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サッカー フットサル コラム 2024年1月3日

2026年まで契約更新のアンチェロッティ監督、その素晴らしき手腕

木村浩嗣コラム by 木村浩嗣
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モドリッチ

ラ・リーガの優勝トロフィーを持つルカ・モドリッチ

12月29日、カルロ・アンチェロッティ監督の26年までの契約更新が発表された。

24年の主役は彼と彼の率いるレアル・マドリーで、それを追いかけるアトレティコ・マドリーとバルセロナ、ジローナは何とか上位に踏み止まろうとする、という構図になると見ている。

アンチェロッティは“パッチワークの天才”である。丁寧にツギハギを当て穴を次々と塞いでいくタイプだ。

ベンゼマが出て行けばベリンガムをトップ下に置いて“隠れCF化”する、左SBがいなくなればカマビンガをコンバートする、中盤が強度不足ならバルベルデを右FWに置き上下動させる、チュアメニが負傷すればクロースを守備的MF化し、彼の守備力が足りないとなると横にバルベルデやモドリッチを並べて補強する、ビニシウスが欠場ならホセルをCFとしてロドリゴを彼の周りで動かしてゲームメイカー化するか、ロドリゴを偽CF化してブラヒムをゲームメイカー化してカバーする……。

今季はクルトワ、ミリトンが大ケガをしカマビンガとビニシウスも常時出場できていないが、それでもラリーガでは首位で、CLでは危なげなく決勝トーナメントに進んだ。DFの駒不足は明らかなのに、ラリーガではの71-72シーズン以来の失点の少なさ(18節で11失点)。年末の試合でアラバまで今季絶望の大ケガを負ったが補強をせず、どうやらチュアメニのCB化、という新たなパッチで乗り切るようだ。新スタジアム建設で補強費の無いクラブにとっては財布にも優しい。

要は、臨機応変に対応して結果を出す監督で、それは何より戦術の引き出しの多さのお陰なのだが、にもかかわらずアンチェロッティは“戦術家”とは呼ばれない。戦術家とは明確な理想のスタイル(フィロソフィー)を打ち出して、その周辺を具体的なアイディアで固めて実現させるタイプの監督、例えばグアルディオラとかクロップとかルイス・エンリケとかモウリーニョとかを指すからだ。

アンチェロッティ監督とセティエン監督

アンチェロッティ監督(左)

彼らがどんなサッカーを目指すのかはわかり易いが、アンチェロッティのそれはわかりにくい──というか、その場しのぎで明確なフィロソフィーがないようにさえ見える。

大声でサッカー観を主張することもないし、哲学的でミステリアスな名言を残すことも無い。ツギハギだらけの誰もが着られる服よりもオートクチュールの一着ものの方がカッコいい。だから過小評価される。

モドリッチを控えにして文句を言わせないことは実は大変なマネージメント能力(これは会社で管理職をやっている人なら誰もがうなずくに違いない)なのだが、そういう人徳も評価されない。私たちはニコニコ笑う良い人よりも、冷徹な人事をする切れ者リーダーにカリスマを感じるからだ。

しかし、レアル・マドリーのようなエゴとプライドとタレントばかりのチームに、おまけに補強も自分でやってしまう独裁的な会長がいるクラブにとって、みんなとうまくやって笑みをたたえてソッと勝利を積み重ねていくアンチェロッティは、理想的に思える(だからブラジル代表監督就任の噂も当然)。

彼ももう64歳。クラブでのおそらく最後のキャリアは、戦術家偏向の私たちの目をも開かせてくれることだろう。

文:木村浩嗣

木村浩嗣

編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。

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