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SUPER GT第6戦プレビュー|ここまでがウェイトMAXの戦い。重いチームは我慢を強いられ、軽いチームは我慢が実る!?
SUPER GT by 秦 直之活躍が予想される38号車ZENT CERUMO GR Supra
SUPER GTも、いよいよ佳境に差し掛かり、スポーツランドSUGOでシリーズ第6戦を迎える。第6戦といえば、サクセスウェイトが積み続けられるシーズン最後のレースで、第7戦は半減され、最終戦は全車ノーハンデとなるのはご存知のとおり。ランキング上位陣は今回までは我慢のレースを強いられる一方で、サクセスウェイトに苦しんでいないチームは、俄然勝負に討って出るというケースが多い。
今回は、久々の300kmレース。ピットストップは1回で済むから、概ねセオリーどおりの戦いになるはずだ。しかし、SUGOといえば、使い倒されたあのフレーズを当てはめたくないが、ドラマチックな展開となることが多いサーキットだ。果たして……。
昨年、軽くないはずなのに、あのチームが勝った理由とは?
昨年のSUGO大会はミシュランのウェットタイヤの驚くべき性能もあり3号車が逆転勝利した。
昨年、ここSUGOでGT500クラスを制したのは、CRAFTSPORTS MOTUL Zの千代勝正/高星明誠組で、サクセスウェイトは68kg相当と決して軽くはなかった。予選は11番手。こちらの方が相応だったとも言える。勝因は、レース中に降り出した雨だった。タイミングよくタイヤを交換し、最近痛感させられているミシュランのウェットタイヤのハイパフォーマンス。これによって勝利を奪い取ったのだ。
今年は気まぐれな天気が多いので、今回もひょっとして……。逆もありだろう。スタート直後は降っていた雨が、途中でやんで予定外のドライタイヤへの交換があったら、それで戦況が一気に変わる可能性もあるだろう。
またSUGOといえば、アップダウンに富んだテクニカルレイアウトで知られ、攻め甲斐があると語るドライバーは多い。実際、上り勾配の最終コーナーでかかる横Gは国内随一と言われ、アクセルを踏んで回るコーナーがほとんどである。予選で一発を決めれば、満足感も高そうだ。しかし、コース幅が広いとは言えず、またランオフエリアも狭い区間があって、特にSPコーナーがそうだが、ワンミスが命取りとなりかねない。
そういったアクシデントが発生すれば、FCY(フルコースイエロー)提示は必至。もし、84周の1/3、すなわち28周目を超えていたら、躊躇なくピットに素早く入るべきだろう。ただ、タイミングの妙もある。アクシデントが発生した、しかし、もうストレートを通過したというのでは、FCY提示直前のピットインは不可能。逆にSPコーナーで発生した、ちょうど最終コーナーに入った時だったら、もう絶対! 終始ドライコンディションが保たれたら、これが勝因になることは間違いない。
今年のGT500クラスは上位の実力均衡で、予想は例年以上に困難
今年のGT500クラスは上位の実力均衡で、予想は例年以上に困難
結果を出したい24号車リアライズコーポレーションADVAN Z
そういった“運を天に任せる”展開にならなかった場合、すなわちスムーズにレースが運んだとする。そこはもう、軽さが絶対だ。昨年は土曜日最速を誇り続けた、WedsSport ADVAN GR Supraの国本雄資/阪口晴南組がポールポジションを獲得。ここは35kgでも昨年の状況であれば、“あり”だったが、予選2番手はZENT CERUMO GR Supraの立川祐路/石浦宏明組で、16kgだったことを思えば、順当ではあった。
今年はすでに50kgを超え、燃料リストリクターを装着しているのが6チームにも及んでいる一方で、まったくウェイトを装着していないチームもなく、その意味では例年になく実力均衡のシーズンとも言えるだろう。
そこで波乱含みではないドラマチックな展開として、ZENT CERUMO GR Supraが来るというのは、どうだろうか? 現在積んでいるのは36kgというのもさることながら、今年限りのSUPER GT引退を表明している立川にとって、これがSUGOラストランになる。3回の優勝もあって、相性も悪くない。SUGOの表彰台で立川が男泣き、という光景も見たいところ。
また、絶対的な軽さという点においては、リアライズコーポレーションADVAN Zの佐々木大樹/平手晃平組、そしてARTA NSX-GTの野尻智紀/大湯都史樹組だろう。それぞれ10kg、22kgと控えめだ。
しかし、前回もこの2チームを推して、予選Q1では野尻と平手が、まったくの同タイム。先に出したことで野尻がトップに立ったが、ともあれ流れが来たと思ったもの。それなのにQ2では佐々木も大湯もデグナー2個目でミスをして……というところから、流れを戻してしまった感もあった。終わってみれば、リアライズコーポレーションADVAN Zは13位、ARTA NSX-GTはリタイア。「そういうシーズンもあり」といえば、それまでなのだが。
結果、優勝は筆者的には、まるでノーマークだったARTA NSX-GTの福住仁嶺/大津弘樹組。しかも、ポール・トゥ・ウィンで、後続車両を大きく引き離していた。この時のサクセスウェイトは32kg。順当な勝利でもあった。だから予想は難しい……。
