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サッカー フットサル コラム 2023年9月12日

「日本が得意なのは走ること」は過去の話、いつの間にか技術も追い越していた

木村浩嗣コラム by 木村浩嗣
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 2014年ハンジ・フリック(左)とヨアヒム・レーヴ(右)

2014年ハンジ・フリック(左)とヨアヒム・レーヴ(右)

「我われにはクオリティが足りない」

日本に1-4で敗れた後、ドイツのキミッヒ、ギュンドアン、ミュラーは同じ結論に達したそうである。

クオリティ、良い言葉だ。質が足りない。つまり、プレス下でもワンタッチやツータッチでパスをくるくる回す能力が足りない、押し込まれた状態でDFラインから相手のラインの裏へ(時には逆サイドへ)正確にロングボールを送り込み、ウインガーに走らせる能力が足りない、フリーでボールを持たされているのにボール出しをする能力が足りない。

サッカーという競技の基本、ボールを蹴ったり止めたり動かしたりする能力で、日本の選手たちはドイツの選手たちを明らかに上回っていた。

「日本が得意なのは走ること」とずい分長い間、スペインを始めとする欧州では言われてきたが、いつの間にか技術も追い越していた。これは女子W杯で日本がスペインに4-0で勝った時にも思ったことだ。

もっとも、ドイツに足りなかったのは個のクオリティだけでなく、集団のクオリティもそうだ。

CB2人とGKと3人のフリーがいてなぜ、ボールを出せない? テア・シュテーゲンはCBの頭を越してSBの足へ付けるキック力を持っていて、いつもバルセロナではやっている。が、右SBのキミッヒはライン際に張らず、中へ入っている。中へ入るの早過ぎない? 一度、自分がもらってサイドに日本の守備を引き付けてからセントラルMFに渡すなどしてから入ればいいじゃないか。両CBのズーレとリュドガーではボールを出せないと、日本はわかっていたのであえてフリーにしていた。フリーでも出せなかった。ならば、ボール出し時だけはキミッヒをリュドガーの隣に置いて、ズーレをサイドに張らせる、なんて策があっても良かった。

数は少なかったがボールを出せた時は必ずと言っていいほどドイツはチャンスを作れていた。なぜ、監督が無策だったのか理解できない(なので、解任は理解できる)。

日本は集団のクオリティ=「状況に合わせ適した場所にいて適したプレーをする」ことでもドイツを上回っていた。

なぜ1タッチ、2タッチでくるくるパスを回せたのか? なぜドイツのプレスは空回りしたのか? 第一に、相手を引き付けてから出す、個の技術が高かったからであり、第二に、パスの受け手となる仲間が的確なポジションニングをしていたからだ。

なぜあれだけ裏を取れてGKと1対1になったのか? 足が速かったから。それもある。が、ある特定の状況になると裏へ出す、という約束事が出来上がっていたからだ。

もともと体力は上だった。個のクオリティで上回った。集団のクオリティ──これは戦術と呼んでもいい──でも上回った。

サン・セバスティアンのメディアは「ドイツで久保のショー」と15分間で2アシストの久保建英を褒め称えている。でも、あれくらいのプレーは毎週、ソシエダでやっている。驚きなのは、あのくらいのプレーが2ゴールになってしまうドイツのレベルなのだ。

あるスペイン通の日本人ジャーナリストに「今の日本ならスペインにも勝てるかもしれませんね」と言われた。勝てるかもしれない、と私も思った。

「ブレイクスルー」という言葉があるが、高いと思っていた壁が崩れて一気に力が噴出する。そういう瞬間に立ち会っているのかもしれない。もちろん、問題はここからである。

スペインだって絶対になれないと思われた世界一になってから低迷し、カタールでも日本やモロッコに負けてやっと立て直し期に入ったばかりなのだ。

その立て直し具合を見るために今日これから取材に行ってくる。連盟会長がやっと辞任し本当の再出発となった。さあて、スペインのクオリティはどうだろうか?

文:木村浩嗣

木村浩嗣

編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。

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