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サッカー フットサル コラム 2023年9月5日

久保建英の無双状態が続いている理由

木村浩嗣コラム by 木村浩嗣
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久保建英

無双状態久保建英・グラナダ戦

久保建英の無双状態が続いている。

グラナダ戦は2ゴール+オウンゴールを誘う+アシストの1つ前のパスで4点に絡んだ。当然MVPに選ばれた。これで4試合で4回目のMVPだ。

何が変わったのか?

本人は「効率が上がった」と言っているが、では、なぜ効率が上がったのか?

わかるのは軽くプレーしているように見えること。キックも軽く蹴っているように見える。3分、軽く蹴ったボールがカーブしてトラオレの足下に収まり絶好機を演出。56分、軽く浮かしたボールがピッタリ、オヤルサバルの足下に落ちて1対1になりかけた。

実際は必死にやっているのだろうが、こちらが受ける印象的には“技術的にレベルが違い過ぎて、軽くやっても差が作り出せる”って感じ。「技術的に余裕がある」と言ってもいいかもしれない。

特に唸らされたのは1点目のシュートと、スビメンディのゴールに結び付くブライスへのパス(2点目のシュートはDFに当たってコースが変わったので外す)。

9分、ブライスのパスで裏へ抜け出すとゴール中央へ向かって対角ラン。スピードもあったし、相手DFの前に入って行くコース取りが良かった。このランは軽く走らず思い切り走っていた。で、シュートはスピードを緩めず間髪置かず放たれたしノールック(顔はファーポストに向いていたのにニアに蹴られた)だったので、GKは反応が遅れた。動作の素早い鋭いシュートだったが、こっちの方は軽く蹴っているように見えた。

多分、前だったらゴール前で一拍、間を置いて狙ってから蹴ったように思う。で、狙いを澄ましたシュートはポストに嫌われるとか……。

間を置いた方が余裕があるように見えるが、今の久保の「技術的な余裕」というのは「ゆったりしたプレー」とは違う。その真逆。技術的に上だから「精度を上げるためにスピードダウンする必要がない」という感じ。つまり、本能的にやって結果を出している。別の言葉で言えば「迷いがない」。

ブライスへのパスの方はおしゃれなプレーだった。トラオレのパスを受けて真っ直ぐゴールラインに向かい、左足でまたぎフェイントを入れて、右足でヒール気味にボールを押し出す。普通に顔を上げてのセンタリングを待っていたら、フェイントでタイミングをずらされ、ヒールでタイミングをずらされているのでDFはまったく対応できない。これをブライスが引き足でボールを手元に寄せながら体の向きを変えて、丁寧にスビメンディに渡す。そして走り込んだスビメンディがズドン!

この得点は芸術だった。ブライスの引き足で「オーッ」という超絶技巧に対する観客のどよめきが上がっていたが、久保の技も負けず劣らずのレベルだった。

よく私たちは「インテリジェンス」という言葉を使うが、「考え抜いたプレー」という意味ではない。サッカーではそんな時間はない。インテリジェンスとは結局、アイディアが浮かぶプロセスにしてもその実行にしても一瞬のことに過ぎない。今の久保にはその一瞬が人よりも長い。周りがスローモーションなので久保には余裕がある、というか。プレーのスピードというよりも「認知のスピード」が違う、というか。

とにかく余裕がある。我武者羅にやっているように見えない。で、それで結果を出している。

今の久保はテクニックだけでは語れない。

文:木村浩嗣

木村浩嗣

編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。

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