SUBARU BRZ R&D SPORTとSUGOの相性良しは、大いに知られるところだが…
SUGOで相性の良い61号車 SUBARU BRZ R&D SPORT
運も実力のうちと、よく言われるものだが、前回のGT300クラスはそう思われてもおかしくない展開となっていた。まさに冒頭で記したような状況になっていたからだ。
サスセスウェイト100kgを積んでも、しぶとくポイントを積み重ね、前回も3番手を走行中のリアライズ日産メカニックチャレンジGT-RのJ.P.デ・オリベイラ/名取鉄平組が、あろうことかホイールの脱落によってコースアウト、130Rでストップしてしまう。それ自体が衝撃的な光景だったが、直後にハッと息を飲んだのは、Bamboo AirwaysランボルギーニGT3とUPGARAGE NSX GT3がピットに入っていたこと。
FCYが出されることを見越し、咄嗟の判断で滑り込んでいたのだ。実際、FCYは提示され、それぞれ阪口夏月から松浦孝亮に、小林崇志から小出峻に交代し、最小限のロスでコースに送り戻されていた。もうひとつ運があったとすれば、UPGARAGE NSX GT3の方が素早くピットを離れており、これが何よりもの勝因となった。
ただし、単純に運が良かっただけとは言い切れない。まず、この2台はリアライズ日産メカニックチャレンジGT-Rの背後を走っており、つまり4番手、5番手の好位置にいた。さらに、450kmレースの場合、GT300クラスでは義務づけられた給油を伴うピットストップ2回のうち、1回を早々に行うチームも増えているが、この2チームはそうはせず、むしろ均等割に近いタイミングで1回目を行なっていた。だから、ドライバー交代の準備もできていたわけで、先述の妙が光ったとも言えるのだ。
しかし、この後の2台はトップ争いに相応しいバトルを見せてくれた。追われる小出と追う松浦の間隔は、常に1秒前後。しきりに松浦がプレッシャーをかけるも、ルーキーの小出も屈せず。これでもし、それぞれ異なるメーカーのタイヤを履いていれば、展開も異なったことだろう。しかし、小出にとって幸運だったのは、松浦も同じヨコハマのタイヤを履いていたこと。
実際、アクシデントの直前にトップで最後のピットストップを終え、5番手だったSUBARU BRZ R&D SPORTの井口卓人のペースが終盤は最も速く、その後3番手に上がったのだが、前の2台との間に8秒あった差は、最後に2秒を切るまでとなっていた。この車が履くのはご存知のとおりダンロップ。もう数周レースが長かったら、それ以前にアクシデントが生じていなければ、SUBARU BRZ R&D SPORTがポール・トゥ・ウィンを飾っていただろう。
さて、今回は? SUGOに抜群の相性を誇るのは、そのSUBARU BRZ R&D SPORTで過去に2勝を挙げ、ポールポジションに至っては山内英輝が4大会連続で獲得している。しかし、目下のサクセスウェイトは69kgと微妙なところ。予選はともかく、決勝では少々我慢の走りを強いられるのではないか?
上限の100kgに、すでに達しているのが4チーム。前回の2勝目でUPGAREGE NSX GT3、そして同ポイントのStudie BMW M4の荒聖治/ブルーノ・スペングラー組、リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R、さらにmuta Racing GR86 GTの堤優威/平良響組が、もうその領域に達している。この4チームは、特にアップダウンに富んだSUGOにおいては、我慢の展開は避けられそうもない。
軽さが生かされるとするなら、わずか15kgしか積んでいないK-tunes RC F GT3の新田守男/高木真一組はどうだろうか? 同じ車で新田が2019年に3位となっており、相性は悪くなさそうだ。ここまで展開には恵まれずにいるベテランコンビだけに、今回こそろうかいな走りを見せてくれるかも。また、その年は高木がNSXで勝っている。ミッドシップ車との相性の良いコースとあって、Yogibo NSX GT3の岩澤優吾/伊東黎明組、ルーキーコンビを超ダークホースとして推してみよう。まだ30kgしか積んでいないことも、理由のひとつだ。
27号車 Yogibo NSX GT3
ならば、もっと軽いグッドスマイル初音ミクAMGの谷口信輝/片岡龍也組、SYNTIUM LM corsa GR Supra GTの吉本大樹/河野駿佑組はどうだ? それぞれ27kg、24kgは狙い目とは言えまいか。ともに優勝への渇望感は頂点にも達しているはずだ。
文:秦 直之
秦 直之
大学在籍時からオートテクニック、スピードマインド編集部でモータースポーツ取材を始め、その後独立して現在に至る。SUPER GTやスーパー耐久を中心に国内レースを担当する一方で、エントリーフォーミュラやワンメイクレースなど、グラスルーツのレースも得意とする。日本モータースポーツ記者会所属、東京都出身。
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