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サッカー フットサル コラム 2024年4月16日

久保に手強いライバル出現。残り7試合、レギュラー奪還なるか

木村浩嗣コラム by 木村浩嗣
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アラベス戦でウォーミングアップする久保

アラベス戦でウォーミングアップする久保

久保建英にとって良いニュースと悪いニュースがある。

良いニュースの方は、3月31日のアラベス戦で右足のハムストリング(太腿の裏にある腱)を負傷したがケガの程度は軽く、昨日(14日)のアルメリア戦で実践復帰したこと。ほぼ2週間の治療期間だったがコパ・デルレイの決勝によるリーグ戦の中断で、欠場試合がゼロだったのも良かった。今季も残り7節、アピールする場はもう7度しかない。

悪いニュースの方は、久保の代わりにアルメリア相手に先発したベッカーが1ゴール、1アシストの大活躍で、おそらくレギュラーの座を奪われたろうこと。

いくらそれまで絶対的なレギュラーだった久保が復帰したとはいえ、攻撃面のMVPだったベッカーを次のヘタフェ戦の先発から外すことはないだろう。ソシエダが複数のコンペティションで戦っていくためには、右サイドのアタッカーが久保だけでは不十分。チームにとっては待望の久保の競争相手ができたわけで、やっと出て来た芽を摘むような真似をアルグアシル監督がする訳がない。

一方の久保は出場時間の20分余りほとんどボールに触ることができなかった。ボールをもらえなかったのは彼のせいだけではないが、1点リードで相手の守備陣が疲労している時間帯に投入されてまったく何もできなかったのはイメージが悪い。チームも終了間際、不用意なPKを与えて同点に追いつかれた。

同じドリブラーだが、ベッカーは久保とはまったく違う。

足下にボールをもらい足を止めた状態からリズムチェンジとスピードの緩急で抜くタイプの久保に対して、ベッカーはスペースにボールをもらいに走り込むスピードで抜くタイプ。久保は左利きで右サイドでプレーする逆足のウインガーだが、ベッカーは右利きで右サイドでプレーする順足のウインガー。左足でボールを突っつく久保が得意にするのは対角線侵入で、右足で突っつくベッカーが得意なのは縦への侵入。対角へ抜けてからの強烈な左足のシュートを放つ久保に対して、ベッカーは縦へ抜けて右足で強いセンタリングを放つ。

ただし、器用さと技は久保の方が上で、ベッカーには勢いに任せた硬質なセンタリングしかないが、久保には仲間の走り込みに合わせたトリッキーな浮き球というオプションがある。

体格もずい分違う。

久保は173cmでベッカーは180cm、肉付きにも差があり力強さは二回りくらい違う。スピードと大きなサイズを生かしてベッカーはロングボールのターゲットとして使える。スペースに送ってベッカーを走らせ上げたセンターリングをオヤルサバルがシュートする、というような2人だけで成立するシンプルなカウンターは、今までソシエダの選択肢にはなかった。昨季はユニオン・ベルリンで12ゴール。得点力があるCF的なウインガーで、昨日の試合でもソシエダのポゼッションが長くなるとしばしばゴール前でフィニッシュに絡んでいた。

トラオレはベッカーとの方がコンビネーションをし易そうだった。

単純に相手を縦へ押し下げてくれるので、トラオレの前に大きなスペースが生まれる。開いた久保の前を走り抜けるタイミングが難しく、トラオレと久保は重なって消し合うことがしばしばあった。ベッカーは左サイドでもプレーできる。ベッカー左、久保右の選択肢もないではないが、左には好調のバレネチェアがいるので可能性は高くない。

ベッカーは久保がソシエダで出会った初めての手強いライバルだ。残り7試合、ゴールとアシストでレギュラーを奪い返すことができれば、もう一つ上の久保を見ることになる。

文:木村浩嗣

木村浩嗣

編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。

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