ、アルゼンチンも南アフリカも日本からは大変に遠い。僕もアルゼンチンには何度も行ったことがあるし、南アフリカも10年前と9年前に行ってきたが、移動はいつも大変だった。

やはり、「国際リーグ」を運営するには近くの国で運営した方がいいのは当然だ。アイスホッケーのアジアリーグは、日本、韓国、中国、極東ロシアという近隣諸国によるリーグだった。それでも、運営はたいへんだったのだから、広大な地域を包括するスーパーラグビーの運営は難しいものがあるのだろう。

ただ、アイスホッケーと違って、ラグビーの場合は日本と競技力が接近している国が近くには存在しない(かつては、香港や韓国も日本とある程度は戦えたのだが、今では日本が強くなりすぎた)。

日本のスポーツ界にとって、スポーツの本場であるヨーロッパから遠いという地理的な条件は明治時代以来大きなハンディキャップだった。交通機関が発達した現在でも、これからも大きな課題であることに変わりはない。

太平洋を隔てた北アメリカ生まれのベースボールというスポーツが日本に根付いたのも、ヨーロッパに比べて比較的近いため、明治の初めにアメリカ人の語学教師が数多く日本に渡ってきて、日本人学生に彼らが愛するベースボールを教えたからだと言われている。それに引き換え、サッカー、ラグビーなどヨーロッパ生まれのスポーツは本場との交流がとても難しかったのだ。

それでも、ラグビーはオーストラリア、ニュージーランドという強豪国がそばにあったため、第二次世界大戦前から各国の準代表級のチームが来日していた。たしかに、オーストラリアやニュージーランドも相当な距離があるのだが、彼らにとってもヨーロッパまで遠征するよりも日本への旅行の方がはるかに容易だったのだ。なにしろ、第二次世界大戦前は飛行機が利用できなかったのだ。オーストラリアからたとえばイングランドに遠征しようと思ったら、インド洋を越え、スエズ運河を渡って、地中海の対岸のイタリア辺りに上陸して列車でドーバーに向かい、フェリーでイングランドにたどり着くしかなかったのだ。

それに対して、日本遠征なら船で北上すればいいのだ。

サッカーもラグビーも、いやその他のスポーツでも、世界のスポーツ大国の一つであるオーストラリアとの交流をもっと推し進めたらいいのだ。サッカーだったら、日豪定期戦を組めないものか(日韓豪3カ国対抗でもいい)。もちろん、陸上競技やバスケットボールなど、多くの競技で、スポーツ大国であるオーストラリア(およびニュージーランド)との交流は大きな利益があるはずだ。

飛行機による移動するようになった現代の日本人にとって、移動にかかる時間はヨーロッパとオーストラリアではあまり変わらないが、オーストラリアとは時差がないので負担が小さくて済むのが大きなメリットだ。しかも、夏と冬の季節は逆というのも利用価値があるのではないか……。

それにしても、スーパーラグビーからの除外が決まった直後にサンウルブズがオーストラリアのチームにアウェーで勝ったというのも何かの皮肉のようだ。サンウルブズには、これから日本代表選手も参戦してくるはず。スーパーラグビーへの挑戦も、今年と来年だけになってしまったようだが、サンウルブズには今季の残り試合と来季には意地を見せてほしい。

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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