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FIFA U-17ワールドカップ 日本代表
11月10日からインドネシアでU-17ワールドカップが開催される。FIFAが主催する年代別世界大会の最も下のカテゴリーの大会だ。
2021年大会は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で中止となったが、4年前にブラジルで開かれた前回大会で、日本チームは初戦でヨーロッパ・チャンピオンだったオランダに3対0で勝利。グループリーグを2勝1分の1位で通過して上位進出への期待を集めたものの、ラウンド16でメキシコに敗れてしまった。
前回も監督としてチームを率いていた森山佳郎監督は「メキシコ戦ではチャレンジする姿勢がなくなって力を発揮できなかった」と悔やむ。
最近は男女ともにどんな年代の大会でもグループリーグ突破はできるようになった日本代表だが、ノックアウトステージ初戦で敗退というケースが目立つ。カタール大会で日本代表が、グループリーグではドイツ、スペインを撃破したものの、ラウンド16でクロアチアの前にPK負けを喫したのは記憶に新しい。
今回のU-17ワールドカップでも、なんとかラウンド16は突破してもらいたいものだ。森山監督も、「目標は『優勝』とは言えない」としながらも、「ベスト4を目指そう」と語る。
U-17日本代表の最大の特徴は攻撃力だ。
6月から7月にかけてタイで行われたU-17アジアカップでは、初戦のウズベキスタン戦こそ先制してからアグレッシブさを失って1対1の引き分けに終わったが、その後は決勝戦まですべて3ゴール以上を決めており、6試合合計で得点26(失点6)という圧倒的な得点力を示した(決勝では韓国に3対0で快勝)。
そして、5ゴールを決めた名和田我空(神村学園高)が得点王と最優秀選手賞を受賞。名和田以外にも、道脇豊(ロアッソ熊本)、高岡伶颯(日章学園高)と強力FWがそろったチームだった。
アジアカップでは全23選手中FWは上記の3人の登録だったが、ワールドカップでは全体の登録人数が21人であるにも関わらず、FW登録は5人に増えた。
徳田誉(鹿島アントラーズユース)は、アジアカップは負傷のため登録外となったが、それまでも主力の1人だったが、井上愛簾(サンフレッチェ広島ユース)は新らたにメンバーに呼ばれた選手だ。同クラブのMF中島洋太朗とのコンビネーションに期待がかかる。
FWを増やしたということは、必然的にDF、MFは手薄にならざるを得ない。複数ポジションができる選手を使ってやり繰りすることになるのだろう。森山監督としては、思い切った決断だったはずだ。
それだけ、有力なFW候補がいたということだ。いわゆるストライカー・タイプ、点取り屋が揃ったのはこれまでの世代にはなかった特徴だ。
森保一監督率いる日本代表は、9月の遠征でドイツ相手に4ゴールを奪って完勝。複数得点での連勝を6試合まで伸ばして、攻撃力の高さをアピールしている。とくに「2列目」は伊東純也や久保建英、三笘薫といった、各国リーグで活躍している選手が多く、森保監督は人選に頭を悩ませている状態だ。
だが、ワントップは人材不足。浅野拓磨や古橋亨梧、上田綺世といった候補は何人もいるが、決め手となる選手はいまだに見出だされていない。
現在のU-17日本代表の点取り屋のうち、1人でもいいから国際舞台でも通用する選手が育ってくれれば、日本代表はさらに強くなる。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で国際経験が足りない世代だが、初めての世界との遭遇でどこまで通用するのか、注目したい。
さて、そんな期待溢れる日本代表だが、日本が所属するグループDは強豪ひしめく「死のグループ」となった。
日本の初戦の相手はポーランド。5月に行われたU-17欧州選手権では準決勝敗退の3位となったが、準決勝では優勝したドイツと3対5という撃ち合いを演じている。グループリーグから準決勝まで5試合を戦って16得点と、かなり攻撃的なチームのようだ(失点は14)。
2戦目はアルゼンチンだ。南米予選ではブラジル、コロンビアに次いで3位だったが、アルゼンチンといえばU-20、U-17とユース年代で素晴らしい実績のある国だ。ワールドカップで3度目の優勝を飾ったフル代表は、現在FIFAランキングでトップの地位を維持している。
最終戦で対戦するのがセネガル。アフリカ予選のU-17ネーションズカップで優勝したチームだ。グループリーグを3戦全勝で勝ち上がると、準々決勝では南アフリカを5対0で一蹴。6試合で得点15、失点がわずかに2とこちらは守備力に特徴がありそうだ。
ポーランド、セネガルとは2018年のロシア・ワールドカップでも同組で戦った相手。セネガルとは、今年5月のU-20ワールドカップの初戦でも対戦。この時は、日本が1対0で勝利している。
いずれにしても、日本代表はヨーロッパ、南米、アフリカの強豪と戦うのである。「死の組」を突破するには、かなりのエネルギーを注がなければならない。そのうえで、どこまで余力を残してラウンド16を戦えるかが上位進出へのカギとなる。
日本にとって有利な条件を探せば、開催地が同じインドネシアになったことだ。
もともと、今大会は南米のペルーで開かれることになっていた。ペルーは2021年大会の開催地に選ばれていたものの、同大会が中止になったのでそのまま2023年大会の開催地となった。
だが、現地ペルーでの開催準備が間に合わず、ペルーは開催権を放棄した。一方、インドネシアではU-20ワールドカップの開催が予定されていた。
ところが、イスラエルがヨーロッパ予選を勝ち抜いて出場を決めたことで、インドネシア国内で開催反対の声が上がったのだ。
インドネシアは世界第4位という人口2億7000万人のうち9割近くがイスラム教徒であるため、アラブ諸国と同じように、反イスラエル感情が強く、来年に予定されている大統領選挙前に政治家たちが世論受けを狙ってU-20ワールドカップ開催反対論を掲げたのだ。
こうして、インドネシアはU-20ワールドカップの開催を放棄。同大会はアルゼンチンで開催された(U-20日本はグループリーグ敗退)。インドネシアにはU-17ワールドカップ開催権が回ってきた。
たとえば南米大陸にあるペルーに遠征するのに比べたら、インドネシアは日本からも近く、時差もわずかに2時間だけ。
日本は、これまでも長距離移動を強いられる南米開催の大会では、なかなか好成績を収められていない。2014年のブラジル・ワールドカップでは日本は1分2敗のグループリーグ敗退に終わったし、今年のU-20ワールドカップ・アルゼンチン大会でも、日本はノックアウトステージに進むことができなかった。
日本はこれまでも東南アジアで戦う経験は多い。現在のU-17日本代表も、アジアカップをタイで戦っている。また、グループDの試合会場となるジャワ島西部のバンドンは標高800メートルほどの高原にあるので、暑さも厳しくない。日本代表の将来のためにも、持ち前の攻撃力を発揮して戦ってほしいものだ。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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