ベティスへ禁断の移籍をしたイスコ、11月のセビージャ・ダービーが今から楽しみ

ベティスへ禁断の移籍をしたイスコ

昨年12月にセビージャと契約解除になっていたイスコをベティスが獲得したことを発表した。これでセビージャダービーの大盛り上がりは約束されたようなものだ。

セビージャ市の2クラブ間の移籍は「禁断の移籍」である。

バルセロナからレアル・マドリーへのフィーゴの移籍もそう呼ばれたが、同じ市内でいがみ合うセビージャとベティスとは緊張感が違う。こちらは日々の生活を送るのに支障が出るレベルなのだ。

なので、セビージャの下部組織からトップデビュー後、アトレティコ・マドリーやミランを渡り歩き、晩年にベティスでプレーしたホセ・マリのケースを最後に実現していない。もう15年以上前の話だ。

イスコの場合、宿敵でプレーしていたのはつい最近で、しかも喧嘩別れをした経緯がある。

1カ月ほど前、イスコはセビージャの元スポーツディレクターのモンチとつかみ合いになった事件を公表した。『マルカ』紙のインタビューによれば「嘘つき」とイスコが呼び、モンチが首根っこをつかんで揉み合いになった、という。このトラブルのことは噂になっていたが当事者が認めたのは初めてだった。背景には、イスコ獲得は元監督ロペテギの要請でモンチは反対だったことがある。

ベティスにとっては、イスコが描くこの「セビージャへの復讐のストーリー」も獲得のモチベーションになったに違いない。トラブルの元は避けるのが普通だが、ベティスとセビージャに限っては導火線に火が点いている爆弾ですら燃料である。

もちろんスポーツ面のメリットも勘案されている。

監督のペジェグリーニはマラガ時代にイスコをトップデビューさせた恩人である。

レアル・マドリー時代にはソラリと衝突してすっかりトラブルメイカーのイメージが付いてしまったが、ペジェグリーニなら軌道修正できるかもしれない。「再生工場長」と呼ばれる彼の下で復活した選手は、現チームにもボルハやファンミがいる。

加えて、トップ下のポジションは本来フェキルのものだが負傷中で、復帰は早くて10月になる見込み。セビージャではトップ下タイプの選手があふれていて、イスコの必要性はないに等しかったが、ベティスにはちゃんとポジションが用意されている。とはいえ、先週末のプレシーズンマッチを見た限りでは、下がってボールを触りたがるだけで、トップ下らしいパスを見ることはできなかった。半年以上のブランクから回復するのには時間がかかるだろう。

セビージャのホームでのダービーは11月11、12日に予定されている。どんな大ブーイングになるのか今から楽しみだ。騒音測定器を持ち込むメディアも出てくるのではないかと思う。

文：木村浩嗣