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23年12月に『INEOS』がフットボール部門の実権を握った後、「テンハフはプロジェクトの一部に含まれているが、将来が約束されたわけではない」といわれてきた。
「チャンピオンズリーグ出場権確保が続投の最低条件」との希望的観測は、4位アストンヴィラとの差が16ポイントになった4月21日に砕け散った。
「FAカップで優勝するしかない」との指摘も、対戦相手がシティでは難しすぎる。3‐0から追いつかれたコベントリーとの準決勝は、ジム・ラトクリフ共同オーナーの逆鱗に触れる内容だった。
解雇の条件は整いすぎるほど整っている。
二年連続FAカップ・ファイナリスト。昨シーズンはリーグカップで優勝し、首位シティとは14ポイント差の3位とはいえCL出場権を獲得した。テンハフにはほんの少しだけ時間の猶予が与えられてしかるべきなのかもしれない。
だが、残念ながら明確なプランがなく、被シュート数をいたずらに増やすだけだ。
また、ジェイドン・サンチョ(ドルトムントにローン)にやたらと厳しく、マーカス・ラシュフォードとアントニーには寛容なトラブル対応により、クラブ内の求心力をすっかり失ったとも伝えられている。
ドイツの『Bild』紙は「トーマス・トゥヘルとラトクリフ卿が面談」
フランスの『L‘equipe』紙も「ジネディーヌ・ジダンが最有力」
ポジティヴな材料がほとんどないのだから、悲観的な憶測が浮上するのは当然だ。テンハフは「マイナスイメージばかり植えつけ、君たちメディアは恥ずかしくないのか」と応戦したが、窮地に追い込まれていることはだれの目にも明らかだ、
コベントリーとのPK戦(前出)も異様な雰囲気だった。カゼミロは失敗しても悔しがらなかった、成功したディオゴ・ダロトとクリスティアン・エリクセンのガッツポーズは小さく、ブルーノ・フェルナンデスはなぜか哀しそうに映った。
そして、最後のキッカーを務めたラスムス・ホイルンドのもとに駆けつけたのは、エリクセンただひとり。大喜びできる内容ではなかったからなのか。疲れ果てていたからなのか。
近ごろは一体感すら消えてなくなった。漂う空気はどんより重い。ラルフ・ラングニック体制の終末期に酷似している。
文:粕谷秀樹
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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